
監督が交代を命じたバルサDFの“失態”。ディフェンダーに求められる行動規範がある【コラム】
ポジションによって、適した行動規範がある。振る舞い、性格と言い換えてもいいだろう
たとえば、ストライカーは奔放さ、虚栄心、利己主義が許される。むしろ、どこかで奨励されている。少々身勝手なところがあっても、それを貫く姿勢によって、ゴールという特別な仕事を果たしてくれたら、それで成立する。なくてはならないエゴの場合もあるだろう。
一方、ディフェンダーにはストライカー的適性は当てはまらない。剛直さ、規律、用心深さのようなものが資質として求められる。四字熟語にするなら質実剛健。常にリスクマネジメントを怠らず、スペースをカバーし、最後のところで体を張り、失点を許さない。攻撃の一歩になるところから技術的クオリティも求められるが、派手さは禁物だ。
その点、欧州チャンピオンズリーグ(CL)、ラウンド16でFCバルセロナがニューカッスルに挑んだアウエーゲーム、ウルグアイ代表ロナウド・アラウホは戦犯になりかけた。
試合終盤、右サイドバックに入っていたアラウホは0-0の状況で攻め上がって果敢にクロスに飛び込み、その執念とタフさは実に彼らしかった。しかし結局ゴールは決められず、彼は足が攣ってしまったように見えて、ピッチに座り込んでしまう。ひどい状況ではなく、時間稼ぎをしたかったのだろうが、審判とピッチに戻る、戻らないで少し悶着があって、ピッチインが遅れた。
単純に、アラウホは迅速にポジションに戻るべきだった。そして敵に攻め込まれたとき、彼は十分に自陣に戻っていたにもかかわらず、右サイドバックには戻っていない。結局、そこにクロスを通されてしまい、失点を許した。ラフィーニャが暫定的にポジションを下げていたが本職ではなく、アラウホが戻るべきだった。
バルサは失点直後にダニ・オルモがPKを奪い取り、これをラミネ・ヤマルが決め、どうにか同点に追いついた。
しかし負けていたら、アラウホは批判の的になっていただろう。ジャッジで揉めて帰陣が遅れ、ポジションに戻らず、攻撃に色気を出しての失点。そこは一人のディフェンダーである限りは失態だったと言える。
ハンジ・フリック監督がすぐにアラウホに交代を命じたのは、何よりのメッセージだった。
ホームでの第二戦、アラウホはベンチスタートだった。前半で、右サイドバックのエリク・ガルシアが筋肉系の違和感を訴えたことで、交代で出場機会を得た。すぐにCKでのチャンスがあって、ニアでヘディングを合わせ、惜しくもゴールにならなかったが、アラウホはほとんどアピールするように全速力で自陣に戻っている。
ディフェンダーにはディフェンダーに求められる流儀、行動規範があるのだ。
文●小宮良之
【著者プロフィール】こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
【記事】日本を舐めているのか。イングランド代表の名将が用意したのは“とんでもない愚策”だった
【記事】「やはり彼は危険だった」聖地でイングランドを粉砕した日本代表、英紙記者が三笘薫とともに絶賛した選手は?中村でも佐野でも鎌田でもなく…【現地発】
