本田圭佑がまたしても、サッカーファンをザワつかせている。シンガポール1部「FCジュロン(旧アルビレックス新潟シンガポール)」が、39歳となった本田との電撃契約を4月10日に発表したのだ。
これで本田が選手契約したチームは実に11カ国目。ギネス記録となる「11カ国での得点」を掲げて「いちばん成し遂げたいことはリーグ優勝」と目を輝かせるレジェンドが、再びピッチへ戻ってくることになった。
むろんこの衰えぬ野心とビッグマウスこそが、本田の真骨頂だが、その強烈な自意識がかつて、日本代表を空中分解寸前に追い込む大騒動に巻き込んだことがある。そのきっかけとなったのは、今から12年前の2014年5月、鹿児島県での指宿合宿だった。
この年開催のブラジルW杯を目前に控え、ザッケローニ監督が日本代表監督就任後に掲げたのが、素早いパスワークとサイドを起点にした攻撃的サッカーだった。このパスサッカーがアジアを制したことで、チームの誰もが「組織の連動」に酔いしれていた。
ところがそんな中、練習後のミックスゾーンに現れた本田は、数十人の記者を前に、15分間に及ぶ「独演会」でこうブチ上げたのである。
「(組織力は)ベースとしてあるけど、最後は個。組織でどうにかできるほど、W杯は甘くない。結局、最後は誰かがボールを運んで、シュートを打たなきゃいけない」
至極まっとうな意見である。と同時にこの発言はまさに、ザッケローニ体制の根幹である「組織」を真っ向から否定するかのような、強烈な「個」の強調でもあった。
「ザック流への反旗」「チームの不協和音」といった文字が踊る一方、この発言を「チームを引き締めるための劇薬」として好意的に捉えるメディアも多かった。
コロンビアに1-4と惨敗で組織も個も打ち砕かれた
だが、結末はなんとも残酷だった。ブラジルW杯でグループリーグ突破を懸けて戦った、運命の第3戦。世界ランク上位のコロンビアに、日本は1-4と大惨敗。組織も個も完膚なきまでに打ち砕かれ、日本は1分2敗のグループ最下位で大会を去ることに。
試合後、ピッチに立ち尽くす本田の姿と、チームが掲げた「優勝」という目標とのあまりの落差に、ファンもメディアも当時の代表選手たちが持つ「個の力の限界」を突きつけられることになった。
そんな騒動から12年の月日が流れた。シンガポールでの新たな挑戦を「引退前の休暇ではない」と断じる本田は現在もなお、「個」を研ぎ澄ませようとしている。
鹿児島で日本サッカー界に劇薬をブチ込んだ時、本田は27歳だった。6月に40歳を迎えるこのビッグマウス、今度は我々をどんな言葉で驚かせてくれるのだろうか。
(山川敦司)

