フリーの女子プロレスラーであるウナギ・サヤカは、これまで何度も自主興行を成功させてきた。発表ごとは基本的にYouTube。今の時代、それが最も拡散力があると言っていい。
ただ、6月21日の後楽園ホール大会に向けては実際に記者会見を行ない、それをYouTubeで生中継するという形をとった。単に告知するだけでなく、公の場を作って発表したいことがあったからだ。賛否両論が予想されるからこそ、そうした。
4月11日の会見で発表したのは、6.21後楽園大会でのウナギのタッグパートナー。会社設立3周年となるこの日に「隣にいてほしい人」として紹介されたのは、元・東京女子プロレスの乃蒼ヒカリだった。
ヒカリはレスラー兼アイドルグループ、アップアップガールズ(プロレス)の1期生としてオーディションに合格し、2018年1月4日の後楽園大会でレスラーデビュー。もともとプロレスファンでデスマッチ、ハードコア路線も志向しており、ひたむきな闘いぶりでファンの心を掴んだ。シングル、タッグでベルトを獲得してもいる。
だが2024年、活動休止を経て団体、グループともに卒業。理由は明かされず、ファンの前から突然、姿を消した形になった。原因はプライベートが発端の不祥事。周囲に迷惑をかけ、ヒカリは逃げるように業界を去るしかなかった。
ヒカリにとって年上の後輩となるウナギは同じ東京女子プロレスで、ヒカリのちょうど1年後にデビュー(2019年1月4日の後楽園大会)。試合での絡みはほとんどなかった2人だが仲がよく、「週3でタピオカ飲みに行ってた」という。
ただウナギは2020年にスターダムに移籍。ヒカリが退団した時にはフリーになっていた。自分のことで精一杯だったし、急に連絡するのも憚られた。まず自分が一人前にならないことには、という思いもあった。そうこうしているうちにLINEのアドレスも変わり、ヒカリとは連絡が取れなくなった。
そんな中、ファンからの情報でヒカリがヘッドスパの仕事をしていることが分かった。昨年のことだ。予想外の再会。プロレスに戻る気はなかったヒカリだが、ウナギが頑張っていること、楽しそうにフリーで活躍していることは知っていた。
そこからはウナギ曰く「鬼クドキ」。関係各所に筋を通し、ヒカリの再デビューが決まる。まだ経験していない、聖地・後楽園のメインを用意してあげられる立場にウナギはなっていた。
単に仲がよかったから復帰を促したというわけではない。ヒカリがプロレスにかけていたことを知っているから、ウナギとしても放っておけなかった。リングを降りる日が来るにしても、しっかり引退試合を行なってファンに別れを告げるべきだと。
「申し訳ないと思う気持ちがあるならプロレスしろと。信用はプロレスで取り返してほしい」
ウナギは会見後にアップされた対談動画でそう語っている。ヒカリは会見で謝罪。記者との質疑応答はまずウナギが答える形が取られた。賛否両論が避けられないだけに、プロモートする自分がすべての責任を引き受けるという気持ちだった。
といっても、いま決まっているのは6.21ウナギ興行で復帰するということだけ。ヒカリがウナギの会社に所属するとか、マネジメントをしていくといった発表はなかった。復帰後にレスラーとしてどんな道を進むかはヒカリが自分で決めればいいのだとウナギ。
リングに戻ることを決意し、久しぶりにプロレス界に意識を向けたヒカリ。これから何があるか分からないが、やりたいこと、闘ってみたい選手など意欲は充分にある。「諦めていた夢もある」という。
「もう中途半端なことは絶対にしたくない」
対談動画で、ヒカリはそう語っている。会見でのウナギは「プロレスによって傷つく人を見たくない」。いつも「プロレス界にいる全員を幸せにしたい」と言うウナギは、昨年から今年にかけて引退していく先輩レスラーとのシングルマッチを5カ月連続で実現させた。
そして今度はリング復帰の後押し。自身もスターダムを「クビ」になり、両国国技館での自主興行で1600万円の借金を背負うなど紆余曲折のプロレス人生を経験してきたウナギは、ヒカリに「あらためてプロレスを好きになってほしい」と言う。
現在タッグ2冠王でもあるウナギ。ユニット「ぱぱぱ令和パーティー」としても活動している。好き放題、唯我独尊に見えて、実は“人のために動ける”レスラーなのだ。
取材・文●橋本宗洋
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