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<左ききのエレン>かっぴー×内山夕実が語る“才能”と“情熱”の正体「本気を出した上で諦める、その感覚に共感した」

<左ききのエレン>かっぴー×内山夕実が語る“才能”と“情熱”の正体「本気を出した上で諦める、その感覚に共感した」

「左ききのエレン」の原作者であるかっぴーと、声優を務める内山夕実
「左ききのエレン」の原作者であるかっぴーと、声優を務める内山夕実 / 撮影=山田健史

「天才になれなかった全ての⼈へ」。多くのクリエイターや働く大人たちの心をえぐり、熱狂的な支持を集める<クリエイター青春群像劇>「左ききのエレン」。累計約2億5000万PV、発行部数約420万部を突破する大ヒット作が、シグナル・エムディとProduction I.Gの強力なタッグにより待望のTVアニメ化。毎週火曜深夜24時よりテレ東系列ほかにて放送中だ。本作は、自らの才能の限界に苦しみながらも“何か”になることを夢見る凡人・朝倉光一と、圧倒的な才能ゆえに苦悩する孤高の天才・山岸エレンの人生が交差する物語。今回は、原作者のかっぴーと、エレン役を務める内山夕実にインタビューを実施した。作品に込められた熱い思いから、内山がエレンに重ねた自身の「挫折と復帰」の経験まで、たっぷりと語ってもらった。

■10年越しの“最終進化”!

――原作が2016年に発表されてから10年。実写ドラマや舞台化を経て、アニメとなります。今の率直なお気持ちはいかがですか?

かっぴー もちろんめちゃくちゃ嬉しいです。アニメ化が決まったのが4年ちょっと前なんですよ。

――そうだったんですね。

かっぴー そのあとに少年ジャンプ+版の連載が終わるタイミングでぜひともアニメ化を発表したいという意見を出させてもらいました。
かっぴー
かっぴー / 撮影=山田健史


――かっぴー先生はコメントで「これが本当に描きたかった『左ききのエレン』です」と仰っていました。やはり漫画から始まった作品として、アニメーションになるのは特別な思いがありますか?

かっぴー そうですね。アニメって漫画の延長線上にあるものだと思っているんです。実写化は原作者からすると「派生」という感じで、それはそれですごくワクワクするんですけど、漫画の正当進化という意味ではアニメだなと。僕にとっては原作から始まって、リメイク版があって、最後にアニメがある。ようやくポケモンの最終進化まで行けた気持ちです(笑)。

――内山さんは原作をご覧になって、どう受け止められましたか? クリエイターや表現者に深く刺さる作品だと思いますが。

内山 私自身、声優のお仕事を一度離れて、OLをやって戻ってきたという経験があるんです。自分の意志で辞めたというよりは、親の反対を押し切れなくて。でも2年間OLをやった後、どうしてもこの世界に戻りたいという気持ちが湧いてきたんです。まだ本気を出し切れていない状態で諦めてしまったことが、自分の中にずっと引っかかっていたんですね。やりきった上で思い通りにいかなかったのなら諦めもつくけれど、志半ばで辞めてしまったという後悔の念があったんです。

――ご自身のリアルな経験と重なる部分があったんですね。

内山 はい。原作を読んだ時に、すごく自分と重ね合わせるシーンがありました。やっぱり「本気を出した上でやりきりたい」という感覚を強く思い起こさせられて。すごく響くものがありましたね。
「左ききのエレン」より
「左ききのエレン」より / (C)かっぴー/アニメ「左ききのエレン」製作委員会


――エレンは「完全なる天才」というキャラクターですが、共感できる部分はありましたか?

内山 「天才」という部分だけを切り取ると難しかったんですけど、天才ゆえの孤独だったり、本当は人とちゃんと接していきたいという不器用さや葛藤は、自分の中にもありました。自分がやりたいことは明確にあるのに、それをうまく行動に移せなくて周りのせいにしてしまうところとか。私も復帰する時、自分の味方っていなかったに等しかったんです。そこで初めて親に自分の本当の気持ちを伝えたとき、親が敷いてくれたレールから自分の意志で外れた感覚があって、それはエレンが突き動かされる「理屈じゃない感情」とすごく重なりましたね。
かっぴー×内山夕実
かっぴー×内山夕実 / 撮影=山田健史


「左ききのエレン」より
「左ききのエレン」より / (C)かっぴー/アニメ「左ききのエレン」製作委員会

■原作者が思う、内山の魅力とは「お芝居に『奥行き』がある」

――内山さんの演じるエレンの声やお芝居を聞いて、かっぴー先生はどのように感じましたか?

かっぴー 元々、エレンに対してそこまで強烈な声のイメージを持っていたわけではないんです。エレンってすごく幅が大きいキャラクターで、クールな孤高の天才という部分もあれば、子供っぽい部分もある。いろんな可能性があったと思うんですよね。オーディションで何名かの録音を何度も聞いて、光一役の声を聴いた後にもう一度聴いてみたりと、すごく悩みました。

――内山さんのお芝居のどのような魅力が刺さったのでしょうか?

かっぴー お芝居に「奥行き」があるなと思ったんです。後で内山さんの「一度実は諦めていて」という経歴を伺って、後付けかもしれないですけど、やっぱり薄っぺらくない、蓄積されたものが声にこもっている気がしたんですよね。アフレコ現場で聞いた時も、実際に出来上がったものを聞いた時も、毎回「内山さんで良かったな」って思います。

内山 嬉しいです……! オーディションの時は、私がやれる私だからこそのエレンを提示しないと、奥行きのあるお芝居はできないなと思って、自分の内から出てくるものを信じてやらせていただきました。奇しくも、掛け合いオーディションの相手が光一役の千葉翔也さんだったんです。

――オーディションの時点でお二人だったんですか? それは運命的ですね。

内山 本当にたまたまだったらしいんですけど(笑)。序盤の出会ったばかりのシーンをやらせていただいて、すごく演じやすかったです。人間ドラマなので、一人でお芝居をするよりも、相手がいて引き出してもらったものが確実にあるので。この二人に決まったことにはすごくご縁を感じました。
かっぴー×内山夕実
かっぴー×内山夕実 / 撮影=山田健史


――エレンという強烈な才能を演じる上では、どのようなアプローチをされたのでしょうか?

内山 私は「こういう風に感じてもらいたいから、ここはこういうお芝居をしました」という器用なアプローチができないタイプなんです。キャラクターとして今ここにいるっていう、本当に不器用でシンプルなことしかできなくて。だから、エレンをやる前日はめちゃくちゃ鬱になるんですよ(笑)。

――前日からエレンのメンタルになるのはかなりきつそうです。

内山 誰とも会話したくなくて一人の世界に入ったり。意味もなく涙が出てきたりとか(笑)。

かっぴー それは心配しちゃうな(笑)。

内山 でも、そうやって体当たりでやっていかないと自分が納得するお芝居が出せなくて。それは昔からそうですし、今後もそういうやり方をしていくんだろうなと思います。
「左ききのエレン」より
「左ききのエレン」より / (C)かっぴー/アニメ「左ききのエレン」製作委員会


内山夕実
内山夕実 / 撮影=山田健史

■「夢」にはその先がある。天才でない人にこそ観てほしい

――本作のキャッチコピーは「天才になれなかった全ての人へ」です。作品からどんなことを感じてもらいたいですか?

内山 「天才」や「才能」がなんなのかは正直私にはよく分かりませんが、でもエレンのように、誰かを突き動かす力を持っている人って、なろうと思ってなれるものではないと思うので、ある意味「才能」なのかなと思います。私自身はそういう才能への自覚は全くないですし、「声優としての才能」ということで言うなら、今でも自分は声優には向いてないって思っているくらいです。エレンを演じる私がこんな場で言うのも変ですけど(笑)。
かっぴー×内山夕実
かっぴー×内山夕実 / 撮影=山田健史


――それは意外です。第一線で活躍されているのに。

内山 でもそうなんです。今はたまたま私を必要としてくれる人がいて、起用してくださる場所もある。そうやって仕事を続けていれば、いつか「これが才能なのかもしれない」と思える日が来るのかもしれないなと思いながらやっています。そう考えると「続けること」が何よりも大事なのかもしれないなとは思います。私もあのまま声優を諦めていたら、死ぬまでずっと「向いてなかったんだな」で終わっていたと思うので。

かっぴー 「左ききのエレン」は、何かに打ち込んで、それが上手くいってもいかなくてもその先があるんだよっていう話で、いわば「夢」に関するお話だと思っています。エレンと光一を中心に色々な人の視点で描いているので、きっとみなさんが共感できるキャラクターが見つかると思いますし、「天才」ではない人にこそ観ていただきたいですね。

――アニメになったことで、より多くの人に見てもらえるのは嬉しいですよね。

かっぴー 嬉しいですね。もともと原作はわりとニッチというか、「知る人ぞ知る」的な枕詞をつけられることが多かったので、少しでも多くの人に届いて欲しいなと思っています。アニメでは原作のエピソードを時系列順に整えたりと、鈴木利正監督をはじめ、アニメスタッフの方々もすごくそのための工夫をしてくださっているので、さらに見やすくなっていると思います。

――たしかに、いきなり社会人時代から入るのではなく、高校生時代から描くことで間口が広がっている印象を受けます。

かっぴー そうですよね。会社員でクリエイターで広告業界って、入り口が狭まってしまうところを、誰もが思い当たる節がある高校時代を入り口にしてくれたことが今回のアニメの勝因だったなと思います。放送前にいきなり勝利宣言しちゃいましたけど(笑)。二人の関係にフォーカスすることでメッセージがより鋭利になっていて、すごくいいバージョンになったと思います。映像的にも、エレンの目が光る演出など、アニメオリジナルの工夫も盛り込まれているので、ぜひご覧になってみてください。

――本日は貴重なお話をありがとうございました。

◆取材・文=岡本大介
「左ききのエレン」ポスタービジュアル
「左ききのエレン」ポスタービジュアル / (C)かっぴー/アニメ「左ききのエレン」製作委員会


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