
アメリカ合衆国の建国の父の一人であり、雷が電気的現象であることを示したことで知られるベンジャミン・フランクリン(1706〜1790)。
そんな偉大な人物にも、思わず笑ってしまうような失敗談があります。
彼は1750年、七面鳥を電気で処理しようとする実験の最中に、自ら強烈な電気ショックを受けてしまったのです。
しかも、それは客人のいる前で起こった出来事でした。
目次
- 電気は「娯楽」だった時代に、科学へ踏み出す
- 七面鳥どころか自分が感電ーー客人前で起きた事故
電気は「娯楽」だった時代に、科学へ踏み出す
ベンジャミン・フランクリンは、正式な教育をほとんど受けていないにもかかわらず、独学で知識を深めた人物です。
印刷業で成功した後、1740年代半ばから本格的に電気の研究に取り組むようになりました。
当時、電気はまだ実用性のない不思議な現象とされ、多くの人にとっては「見世物」や「娯楽」の一種でした。
軽く感電するグラスで乾杯したり、火花を飛ばして驚かせたりと、いわばサロンの余興だったのです。
しかしフランクリンは、その電気を真剣に研究対象として捉えました。
ライデン瓶やガラス棒、絹などのシンプルな道具を使いながら実験を重ね、「電気の火(electric fire)」という概念を提唱します。
これは電気が増えたり減ったりする“量”として扱えるという考え方で、現代の電荷の概念に通じるものでした。

さらに彼は、物体が引き合う・反発する条件や、尖った金属が電気を引き寄せる性質を発見し、後の避雷針の発明につなげています。
そして何より有名なのが、雷雨の中で凧を揚げるという大胆な実験によって、雷が放電現象であることを示したことです。
ただし、彼は決して堅物な科学者ではありませんでした。
むしろ、電気を使った「エンタメ」も大好きでした。
1749年には、電気で七面鳥を仕留め、それを電気装置で回転させながら焼くという、いわば“電気バーベキュー”を開催しています。
しかし、翌年の実験では事態が一変します。
七面鳥どころか自分が感電ーー客人前で起きた事故
1750年12月、フランクリンは再び電気を使って七面鳥を処理しようとしました。
彼は「電気で殺した鳥は非常に柔らかくなる」と考えており、その効果を確かめようとしていたのです。
実験では、ライデン瓶を複数用いて大量の電気を蓄え、それを一気に放出して七面鳥にショックを与える計画でした。
しかしここで、思わぬミスが起こります。
彼は片手で電気を取り込み、もう一方の手で装置につながる鎖を持っていたため、電流が自分の体を通ってしまったのです。
その結果、フランクリンは観客の前で強烈な電気ショックを受けます。
本人の記録によると、最初に感じたのは「全身が激しく震える感覚」でした。
その後、徐々に震えが収まり、意識や感覚が戻ってきたといいます。
観客は閃光と大きな音を目撃しましたが、フランクリン自身はそれに気づく余裕もなく、一時的に意識を失っていた可能性があります。
幸いにも、後遺症は軽いしびれや数日間の痛みにとどまり、深刻なダメージはありませんでした。
しかし本人はこの体験を「二度と繰り返したくない実験」と手紙の中で記しています。
それでも彼は、この出来事を単なる失敗で終わらせませんでした。
むしろ「人は思った以上に強い電気ショックに耐えられる」という知見を得たと述べています。
ただし同時に、「もし電流が頭を通っていたらどうなっていたかは分からない」と慎重な姿勢も見せています。
危険な失敗が科学を前に進めることもある
現代の感覚からすれば、雷雨の中で凧を揚げたり、晩餐会で電気実験を行ったりするのは、かなり危険で無謀に見えます。
しかし当時は、電気の正体すらよく分かっていない時代でした。
フランクリンは、そんな未知の現象に対して、自ら体を張って挑んだ研究者の一人だったのです。
七面鳥を感電させようとして自分が感電するという失敗は、一見すると滑稽にも思えます。
しかしその裏には、「なぜそうなるのか」を知ろうとする強い探究心がありました。
科学の歴史は、成功だけでなく、こうした危うい試行錯誤の積み重ねによって形作られてきたのです。
参考文献
In 1750, Benjamin Franklin Electrocuted Himself While Attempting To Execute A Turkey At A Dinner Party
https://www.iflscience.com/in-1750-benjamin-franklin-electrocuted-himself-while-attempting-to-execute-a-turkey-at-a-dinner-party-83182
This Month in Physics History December 23, 1750: Ben Franklin Attempts to Electrocute a Turkey
https://www.aps.org/archives/publications/apsnews/200612/history.cfm
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

