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ケガで戦線離脱中にテニスの改良に取り組んだ大器・石井さやか。「結果的には良い時間だった」と語る、世界651位からの再出発<SMASH>

ケガで戦線離脱中にテニスの改良に取り組んだ大器・石井さやか。「結果的には良い時間だった」と語る、世界651位からの再出発<SMASH>

2年前、彼女は大阪市開催の「富士薬品セイムス ウィメンズカップ」で、トロフィーを掲げた。当時18歳。ジュニアでは数々のタイトルを手にし、世界ランク最高5位にも達した彼女だが、「おとな」の大会ではこれが初タイトルだった。さらには同年10月には、決勝戦で18歳の齋藤咲良に競り勝ち、19歳にして全日本選手権タイトルも獲得。翌2025年3月にはWTAランキング188位に到達した。

 武器は、175センチの長身から繰り出す、目の覚めるようなフォアハンドの強打。あらゆる意味でスケールの大きな石井さやかは、日本テニス界期待の若手だ。

 その彼女が現在、日本国内のITF大会を転戦している。ランキングは651位。理由はひとえに手首のケガのため、約8カ月の長きにわたり戦線離脱したためだ。

「昨年の4月あたりから痛みが出始めました。それでもグランドスラム(四大大会)には出たかったので、リハビリをしながら試合には出続けていたんですが......」

 ランキングの上昇に伴い、戦いのステージもグランドスラム予選などに上がった時分。そのチャンスを逃したくないというのは、当然の切望だろう。
 
 ただ痛みは、徐々にひどくなっていく。ウインブルドン予選を終えた後に、治療に徹することを決めた。

「手首の軟骨に炎症もあって、休まないと治らない状態でした。手術という選択肢もあったのですが、フォーム改善と筋力強化で治せる可能性があったので、保存療法を選んだんです」
  石井の手首のケガは、1つの動きを起点としたものではなく、ストレスの蓄積によって生じる、いわゆる「スポーツ障害」だ。つまり手術も、抜本的な解決にはなり得ない。そこで石井はコーチたちと共に、自身のテニスそのものを見つめ直した。

「ケガの理由の1つとして、私は関節の可動域が広いので、手首に負担がかかりやすかったようです。特にバックハンドで痛みが強かったので、そこを中心に改善しました。

 そのために、まず改善したのが、フットワークです。手打ちになりやすかったので、しっかり足を使って打つように意識を変えました。バックを打つ時はクローズドスタンス中心だったんですが、今回のケガをきっかけに、オープンでも打てるようにしています。あと重点的に強化したのが、前腕です。私、前腕の筋力がかなり弱かったみたいなんです、こう見えて」

 長身の背を伸ばし、石井が気恥ずかしそうに笑う。

「ケガの期間はつらかったですけど、結果的には良い時間だったと思います。大会に出ながらだとフォームを変えるのは難しいですし、弱い部分をしっかり鍛えることもできたので。特にバックハンドは、外から見たらあまりわからないかもしれませんが、自分の中ではかなり変わっています」
  フィジカル強化とフォームの改善により、ベースアップを実感できたと石井は言う。ただ実戦に戻った時、彼女は「試合勘」の喪失を痛感したそうだ。

「最初の頃は『どうやってポイントを組み立てるんだっけ?』っていう感覚がすごくありました。練習ではできていても、試合になるとわからなくなる。やっぱり練習と試合は、全然違いますね。同じ打点で打てるわけじゃないし、体勢も崩れるし、メンタルも違うので」

 復帰3大会目の「甲府国際オープン」(ITFツアーW75) では、「ぜんぜん組み立てていなくて、全てのボールを打ちにいっていた」という。そこで大会後の約10日間、彼女は「NTC(ナショナルトレーニングセンター)で、1日3~4時間くらい、試合形式の練習ばかりしていた」という。

 その主な練習相手は、伊藤あおいに日比野菜緒。そして坂詰姫野や沢代榎音ら、いずれも戦略性に長けたオールラウンダー。石井いわく「みんなとてもクレバーな選手」であり、練習ながら試合を重ねたことで、急ピッチで試合勘を取りもどせたという。
  そうして挑んだ今年の富士薬品セイムス ウィメンズカップでは、予選3試合を勝ち抜き本戦へ。本戦の1回戦でも、試合巧者のキャロル・ジャオにストレートで勝利した。
 
 今の彼女が何より望むのは、実戦。大阪大会の翌週には、宮崎市で2週連続開催されるITF W35大会「ひなたオープン」に臨み、1週目の大会では初戦で伊藤あおいに6-0、6-0で快勝している。

 戦績的には、「年末までにランキング150位くらいが目標」。そのためにもプロテクトランキングは、6月末のウインブルドン、そして8月末の全米オープン予選に使う予定だという。
 
 まだまだ先の長いキャリアを思えば、ケガの原因を知り改善に取り組めたのはプラス材料。文字通りのケガの功名だった――いつかそう振り返るべく、まずは、かつていたステージを目指す。

取材・文●内田暁

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配信元: THE DIGEST

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