
約21.1kmを走るハーフマラソンはこれまで多くの観客を引き付けてきました。
しかし北京で開かれた大会は他とちょっと違いました。
2026年4月19日、中国・北京で行われた人型ロボットのハーフマラソンでは、複数のロボットが同じコースに挑み、そのうちの1体が数字の上では人間の世界記録を上回るタイムを記録したのです。
目次
- 自律走行型の人型ロボットが人間の記録を破る
- 転倒して壊れるロボットたち、担架が使用される場面も
自律走行型の人型ロボットが人間の記録を破る
今回の大会には100を超えるチームが参加しました。
レースには、自分で周囲を見て走る「自律走行型」と、人の操作を受けながら走る「遠隔操作型」がありました。
その中で大きな注目を集めたのが、中国のテック企業Honorが開発した「Lightning(ライトニング)」です。
自律走行型のLightningは50分26秒で完走し、優勝しました。
人間のハーフマラソン世界記録は57分20秒なので、数字だけを見ればこの自律型Lightningは人間の記録を上回ったことになります。
ただし、ここで注意したい点があります。
今回の大会は通常の人間レースと同じ条件で公式記録を争った場ではありません。
自律型と遠隔操作型が混在し、途中でスタッフの補助が入る場面もありました。
それでも、この結果が衝撃的だったことは間違いありません。
なぜここまでの性能が出せたのでしょうか。
まず大きいのは、関節の力です。
Lightningには最大トルク400ニュートンメートルの関節モジュールが搭載されており、脚で地面を強く蹴り続けられるだけのパワーをもっていました。
短い距離を勢いで走るのではなく、21.1kmという長い距離を安定して走るには、この「足腰の強さ」が欠かせません。
もう1つ重要なのが熱への対策です。
ロボットは長く動くほどモーターが熱を持ちます。
熱がたまれば動きが鈍くなったり、故障しやすくなったりします。
Lightningには液体で熱を逃がす冷却システムが使われており、モーターの奥まで冷却の通り道を設けることで、高い負荷がかかっても熱がこもりにくいよう工夫されていました。
長距離を速く走るには、単にパワーがあるだけでなく、それを最後まで維持できる仕組みが必要だったわけです。
さらに今回は、脚力だけでなく「自分だけで走る力」も進歩していました。
今年はリモコンに頼らないチームが全体の約40%を占め、自己位置の把握、障害物回避、経路選択といった自律走行の力が大きく伸びていたとされます。
また、多くの自律走行チームは北斗衛星システムを使った高精度な位置情報や5G系の通信基盤も活用していたとされ、ロボット本体だけでなく、周囲のインフラもこの大会を支えていました。
ちなみに、この大会で注目を浴びたのは、「記録を破った」ことだけではありません。
面白い失敗もたくさんあり、それが観客を賑わせたのです。
転倒して壊れるロボットたち、担架が使用される場面も
レース中には、いかにも「今のロボット時代らしい」場面もいくつも見られました。
たとえば、優勝した自律型Lightningでさえ、レース終盤でバリケードにぶつかって転倒しています。
スタッフの助けを受けて再び走り出し、そのまま完走して優勝を守りました。
つまり最も注目を浴びた機体ですら、まだ完全無欠ではなかったのです。
さらに別のロボットは、スタート直後につまずいて激しく転倒し、機体がバラバラに壊れてしまいました。
すぐにスタッフが担架を持って駆け寄り、散らばった部品を回収。
まるで人間のような扱いを受けるロボットの光景は多くの観客に強い印象を残しました。
まさに感動や驚き、笑いが集約された大会だったのです。
人々の反応も様々でした。
「すごい!」と素直に驚く声もあれば、「ロボットに担架だって?」と笑う声もありました。
また、「ロボットが人間に代わっていく様子をリアルタイムで見ている」というコメントもあり、単なる技術デモではなく、人間の仕事や将来そのものと結びつけて受け取った人もいたようです。
速く走る姿には賞賛が集まる一方、転倒して壊れる姿には不気味さや将来への不安が重なることもありました。
人型ロボットは車や産業機械よりも人間に近い形をしているため、成功しても失敗しても、見る側の感情を強く揺さぶるのかもしれません。
今回の大会は、人型ロボットが「完走できるか」を試す段階から、「どれだけ速く、どれだけ自律的に走れるか」を競う段階に入ったことを示しました。
参考文献
Robot smashes human record in half-marathon – as another self-destructed
https://newatlas.com/ai-humanoids/robots-outrun-humans-half-marathon/
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部

