鎌田大地は今、キャリアにおいて最も重要な分岐点の一つに立っている。現在29歳。今シーズン末をもってクリスタル・パレスとの契約は満了を迎え、彼は今夏、自身の新天地をフリーの立場で決定できる権利を手にしている。フットボール選手にとって、20代最後となるこのタイミングでの移籍は、事実上の最後の大型契約を意味する。しかもその先にはワールドカップ(W杯)が控え、そこでの活躍は自ずと市場価値を上昇させ、より有利な条件や希望する強豪クラブへの道を開くチャンスとなる。
当然、現地でも去就には注目が集まっている。ヨーロッパカンファレンスリーグ(ECL)準々決勝第2レグ、フィオレンティーナ戦前日の記者会見、将来について問われると、鎌田は「自分の将来がどうなるかは本当に分からないし、まだ何も決めていない。将来が自分に何をもたらすか非常に楽しみだが、今はパレスでの一試合一試合に集中している」と答えるに留めた。
鎌田の運命は、オリヴァー・グラスナー監督の動向と密接に連動していると見る向きもある。米メディア『The Athletic』は「21-22シーズン、アイントラハト・フランクフルトで共にヨーロッパリーグを制した両者の絆は深い。2年前の夏、フリートランスファーとなった教え子をロンドンへ呼び寄せるべく、獲得を強く要望したのはグラスナー本人だった」と記述している。現地ではすでに今シーズン限りでの退任を明言している指揮官の新天地候補の1つとして浮上しているニューカッスルへ、セットで向かうとの憶測も流れている。
だが、パレスにとっては一大事だ。チームの心臓であり、移籍市場の注目銘柄となっているアダム・ウォートンの今夏の移籍は既定路線と目されており、その状況下で鎌田まで失ってしまっては中盤の致命的な弱体化を招きかねないからだ。英メディア『Football Fancast』も、フィオレンティーナ戦第1レグで3-0の快勝を収めた後のレポートで、その懸念と鎌田の重要性を強調している。
「この夜のフィオレンティーナ戦で、カマダが見せたパフォーマンスは見事だった。中盤の一角として先発すると、パス成功率88%(38本成功)という極めて高い精度を記録。さらに特筆すべきは、ドリブル成功率100%という驚異的なスタッツだ。ポゼッションにおいて極上の質を提供した。一方で、攻撃だけでなくボール非保持時の献身性も称賛に値する。守備面でも輝きを放ち、2度のタックル成功に加え、執拗なチェックでボールを回収。デュエル勝利数でも80%という高い数値を叩き出した。これは最近のパレスにおける彼のベストパフォーマンスであり、ウォートンという至宝を失ったとしても、カマダがいればその先の希望があると裏付ける内容だった」
今シーズン、鎌田は必ずしも順風満帆だったわけではない。中盤に右ハムストリングの負傷を負い、約1か月半の戦線離脱を余儀なくされた。リーグ戦での先発出場が17試合に留まっているのはその影響だが、一方でECLでは11試合に出場し、3アシストを記録。欧州の舞台では一貫してその実力を示し続けてきた。
その後のフィオレンティーナとの第2レグ、パレスはアウェーで1-2と敗れたものの、2戦合計4-2のスコアでベスト4進出を決めた。
「少なくとも監督と僕は、すでに欧州のタイトルを手に入れている。彼の戦術はこのコンペティションを戦う上で非常に大きなメリットになっている。僕にとって彼の守備戦術は、世界でも指折りのものだ」
そう語る通り、グラスナーの戦術を熟知し、ピッチ上で誰よりも体現できるのが鎌田である。この師弟関係がもたらす化学反応は、パレスに歓喜をもたらすと同時に、グラスナーにとっても鎌田という存在がいかに不可欠であるかを改めて世界に知らしめた。
まずはECL制覇という目の前の栄光を。そして日本代表としてのW杯。その先に待つのは移籍か、あるいは残留か。鎌田が今、かつてないほど濃密な季節の中にいるのだけは確かだ。
文●下村正幸
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