チャンピオンシップ(イングランド2部)のレスター・シティは、ついに“地獄”への転落を免れなかった。第44節、ハル・シティとのホームゲームを2-2で引き分けた結果、残留圏との勝点差を埋められず、22位以下が確定。来季のリーグ1(3部)降格が正式に決まったのである。
2015―16シーズンにほとんど実現不可能とされていた奇跡のプレミアリーグ優勝を成し遂げ、世界中を驚かせたクラブは、そこから10年で3部まで転落することになった。スポーツ専門チャンネル『ESPN』は、「2016年5月に本拠地でプレミアリーグのトロフィーを掲げた日は、クラブ史上最高の1日として記憶される。一方で今回のハル戦は、最悪の日のひとつとして刻まれることになる」と綴り、その落差の大きさを強調している。
英国公共放送「BBC」は、この転落の背景をより長い時間軸で振り返っているが、まず衰退の兆しが明確になったのは2021年のFAカップ優勝後だったという。「2022年にプレミア8位、さらにカンファレンスリーグ4強入りを果たした後でさえ、当時のブレンダン・ロジャーズ監督はクラブが期待値を見直す必要があると警告していた。背景には、オーナー企業『キングパワー』が新型コロナ禍で大きな打撃を受けたことがあった」。つまり表面的にはまだ強豪の体裁を保っていたものの、足元では財政と編成の土台が揺らぎ始めていたのだ。
その後は下降線を止められず、「質の高い投資が不足する中で、衰退は急速に進行した」と同メディアは指摘。ジェイミー・ヴァーディ、ジェームズ・マディソン、ユーリ・ティーレマンスら代表級選手を擁しながらも、2023年4月にはロジャーズ監督が解任され、後任ディーン・スミスでも残留を果たせなかったという経緯を辿った。
『ESPN』によれば、直近3年間で監督が7人も代わる中では「クラブはスタイルが揺れ動き、何のアイデンティティーも持てなかった」と語る内部関係者も。さらに同メディアは、クラブ内部に「自分たちは大丈夫だという楽観的な文化があった」とも指摘。これは2023年のプレミア降格時にも蔓延していた感覚であり、今回も「危機を直視できなかった」一因とされる。 その一方で、地元総合メディア『Leicestershire Live』は、こうした外的要因だけではこの凋落ぶりを説明しきれないと断じ、「レスターがリーグ1に急降下したのは、20のミスが積み重なった結果だ」と厳しく総括。まず大きかったのは、2021年夏の判断だという。「クラブはそれまで、主力を高値で売って、その資金で戦力を上積みするという明確な補強戦略を持っていたが、この夏はそれを実行しなかった」。これにより、「質の足りない選手を高コストで抱え込み、財政的にも厳しい立場に追い込まれた」という。
問題は編成だけではなく、「最新鋭の練習施設が逆に選手の責任感を奪った」という可能性まで指摘。「選手のあらゆるニーズが満たされすぎている。指紋認証が導入されたのは、IDパスすら覚えていられない選手がいたからだ」と皮肉る。そして、「平日に責任を求められない選手が、試合日に急に責任感を示せるのか」と疑問を投げかけた。
加えて、「ロジャーズ監督に新戦力獲得を示唆しておきながら結局補強できなかった」「カスパー・シュマイケルの後継者を用意しなかったこと」「監督交代の決断が遅れたこと」「高額かつ長期の契約を乱発したこと」「有力選手を売却益なしで流出させた」ことなどを挙げ、一つひとつの失策が連鎖し、結果として「クラブの再建力を奪っていった」と見ている。
ここ数年に限っても、同メディアは「スティーブ・クーパー招聘の誤算」、「2024年夏の補強失敗」「ルート・ファン・ニステルローイ起用の裏目」「降格後もスカッド刷新に失敗したこと」「ヴァーディの後継者不在」「PSR違反による勝点6剥奪」「マルティ・シフエンテス解任後に3週間も後任を決められなかった」ことなどを列挙。そして最後に、「ジョン・ラドキンをその地位に止め続けたこと」を最大級の問題のひとつとして挙げ、「上層部に説明責任がほとんど見られなかったことが、さらに多くのミスを招いた」と結論づけている。
この「栄光から奈落の底へ」の物語は、国外でも注目を集めている。スペインのスポーツ紙『MARCA』は、「2016年のプレミア制覇から10周年を迎えた節目の年に、レスターはリーグ1降格という劇的な悲劇をもって“記念日”を迎えた」と報道。「今季、本来であればプレミア復帰の祝賀ムードとなるはずだったとしながら、チャンピオンシップでも屈指の予算を持つクラブが迎えた結末は、誰も予想しなかった悲劇に終わった」と総括している。
なお同メディアは、この没落がいかに予想外だったかを強調する一方で、「レスターには希望の糸が残っている。ウェスト・ブロムウィッチ・アルビオンにも財務問題による制裁の可能性があり、もし大幅な勝点剥奪が科され、なおかつレスターが残り2試合に連勝し、オックスフォード・ユナイテッドの結果も噛み合えば、理論上は残留の可能性が生まれる」とも付け加え、「希望は最後まで失われない。そしてレスターは決して信念を失うクラブではなかった」と記事を締め括っている。
構成●THE DIGEST編集部
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