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今度こそ“J3の沼”を抜け出すために――“昇格請負人”小林伸二は長野をいかに成長させるか「まだまだ時間がかかると思います」

今度こそ“J3の沼”を抜け出すために――“昇格請負人”小林伸二は長野をいかに成長させるか「まだまだ時間がかかると思います」


 2014年のJ3導入から12年間、このリーグの“門番”状態になっているAC長野パルセイロ。14年の2位、15年、16年、20年の3位など上位争いをした時期もあったが、J2昇格は叶っていない。藤本主税監督が率いた25年は19位とJ3残留が精一杯だった。

 その藤本体制で今季のJ2・J3百年構想リーグもスタートしたが、開幕から8連敗(PK戦負けの2試合を含む)という憂き目に遭ったタイミングで、クラブは指揮官交代を決断。大分トリニータなどで過去5回の昇格経験を持つ小林伸二監督を招聘し、立て直しに打って出たのである。

 小林監督は昨年末まで栃木SCを2年間指揮。その後は休養していたが、オファーが届くと、長年コンビを組んでいた長島裕明コーチとともに新天地へ赴き、守備の改善から着手。初陣だった4月4日の藤枝MYFC戦で2-0といきなり完封勝利に導いた。

 その後はジュビロ磐田に1-1の末に1-4のPK戦負け、いわきFCに0-1と結果は出ていなかったが、失点数は明らかに減っている。チーム全体が前向きな感触を抱いたなか、26日の松本山雅FCとの信州ダービーに向かったのである。

 3月14日の前回対戦は0-5の大敗。その時からメンバーが大幅に入れ替わった。小林監督は積極的な守りから、長いボールをスピード系FWの進昴平と吉澤柊に蹴り込むスタイルを多用。前半から主導権を握った。

「監督が代わってからハードワークができるようになってきた。短期間でそこまでのチームを作り上げた小林監督は素晴らしいと思います」と、長年しのぎを削ってきた松本の石﨑信弘監督に言わしめる勇敢な戦いぶりを見せたのだ。
 
「就任して1か月間、選手たちは本当にまじめに取り組んでくれているし、アプローチのスピードが全然違ってきている。そこは自信を持っていい」と前半の45分間を通してボール支配率やシュート数で相手を上回ったチームに、小林監督も胸を張っていた。

 スコアレスで迎えた後半、松本も修正を図り、良い組み立てからチャンスを作り始めたが、長野は強固な守備でゴールを死守する。そして65分には右CKから長谷川隼が得点。この1点を守り抜き、長野が1-0で勝利。待望の今季2勝目をマークし、EAST-B最下位からの脱出に成功したのだ。

「前回(いわき戦)から5人、スタメンが代わったのは、『今、やれる人で戦う』ということ。パフォーマンスが上がらないのは練習が落ちているということなので、そこはもう1回、見直してほしいと思って、動ける選手で戦いました。全員が切磋琢磨して、チームが競争してくれれば、もっと良くなるので」

 小林監督はこう語ったが、吉澤や冨田康平を筆頭に、藤本監督時代に出番の少なかった選手たちがチャンスを掴み、結果を出しているのは1つの前向きな変化。「日頃の練習が第一」というのは石﨑監督もよく話していることで、フラットな競争があってこそ、チームは活性化する。

 指揮官はフェアな目線で選手たちを見て、守備強度や攻守の切り替え、ゴールにアグレッシブに向かう姿勢の向上に取り組んでいる。その成果が短期間で出ているのだろう。

 ようやく停滞感を打破した印象の長野。今後は福島ユナイテッドFC、藤枝、北海道コンサドーレ札幌、FC岐阜との連戦で、息を抜く暇はない。

 ラスト6戦で小林監督が目ざす攻守両面のベースを引き上げ、2026-27シーズンに本気でJ2昇格を狙える基盤を確立させるのは、なかなか簡単ではなさそうだが、この信州ダービーを勝ち切ったことを1つのステップにできれば理想的だ。
 
「今回、石﨑さん率いる松本と対戦して、我々がどれくらいできるのかをすごく楽しみにしていました。石﨑さんは昨年、(ヴァンラーレ)八戸で良いチームを作っていたし、自分が指揮を執っていた栃木SCは2回とも勝てなかった。今日は勝たせてもらって嬉しいですけど、自分が経験したものを長野に落とし込む作業は、まだまだ時間がかかると思います。

 それでも今回、順位が変わったこともあり、選手たちは必死に準備して、必死にピッチで戦えば可能性が生まれると感じたんじゃないかなと。その一歩を今、踏み出せたということだと感じています」と、小林監督も前向きにコメントしていた。
 
 百戦錬磨のベテラン指揮官にとっても、12年間、“J3の沼”にハマっていたチームを上のカテゴリーに引き上げるのは高いハードルだ。が、スタートは悪くない。傍目から見て「難しい」と思われた2016年の清水エスパルスや19年のギラヴァンツ北九州を昇格させたように、自身の経験値を落とし込んで勝てる集団へ変貌させてくれるのではないかという期待感は高まりつつある。

 今後の小林監督のアプローチと長野の動向を興味深く見守っていきたいところだ。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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配信元: SOCCER DIGEST Web

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