最新エンタメ情報が満載! Merkystyle マーキースタイル
脳トレ四択クイズ | Merkystyle
【現地発コラム】「義務」のユベントス、「悲願」のローマ、「ボーナス」のコモ それぞれ異なる意味を持つCL出場権争い

【現地発コラム】「義務」のユベントス、「悲願」のローマ、「ボーナス」のコモ それぞれ異なる意味を持つCL出場権争い

残り4試合となったセリエAで熾烈な4位=チャンピオンズリーグ出場権争いを繰り広げているのが、4位のユベントス(勝点64)、5位コモ(同61)、そして6位のローマ(同61)。

 この3チームにとってCL出場権は、それぞれはっきりと異なる意味を持っている。ユベントスにとっては「義務」、ローマにとっては「悲願」、そしてコモにとっては「ボーナス」だ。それは、クラブの財務的な現状と今後の経営戦略、ひいては強化戦略にとって、CLがもたらす収益(最低でも5000万ユーロ=約93億円規模)が持つ意味の違いと深く関わっている。


●ユベントス

 ユベントスにとってCL出場権確保が「義務」なのは、現在クラブがダミアン・コモリCEOの下で進めている財政健全化と競争力強化を同時並行で進めるプロジェクトが、CLがもたらす収益を前提条件として構築されているためだ。CLの収益を欠くことになれば、財政健全化という優先課題をクリアするためにチームの競争力を犠牲にせざるを得ない状況に直面する可能性も出てくる。

 アンドレア・アニェッリ会長時代の2010年代末、クリスティアーノ・ロナウド獲得を契機に打ち出した野心的な拡大路線が、コロナウイルス禍がもたらした誤算などにより22年末に破綻して以降、ユベントスは、スカッドコスト(チーム人件費や移籍金償却費、代理人手数料などの合計額=UEFAの規程で売上高の70%以内に抑える必要あり)の圧縮などを通じて、持続可能な収支構造の確立を優先しつつ、チームの強化にも段階的に取り組むという難しい課題を突きつけられてきた。

 現時点においてはローマやインテルのように、UEFAのファイナンシャル・サステナビリティ・レギュレーション規程(FSR=22年にFFPから改定)の下で財務的な制約を課されているわけではない。スカッドコストについても、現時点ですでにUEFAの規程はクリアしているとされる。しかし22年から25年まで直近3年間の累積損失はおよそ3億8000万ユーロ(約708億円)に上っており、それがUEFAの調査対象となっていることも事実。損失額にはFFP基準に基づく補正が入るとしても、ルールが定める3年間で6000万ユーロ=約111億円(一定条件を満たせば最大9000万ユーロ=約167億円)以内に収まる可能性はきわめて低い。

 したがって、UEFAの調査結果で財務規程違反が認定された場合には、UEFAとの間で罰金や選手登録制限、収支改善目標などを定めた協定を結び、枠組みに入る可能性が高い。おそらくユベントスはすでに、それを前提として来シーズン以降の経営計画を立てていると思われるが、それもCL出場とそれがもたらす収益(今シーズンはおよそ6500万ユーロ=約121億円を得た)を前提としているはず。もしCL出場権を逃すようなことになれば、CL収益の欠落分を埋めるために移籍収支を大幅なプラスにしない限り、収支の帳尻自体が合わなくなってしまう。

 そうなれば、夏の移籍市場で主力クラスを売却して利益を上げ、補強もフリー移籍やローンを主体としつつ、現在の競争力を何とか維持するという、一時的な「調整局面」に入ることを余儀なくされる可能性が高い。どの選手を売却するかといった詳細について現時点で言及することは難しいが、マスコミレベルでは、市場評価額が高い選手(DFブレーメル、MFケフレン・テュラム、MFアンドレア・カンビアーゾ、FWジョナサン・デイビッドら)、獲得コストが低くキャピタルゲインが見込める選手(DFフェデリコ・ガッティ、DFピエール・カルル、MFファビオ・ミレッティら)の名前が挙がっている。

 ピッチ上では、UEFAから欧州カップ戦出場権剥奪処分を受けた23-24シーズン、チアゴ・モッタを招聘した新体制が1年足らずで頓挫し、クリスティアーノ・ジュントリSDの解任につながった昨シーズン、コモリCEOの下で再スタートしながら序盤に躓き、イーゴル・トゥドル解任で出直しを計った今シーズンと、プロジェクトが軌道に乗らず出直しを繰り返す混迷が続いてきた。途中就任したルチャーノ・スパレッティがチームを掌握し、ようやく継続性を持った成長戦略の基盤が固まりつつあるように見える今、選手売却による戦力低下を強いられる事態は、何としても避けたいところだ。その意味でCL出場権の確保は単なる「義務」どころか、文字通りの死活問題だと言っても過言ではない。

 ●ローマ

 2020年にフリードキン家がオーナーになって以降、5年間で10億ユーロ(約1886億円)規模の投資を行ないながら、まだ一度もCL出場権に手が届いていない。クラブの収支構造は改善されているとはいえまだ赤字基調で、22年にUEFAのFFP規程に抵触した際に締結した和解協定をまだクリアできていない。本来ならば今年6月が期限なのだが、現在UEFAとの間でそれを1年先延ばしする交渉を進めている状況とも伝えられる。

 ここまでの経緯をひとことでいえば、投資が結果に結びつく前にピッチ上、ピッチ外で様々な問題が生じ、プロジェクトが軌道に乗らないまま方向転換や仕切り直しが繰り返されてきた、ということになる。

 ピッチ上では、ジョゼ・モウリーニョがカンファレンスリーグ(ECL)優勝、ヨーロッパリーグ(EL)準優勝という結果をもたらしたものの、セリエAではCL出場権確保に至らず、その後は昨シーズンのダニエレ・デ・ロッシ~イバン・ユリッチ~クラウディオ・ラニエリという監督交代の混乱を経て、今シーズンもジャン・ピエロ・ガスペリーニの下であと一歩で手が届くかどうかという瀬戸際に留まっている。ピッチ外でも、クラブ経営とチーム強化を担うべきCEOやスポーツダイレクターが、オーナーと現場の間をうまくつなぐことができず、経営戦略、強化戦略を巡って常に内部が紛糾する状態が続いてきた。

 その少なくない部分は、クラブの収支構造が翌年以降CLからの収入が得られるという前提に立った楽観的な見通しに基づいているのに対し、毎年その見通しが裏切られるために損失が膨らみ、チーム強化に振り向ける投資余力が捻出できない負の連鎖を原因とするものだ。財務的な理由から監督が期待するチーム強化が進まず、ピッチ上でも結果が出ないために現場とフロントの間に軋轢が生じて、最終的に誰かが責任を取ってクラブを去っていく、という繰り返しである。

 つい最近起こった、オーナーのシニアアドバイザーとして強化戦略を含む意思決定に大きく関わっていた前監督ラニエリと、それに不満を募らせたとされる現監督ガスペリーニの対立、そしてオーナーによるラニエリの(事実上の)解任という事態も、まさにその同じ構図によって起こったものだ。

 現在のローマの収支構造が持続可能なものになるためには、CLがもたらす6000万ユーロ規模の収入が安定的に確保される必要がある。もし今シーズン4位に入ってCL出場権が得られれば、収益アップによって財政健全化に弾みがつくだけでなく、強化戦略も「守り」から「攻め」に転じるための基盤を整えることが可能になるはずだ。これはサポーターにとってはもちろんフリードキン家にとっても文字通りの「悲願」と言えるだろう。

 しかし逆に今年もそこに手が届かないとなると、UEFAの財務基準をクリアするために移籍収支を大幅なプラスにする必要が強まり、主力クラスの売却が避けられなくなる可能性が高い。具体的には、GKミル・スビラール、DFエバン・エンディカ、DFウェズレイ、MFマヌ・コネ、FWマティアス・ソウレといった、市場価値が高く財務上の売却効果も大きい選手の誰かを手放すことを強いられかねないということ。新戦力の獲得もフリー移籍やローンなど低コストの手法に頼らざるを得ない状況が続くだろう。ここ数年と同様、競争力維持だけで精一杯という「守りの局面」がさらに継続する見通しとなる。

 ●コモ

 セリエA昇格2年目のコモにとってCL出場権は文字通りの「ボーナス」だ。インドネシアの巨大財閥をオーナーに持つため、投資余力についての不安はまったくないが、クラブの収支構造は大幅な赤字で、現状ではUEFAのFFP基準をクリアすることが難しい状況にある。クラブの経営戦略自体、現在はまだ完全な先行投資フェーズであり、欧州カップ戦出場は目標にすら入っていない。

 とはいえ、CLはもちろん、そこに手が届かずEL、ECLに出場することになっても、コモにはこれまで無関係だったUEFAによるFFP規程の網がかかってくる。クラブにとっては、数年後に想定していた状況に前倒しで直面しなければならなくなるわけだ。

 コモのホームタウンは人口8万5000人の小都市であり、スタジアムのキャパシティは1万人強に過ぎない。放映権収入の土台となるファンベースも大都市のビッグクラブとは比較にならない。昨シーズンの売上高は約5500万ユーロ(約102億円)で、セリエA20チーム中18位という規模に留まっている。

 サッカークラブの主要な収益源であるマッチデー(チケット収入)、ブロードキャスティング(放映権収入)、コマーシャル(スポンサー、マーチャンダイジング収入)という3本柱のうち最初の2つに関しては、少なくとも当面は飛躍的な成長は期待しにくい。したがって、今後大きな成長が期待できるのは、主にコマーシャル分野と選手売却益の2つに限られてくる。

 一方、支出の方は、戦力強化に大きな資金を投じてきたのに加えて、トレーニングセンターやスタジアム改修といったインフラにも先行投資を続けており、直近3シーズンの累積赤字は、UEFAのFSR規程が定めるリミット(通常6000万ユーロ、一定条件下で最大9000万ユーロ)を大きく上回る2億ユーロ(約373億円)規模に達する見通しだ。もうひとつの基準であるスカッドコストも、昨シーズンは1億ユーロ(約186億円)を大きく上回っており、UEFAが求める売上高の70%をクリアしていないどころか、200%超という数字に達している。

 もしコモが欧州カップ戦出場権を得た場合、スカッドコストの規制をクリアするのはきわめて難しいため、それが即時の出場権剥奪に結びつく可能性は低いにしても、罰金や登録選手数制限など、何らかのペナルティーは避けられそうにない。ただし累積赤字に関しては、財務内容に関する審査は参加しているシーズン(26-27)を通して行なわれるため、その結果が反映されるのは早くともその次のシーズン(27-28)以降ということになる。

  いずれにしても現在の収支構造から見て、直近3シーズンの財務内容がFSRの審査基準をクリアするとは考えにくい。そうなると27-28シーズン以降に関しても、何らかの是正措置や制裁を受ける可能性が高い。ただUEFAは、今後数年間の間に基準をクリアできる見通しが立ち、経営の持続可能性という観点からも問題がない場合には、「財務基準違反→即出場権剥奪」ではなく、3~4年計画で財務内容を健全化する計画を明示した和解協定を締結し、罰金などの罰則を科したうえで、出場権そのものは認める運用を選んでいる。実際、インテルやローマもその恩恵に預かってきた。

 そんなコモにとって、CL出場権がもたらす6000万ユーロ規模の収入は、売上高を一気に倍増させ、収支構造を劇的に改善させる可能性を持っている。「ボーナス」というのはまさにその意味においてだ。もちろん、単年度の臨時収入だけで、FSRの基準を安定的にクリアできる収支構造を確立できるとは考えにくい。

 しかしそれでも、コモがより長い射程で考えてきたコマーシャル分野の収益拡大や選手売却益の計上による、持続可能な収支構造の確立にとって、この「ボーナス」が大きく効いてくるのは間違いのないところ。CL出場権を逃しても、もしELに出場できれば2000万ユーロ(約37億円)規模の収入を見込むことができる。これでも、現在の収益規模から考えれば小さくない「ボーナス」だ。

 それによって、現在停滞気味のセリエAにフレッシュな風を吹き込んでいるコモがさらに存在感を高めることになれば、イタリアサッカー全体にとっても大きな刺激になるだろう。それはそれで歓迎すべき事態であることは間違いない。

文●片野道郎

【動画】セリエA最新試合、34節ミラン対ユベントスの激闘ハイライト!

 


【画像】ペレ、クライフ、ベッケンバウアー、プラティニ、マラドーナ、バッジョ、ロマーリオ、ジダン――サッカーW杯、歴代スター選手特集Part.1(1998年大会以前)



【画像】ロナウド、カーン、ベッカム、カンナバーロ、イニエスタ、モドリッチ、C・ロナウド、エムバペ、メッシ――サッカーW杯、歴代スター選手特集Part.2(2002年大会以降)


配信元: THE DIGEST

あなたにおすすめ