
ファストフードやコンビニ食、袋入りのスナックや冷凍食品、清涼飲料水など。
こうした食品は、手軽でおいしく、保存もきくため、現代の食生活には深く入り込んでいます。
しかし、その便利さの裏で、脳の「集中する力」に影響している可能性があるようです。
豪モナシュ大学(Monash University)の研究で、超加工食品を多く食べる人ほど、注意力や処理速度を測る認知テストの成績が低い傾向にあることが示されました。
しかもこの関連は、野菜や魚、全粒穀物を取り入れた健康的な食事をしている人でも見られたといいます。
研究の詳細は2026年4月23日付で学術誌『Alzheimer’s & Dementia: Diagnosis, Assessment & Disease Monitoring』に掲載されました。
目次
- 超加工食品が多いと注意力が下がる?
- 記憶力ではなく「集中する土台」に影響していた
超加工食品が多いと注意力が下がる?
超加工食品とは、工業的な工程を経て作られ、精製された原材料、香料、乳化剤、甘味料、保存料などを含むことが多い食品を指します。
分かりやすく言えば、元の食材の形がほとんど分からなくなり、長期保存や食べやすさ、強い味つけのために設計された食品です。
この研究で超加工食品に含まれるものとして挙げられているのは、以下のような食品です。
清涼飲料水、ポテトチップスなどの袋入りスナック、冷凍食品、乳製品デザート、ホットドッグ、加工肉、菓子類、インスタント食品、ファストフード、甘いシリアル、工業的に作られたパンや菓子パンなどです。
もちろん、これらを一度食べたからすぐに脳が悪くなる、という話ではありません。
今回の研究が見たのは、食事全体に占める超加工食品の割合と、認知機能との「関連」です。
対象となった参加者は、認知症を発症していない40〜70歳の成人2192人でした。
参加者は食物摂取頻度質問票に回答し、チームは食品を加工度に応じて分類するNOVA分類を用いて、超加工食品が食事に占める割合を調べました。
その結果、参加者は1日の総エネルギー摂取量の約41%を超加工食品から得ていました。
さらに参加者には、注意力や記憶力を測る認知機能テストも実施。
分析の結果、食事に占める超加工食品の割合が10%増えるごとに、注意力のスコアが約0.05ポイント低下していました。
また、認知症リスクを示すスコアは約0.24ポイント上昇していました。
研究者は、この10%の増加について、毎日の食事に標準的なポテトチップス1袋を加える程度に相当すると説明しています。
重要なのは、この関連が食事全体の質を考慮しても残っていた点です。
研究では、地中海食への順守度も調べられました。
地中海食とは、野菜、果物、豆類、魚、全粒穀物、オリーブオイルなどを多く取り入れる健康的な食事パターンで、過去の研究では脳や心血管の健康と関連することが示されています。
しかし今回の研究では、地中海食に近い健康的な食事をしていても、超加工食品の割合が高い場合には、注意力の低下との関連が見られました。
つまり、「野菜も食べているから大丈夫」とは言い切れない可能性があります。
食事の中身だけでなく、食品がどれほど工業的に加工されているかも、脳の働きに関係しているかもしれないのです。
記憶力ではなく「集中する土台」に影響していた
今回の研究で特に興味深いのは、超加工食品の摂取量と関連していたのが、記憶力ではなく注意力だった点です。
研究では、超加工食品の摂取量と記憶力スコアとのあいだに、明確な関連は見つかりませんでした。
一方で、視覚的注意や処理速度を測るテストでは、超加工食品を多く食べる人ほどスコアが低い傾向が確認されました。
注意力は、脳の働きの中でも地味に見えます。
しかし実際には、学習、会話、読書、運転、仕事中の判断など、多くの認知活動の土台です。
たとえば、本を読んでいても何度も同じ行を読み返してしまうとき、会議中に話の流れを追えなくなるとき、料理中に次の手順を忘れそうになるとき、そこには記憶だけでなく「注意を向け続ける力」が関わっています。
そのため、注意力の低下は、日常生活の小さなつまずきとして現れやすい可能性があります。
では、なぜ超加工食品が注意力や認知症リスクと関連するのでしょうか。
研究では、いくつかの可能性が挙げられています。
一つは、超加工によって食品本来の構造が壊れ、丸ごとの食品に含まれる栄養成分や植物由来の有用成分が失われやすいことです。
さらに、人工添加物や加工中に生じる化学物質が、体に影響する可能性も考えられます。
また、超加工食品を多く食べる生活は、肥満、高血圧、糖尿病などの代謝・血管系の問題とも関連しやすいことが知られています。
これらは脳の健康や認知症リスクにも関わる要因です。
ただし、ここで注意が必要です。
今回の研究は横断研究であり、ある時点での食事内容と認知機能の関係を調べたものです。
そのため、「超加工食品を食べたから注意力が低下した」と因果関係を断定することはできません。
逆に、もともと注意力が低い人ほど、調理の手間が少ない食品やすぐ食べられる食品を選びやすい可能性もあります。
また、住んでいる地域、教育水準、収入、食品へのアクセスなどが、食生活と認知機能の両方に影響している可能性もあります。
それでも、この研究は重要な視点を示しています。
健康的な食品を足すことだけでなく、超加工食品をどれだけ減らせるかも、将来の脳の健康を考えるうえで大切な手がかりになるかもしれません。
もちろん、忙しい毎日の中で、すべてを手作りにする必要はありません。
しかし、清涼飲料水を水やお茶に替える、袋菓子の頻度を減らす、冷凍食品だけで済ませる日を減らす、ホットドッグではなく全粒粉パンのサンドイッチを選ぶ。
そうした小さな置き換えが、脳の集中力を守る第一歩になるかもしれません。
参考文献
Ultra-Processed Foods May Be Quietly Affecting Your Brain’s Ability to Focus
https://www.sciencealert.com/ultra-processed-foods-may-be-quietly-affecting-your-brains-ability-to-focus
Ultra-processed foods damage your focus even if you eat healthy
https://www.monash.edu/news/articles/ultra-processed-foods-damage-your-focus-even-if-you-eat-healthy
元論文
Ultra-processed food intake, cognitive function, and dementia risk: A cross-sectional study of middle-aged and older Australian adults
https://doi.org/10.1002/dad2.70335
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

