
2026年4月16日、アメリカ・マサチューセッツ州ケープコッド沖で操業していた漁船「Timothy Michael」が、非常に珍しいロブスターを捕獲しました。
まるで体を中央で塗り分けたように左右で色が異なっていたのです。
この個体は水族館に寄贈され、遺伝の仕組みを伝える生きた教材として注目されています。
目次
- 左右でまったく違う色、なぜこんなロブスターが生まれたのか
- 目立つ体で生き延びた「奇跡」
左右でまったく違う色、なぜこんなロブスターが生まれたのか
ケープコッド沖で発見されたロブスターは、体の中央を境に、片側が通常のロブスターに近い暗い褐色、もう片側が茹でたロブスターを思わせるオレンジ赤色に分かれていました。
その境界は、まるで定規で線を引いたようにくっきりしています。
通常なら市場に出されるところですが、地元の水産会社は、この個体を食用にせず、マサチューセッツ州ファルマスにある水族館「Woods Hole Science Aquarium」に寄贈しました。
このような仕方で色が分かれるロブスターは、約5000万匹に1匹とされるほど珍しい存在です。
では、なぜこのような体色になるのでしょうか。
ロブスターの色には、主に「アスタキサンチン」という色素が関係しています。
この色素は、赤や黄色、青などの色として殻の中に現れます。
通常のロブスターでは、それらの色が重なり合うことで、海底の岩や海藻に紛れやすい暗いまだら模様になります。
しかし今回の個体では、その色の出方が左右で大きく異なっています。
水族館の生物学者ジュリア・スタッドリー氏は、「左右分割の体色は、産卵前の2つの受精卵が接触し、一方がもう一方を取り込むことで起こります」と説明。
さらに、この過程によって「2組の遺伝情報を持ち、殻の左右で色素の蓄積の仕方が異なるロブスター」が生じると述べています。
これは、いわゆる「キメラ」と呼ばれる現象に近い説明です。
ちなみに、別の生き物では「雌雄モザイク」と呼ばれる状態が生じることもあります。
これは、体の一部にオスの特徴、別の一部にメスの特徴が現れる現象であり、鳥やハチ、チョウ、クモ、ナナフシなどで確認されています。
今回のロブスターについては、遺伝子解析が行われたわけではなく、今後の分析によって詳しく明らかにされていくのかもしれません。
そして科学者たちは、このロブスターに対して、別の点でも驚きました。
目立つ体で生き延びた「奇跡」
このロブスターでさらに目を引くのは、珍しい色だけではありません。
驚くべきは、この個体が約3ポンド、つまりおよそ1.3キログラムまで成長していたことです。
ロブスターは本来、暗い体色によって海底の岩や影に紛れ、捕食者から身を守っています。
しかし今回の個体は、片側が明るいオレンジ赤色です。
海の中では目立ちやすく、通常の個体よりも隠れにくかった可能性があります。
水産会社のダン・ブラント氏も、「珍しい色のロブスターは十分な保護色を持たないことが多く、この個体が3ポンドを超える大きさになったことは、それだけ多くを乗り越えてきたことを示している」と語っています。
ロブスターは成長するたびに脱皮をします。
硬い殻を脱いだ直後は体が柔らかく、外敵に狙われやすい状態になります。
今回の個体は、目立つ色という不利な条件を抱えながらも、何度も脱皮を重ね、その度に危機に面し、それでも、ここまで生き延びてきたのです。
現在、このロブスターは水槽で管理されており、将来的には水族館にて展示される見込みです。
名前はまだ決まっていません。
水族館のスタッフは、しばらく行動や性格を観察してから名前を付けたいと考えています。
アメリカンロブスターは長く生きることがあり、場合によっては数十年、さらに長寿の個体では100年に達する可能性もあるとされます。
そのため、名前選びにも時間をかけたいのでしょう。
この奇妙なロブスターの存在は、これからも「遺伝の不思議」と「海の中で生き抜いた奇跡の物語」を伝えていくのです。
参考文献
Ultra-rare Lobster Split in Two Colors Looks Almost Too Strange to Be Real
https://www.zmescience.com/ecology/animals-ecology/ultra-rare-lobster-split-in-two-colors-looks-almost-too-strange-to-be-real/
1 in 50 million split-colored lobster found in Massachusetts
https://www.popsci.com/environment/split-color-lobster-massachusetts/
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部

