
一人の人間には、弱みや強み、真面目な部分や不真面目な部分など、いろいろな側面があります。
その中で、みなさんは「自分の性格の中核となっている特徴はこれだ!」と言えるものがあるでしょうか?
このほど、国際的な心理学研究チームは、4000人以上を対象にこの疑問に関する調査を実施。
人々が「これが自分の性格の本質だ」と感じている性格特性を明らかにしました。
研究の詳細は2026年に心理学雑誌『Journal of Personality and Social Psychology』に掲載されています。
目次
- 人は「自分らしさの核心」をどう認識しているか
- 自分の「核」はポジティブで、しかも際立った部分だった
人は「自分らしさの核心」をどう認識しているか
これまでの性格心理学では、ビッグファイブと呼ばれる枠組みが広く使われてきました。
これは「経験への開放性」「誠実性」「外向性」「協調性」「神経症傾向」という5つの軸で、人の性格を説明するものです。
こうしたモデルは、人と人の違いを比較するには非常に有効です。
しかし今回の研究が注目したのは、そこではありません。
「人が自分自身をどう定義しているか」という、より主観的な側面です。
研究では、参加者に「自分の性格を支配している重要な特徴」を最大3つまで挙げてもらいました。
さらに、通常の性格検査にも回答してもらい、科学的な性格分類との関係が調べられました。
その結果、興味深いことが分かりました。
確かに多くの人は、ビッグファイブに含まれる特性の中から少なくとも1つは「自分の核心」として挙げていました。
しかし同時に、多くの人が挙げた重要な特性は、既存の分類ではうまく捉えきれないものでもあったのです。
つまり、「心理学が重要だと考える性格」と、「本人が自分らしいと思う性格」は完全には一致していませんでした。
さらに、参加者が特性を文章で説明すると、その内容は心理学の定義とはかなり異なっていました。
複数の性格要素が混ざり合い、より日常的で実感に近い形で語られていたのです。
これは、人が感じている「性格」というものが、研究者の使うカテゴリーよりもずっと柔軟で複雑であることを示しています。
では、人々が具体的に「自分の性格の核心」として挙げたものを見てみましょう。
自分の「核」はポジティブで、しかも際立った部分だった
では、人はどのような性格を「自分の中核」と感じているのでしょうか。
研究から浮かび上がったのは、いくつかの明確な傾向です。
まず第一に、人は圧倒的に「ポジティブな特性」を自分の核として挙げる傾向がありました。
たとえば「親切」「努力家」「社交的」といった性質です。
これはある意味当然で、人は自分を人生の主人公として捉えるため、良い側面を中心に据えたがるからだと指摘されています。
第二に、その特性は「自分の中で特に際立っているもの」でした。
つまり平均的な性質ではなく、「自分の中で一番目立つ特徴」が「これが自分だ」と感じられるのです。
この感覚は、他人との差別化というよりも、自分自身の中での相対的な強さに基づいています。
第三に、人が挙げる特性は意外にもバラバラでした。
例えば、外向性が核であれば、「社交的」「明るい」「人付き合いが得意」といった似た特徴を並べそうですが、実際には異なるタイプの特性が選ばれることが多かったのです。
これは、人が自分を単一の性質ではなく、多面的な要素の組み合わせとして捉えていることを示しています。
そして最後に重要なのは、これらの「中心的特性」は、日常の行動を常に決定しているわけではないという点です。
研究では、参加者にランダムなタイミングで「今の行動は何によって動かされているか」を答えてもらいましたが、そこでは自分が挙げた「核となる特性」は、あまり強い予測力を持ちませんでした。
つまり、人は「自分はこういう人間だ」と語る一方で、その特性が常に行動を支配しているわけではないのです。
ただし、自分で選択できる場面では、その特性がより強く影響する可能性はあります。
あなたの「自分らしさ」は、どこから来ているのか
この研究が示しているのは、人が持つ「自分らしさ」は、科学的に定義された性格の集合ではなく、自分自身が意味づけた物語に近いということです。
私たちは、自分の中で特に際立ち、しかも望ましいと感じる特徴を選び取り、それを「自分の核」として語っています。
しかしその核は、常に行動を支配する絶対的なものではなく、状況によって揺れ動くものでもあります。
あなたが「これが自分だ」と思っているその性格は、本当にあなたの本質なのでしょうか。
それとも、自分自身が選び取った“物語の中心人物像”に過ぎないのでしょうか。
参考文献
Who Do People Think They Are?
https://www.psychologytoday.com/us/blog/ulterior-motives/202604/who-do-people-think-they-are
元論文
“Me in a nutshell”: Exploring the content and properties of central traits.
https://doi.org/10.1037/pspp0000596
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

