今年の年明け以降、コメの店頭小売価格が下がり続けている。農林水産省が公表している直近のPOSデータ(全国1000店舗のスーパーにおける店頭小売価格)によれば、銘柄米は5キロ3947円、ブレンド米は同3676円へと下落。一部のスーパーでは5キロ3000円を切る銘柄米の特売品が販売され始めており、コメの流通業界では業者の投げ売りによる「6月暴落説」まで囁かれている。
日本有数のコメ産地に本拠を置く、ローカルメディアの報道記者が指摘する。
「昨年、政府が備蓄米を放出したにもかかわらず、コメの店頭小売価格が高騰を続けていたのは、少なからぬ流通業者が生産者からコメを買い漁り、高値売り抜けを狙って売り渋りをしていたからにほかなりません。この時、多くの消費者が『高いコメは絶対に買わない』『主食を麺やパンに切り替える』などの行動変容を示しました。その結果、銘柄米を買い占めていた流通業者の倉庫には在庫が積み上がり、高値売り抜けどころか『売るに売れない状況』に追い込まれたのです。今年に入ってからの、ブレンド米も含めた店頭小売価格の下落は、まさに消費者の抵抗がもたらした成果だったと言えるでしょう」
ところが、である。コメの価格がようやく下がり始める中、政府が「放出備蓄米の買い戻し」に向けて動き始めていることが明らかになったのだ。
具体的には食料安定供給特別会計の2026年度予算に、政府備蓄米買い戻しのための費用を計上。その規模は2025年に放出した備蓄米59万トンのうち、差し当たりの買い戻し量として15万トン分を想定しているとされる。
鈴木憲和農水相はJAや流通業界の顔色をうかがいながら…
ローカルメディアの報道記者が、怒りも新たに続ける。
「政府は買い戻しの時期や量は未定としていますが、鈴木憲和農水相は定例会見で『放出備蓄米を買い戻す』旨を明らかにしており、買い戻しが断行されるのは時間の問題と言っていいでしょう。政府が買い戻しに踏み切れば当然、市場におけるコメの在庫量は減少し、下がりかけていた店頭小売価格は再び、上昇に転じることになる。要するに『元の木阿弥』ですよ」
放出に際して、業者との契約上の問題があるとしても、状況に応じて「備蓄米は買い戻さない」という政治決断は可能だったはずで、
「コメの生産を持続可能なものにしていくことはもちろん重要ですが、鈴木農水相のこれまでの言動を見る限り、JAや流通業界の顔色をうかがいながら政策の舵を切っているようにしか思えないのです」(農業関係者)
鈴木農水相は「政府が米価をコントロールすべきではない」と大見得を切ってきたが、これでは「米価の高止まりを狙っている」と勘繰られても仕方がないだろう。
(石森巌/ジャーナリスト)

