宿敵の目の前でラ・リーガ制覇を決める。バルセロナの長い歴史において、クラシコで優勝を確定させた例は一度もなかった。その大一番が本拠地のカンプ・ノウで開催されるという、かつてない理想的な状況が整っていた。
試合を1週間後に控え、スペインのメディアを独占したのは、レアル・マドリーを襲った凄まじい内紛劇だった。ピッチ外の混沌に支配され、もはや試合どころではない空気が漂う中、マドリディスタの代弁者を自認する『AS』紙のトマス・ロンセロ記者は、祈りにも似た言葉で選手たちを鼓舞していた。
「ここ数日の騒動によって、私ですら抗いがたいほど負の感情に支配されている。初心(うぶ)だと笑われるかもしれないが、評価の暴落したアルバロ・アルベロア監督の『スパルタ兵』たちが、ボクシンググローブを正しい方向に向け、失墜した威信を取り戻すべくかつてない戦いを見せてくれると確信している。我々の目の前で嘲笑おうとするバルサの祝祭を台無しにするために、気概を見せるんだ。歴史に敬意を払い、ピッチへ出て、勝利せよ」
しかし、ロンセロの悲痛な叫びがピッチに届くことはなかった。前半18分までに2点のリードを許したマドリーに、反撃の火を灯す気配すら見えなかった。そのままのスコアで敗れた試合後、ロンセロは「無力感」の一言を添えて、自らの絶望を綴るしかなかった。
「61歳を重ねてもなお、私の内に残る少年のごとき純真さは、マドリーが栄光の歴史を掘り起こし、強度と誇りに満ちた試合を演じて、バルサの戴冠を阻止すると信じて疑わなかった。しかし、それは漂流を続ける現プロジェクトの現実からかけ離れた、あまりに感情的な願望に過ぎなかったのだ」
マドリーにとっての悲劇は、単なる敗北ではない。同じ『AS』紙のハビエル・シジェス記者は、「バルサは現在の実力差を熟知しており、より理知的、かつ効率的に振る舞っていた。それほどの熱量を持って戦わずとも、一定の余裕を持って勝利を収めてしまった事実こそが、マドリーにとっての最悪の現実だ」と指摘する。 カタルーニャに拠点を置く『SPORT』紙のエルネスト・フォルチ元編集長は、今回の戴冠を「単なる一つのタイトルという枠に収まらない、重みのあるリーグ優勝」と位置づけ、両クラブの間に横たわる距離をこう力説した。
「日曜日、カンプ・ノウで目撃されたものは、単なる1試合ではなく、ある種の証明であり、何より象徴的な儀式だった。バルサは、まるで身体に止まった蝿を払いのけるかのような余裕を持って、白い巨人を退けた。必要であれば、さらにスコアを広げることもできただろう。後半は、優勝を確信したバルサと、これ以上の屈辱を避けたいマドリーとの間で、まるで密約が交わされたかのような展開となった。バルサは何節も前から実質的に優勝に手をかけていたが、一方でマドリーは、根幹を揺るがす内部崩壊の中で、手の施しようのない凋落ぶりを露呈し続けるだけだった」
この勝利によって、クラシコの全コンペティションを通算した対戦成績は106勝52分け106敗と、ついにタイに持ち込まれた。カタルーニャにおいて近年、話題にのぼる1990-91シーズンを境にラ・リーガの優勝回数をカウントすれば、バルサの19回に対し、マドリーは11回というもう一つの数字。ヨハン・クライフが「ドリームチーム」を率いて初めてリーグを制覇して以降、スペインの勢力図は大きく塗り替えられている。
試合当日の未明に父を亡くしながら指揮を執り、試合後に選手たちの手で宙に舞ったハンジ・フリック監督。彼はクライフの直接の弟子ではないが、その系譜を受け継ぎながら、現代的な強度を加えてその哲学を鮮やかにアップデートさせた。
バルサが才能豊かな若手を中心にさらなる成長曲線を描こうとする一方で、マドリーは、常勝軍団結成へのラストピースと目されていたエムバペの加入を経て、2シーズン連続の無冠が決定した。カンプ・ノウでの歴史的な戴冠劇は、現在の両者の間に横たわる格差を、改めて世界に知らしめる結果となった。
文●下村正幸
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