ジョゼ・モウリーニョのレアル・マドリー復帰のシナリオが、現実味を帯び始めている。『AS』紙によれば、発端は代理人ジョルジュ・メンデスによる売り込みだった。もっとも、それは混迷を極めるマドリーに届く、数ある売り込みの一つに過ぎなかった。
しかし、同紙が「マドリーの包囲の輪が、モウリーニョに向かって狭まっている。アルベロアの後任候補の中でポルトガル人指揮官はポールポジションに立っており、チームを立て直すのに最適な人物だという確信は日に日に強まっている」と報じる通り、ここにきて事態は急速に熱を帯びている。その背景にあるのは、皮肉にもピッチ外での内紛劇だ。
このタイミングで起きた騒動を、冷ややかに見つめるのがエドゥ・ポロ氏だ。シャビ・エルナンデスのバルセロナ監督時代に専属広報を務め、現在は古巣のスポーツ紙『Mundo Deportivo』でコラムを寄稿する彼は、こう綴っている。
「フロレンティーノ・ペレスの非公式な代弁者として振る舞うお抱えの記者たちは、すでに『このチームは制御不能であり、秩序を取り戻せるのはモウリーニョだけだ』と囁き始めている。不都合な真実が突如として露呈し、強権的な統制が必要だという論調が出来上がったのは、果たして偶然だろうか」
ポロ氏が内紛そのものを意図的に仕組まれた舞台装置と仄めかす一方で、『AS』の名物コラムニスト、ハビエル・アスナール氏は、その復帰待望論をさらに踏み込んで展開する。
「マドリーが求めているのは、厳密な意味での監督ではない。修正者であり、処刑人であり、映画『パルプ・フィクション』に登場する掃除屋、ザ・ウルフのような存在だ。ロッカールームの扉を蹴破り、この豚小屋の主は誰だ?と言い放つ男。必要なのは戦術家などではなく、幼稚園の警官だ。『新銀河系軍団』と持て囃され、肥大化したエゴを制御できなくなった者たちの鼻っ柱を折り、平伏させる権威に他ならない」
文●下村正幸
【動画】クラシコ勝利でバルサ戴冠! ハイライト 実務面でも、外堀は埋まりつつある。『AS』は、本格的な交渉はこれからとしつつも、ベンフィカの今シーズン最終戦から10日以内であれば、300万ユーロで退団できる契約条項の存在を強調する。これはモウリーニョ自身の「(16日の)エストリル戦が終わるまで接触するつもりはない。その後、一週間の猶予期間があり、私は自分が適切だと思う相手と自由に話す権利を持つ」という10日の発言とも合致する。
モウリーニョがサンティアゴ・ベルナベウを去って13年が経過するが、ペレス会長と良好な関係を維持しているのは周知の事実だ。
しかし、この相思相愛は、反対サイドの目には、ペレスが2シーズン連続無冠で窮地に立つ中での、巧妙な批判除けの材料と映る。カタルーニャを拠点とする『SPORT』紙のエルネスト・フォルチ元編集長は、「マドリーの地平の先には、モウリーニョというサーカスが姿を現している。それは、時代遅れのワンマン体制が最後に放つ、哀れな煙幕に過ぎない」と断じる。
一方、『AS』きっての極端なマドリー寄りの論陣を張るフレデリック・エルメル氏は、「モウリーニョはチームの意識を変えた。自分たちが世界一になれると信じ込ませてくれたんだ」というかつての愛弟子カリム・ベンゼマの言葉を引用し、正当性を説く。「彼が用いたのは『電気ショック療法』だった。そしてそれこそが、今のチームに欠けている。柔和な懐柔策ではなく、時には劇薬こそが適切な処方箋となる。マドリーはこの危険な昏睡状態に留まり続けるわけにはいかないのだから」
急展開で実現しそうな、マドリーとモウリーニョの再会。『SPORT』紙のハビエル・ヒラルド記者は、こう結論付ける。
「モウリーニョというカードは、澱んだ組織を激しく揺さぶるための、これ以上ない苗床となっている。その結果が成功か、さらなる破滅かは分からない。だが、たとえ何が起きようとも、少なくとも『誰かが決断を下す』という一点においてのみ、事態は動き出すだろう」
文●下村正幸
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