「まさか、ここにクマが出るなんて…」
東京都八王子市、高速道路に面する竹やぶのすぐそばに設置されたカメラ。近くに住宅街や飲食店が立ち並ぶこのエリアに突如として現れたのは、体長1メートル超のツキノワグマである。先月29日の午後9時すぎのことだった。
5月10日に地元のハンターが箱わなの点検を行った際にセンサーカメラの映像を確認したところ、クマの姿を確認。4月29日、午後9時過ぎに記録されたものだった。
「ただ、現在もなおクマの捕獲に至っていないことから、すでに都心に向かって移動し始めているのではないか、といった情報があり、隣接エリアの住民に不安が広がっています」(全国紙社会部記者)
これまでクマが人里に降りるのは「山のドングリが不作だから」とされてきた。ところが近年の研究で、クマが下界に降りる理由は、水分たっぷりの果実や家庭菜園の栗、さらにはゴミ捨て場の残飯といった「都会の美食」を明確にターゲットにしているから、ということが明らかになっている。
「今回、八王子の現場にクマを誘い出したのは、イノシシ用の米ぬかだったようです。一度、人間の食い物は旨いと学習した個体は、もはや痩せた山には戻らないといいますからね。そう考えた場合、味をしめた彼らが多摩地域の住宅街を『巨大な屋外レストラン』とみなしていることは否定できません」(前出・社会部記者)
資産価値の防衛ラインは多摩川沿い全域に後退
専門家が最も危惧するのは、驚愕の移動ルートだ。クマは身を隠せるヤブや木々を伝って歩くが、その「専用高速道路」となるのが多摩川の河川敷だというのである。クマの生態に詳しい動物研究家が言う。
「奥多摩から青梅、八王子を経て、川の流れに沿って南下すれば、立川や福生は目と鼻の先です。さらにその先には調布、世田谷、大田といった超密集地帯がある。好奇心旺盛な個体が河川敷の茂みを突き進めば、新宿のオフィス街にクマが出現する…そんな日が来るのは、もはや空想世界の話ではなくなるということです」
こうした事態は不動産業界に激震を走らせている。多摩エリアは「自然豊かで子育てに最適」と謳われてきたが、そんなブランド価値が「猛獣出没」により、暴落の危機に瀕する可能性が出てきているのだ。
つまり今後もクマ出没のニュースが続けば、早朝の散歩すら命がけの街に誰が家を買うのか、となりかねない。資産価値の防衛ラインは今や圏央道を超え、多摩川沿い全域にまで後退するかもしれないのだ。
オフィス街の緑地から突如、黒い巨体が飛び出してくる。「東京侵食」のカウントダウンは、もう始まっているのだ。
(灯倫太郎)

