
「夜ふかしは体に悪い」と聞くと、多くの人は睡眠時間だけを思い浮かべるかもしれません。
しかし私たちの体は、眠っている時間だけでなく、日中にどれくらい活動し、夜にどれくらい落ち着き、その流れが毎日どれほど安定しているかにも大きく左右されているようです。
米ジョンズ・ホプキンス大学(JHU)の研究チームは、手首に装着する活動量計のデータと血液検査を組み合わせ、24時間の休息・活動リズムと生物学的老化の関係を調査。
その結果、昼夜の活動にメリハリがあり、毎日のリズムが安定し、休息と活動が細かく分断されていない人ほど、血液から見た老化の進み方が遅い傾向を示したのです。
研究の詳細は2026年5月7日付で学術誌『JAMA Network Open』に掲載されています。
目次
- 「何歳か」ではなく「体がどれだけ老けているか」を調べた
- 安定した24時間リズムの人ほど、血液から見た老化が遅い傾向
「何歳か」ではなく「体がどれだけ老けているか」を調べた
私たちは普段、年齢を誕生日から数えます。
しかし例えば、同じ65歳でも、階段を軽々と上れる人もいれば、疲れやすく病気を抱えやすい人もいます。
この違いを考えるうえで重要になるのが、生物学的年齢です。
これは、体が実際にどれくらい老化しているかを示す考え方で、近年はDNAに付く小さな化学的な印を調べることで推定できるようになってきました。
今回の研究で使われたのは「エピジェネティック時計」と呼ばれる指標です。
チームは、長期研究に参加した中高年・高齢者207人を対象に、手首装着型の装置で約7日間の活動量と光曝露を記録しました。
参加者の平均年齢は約68歳で、睡眠や昼寝、装置を外した時間なども記録されています。
ここでチームが注目したのは、単なる睡眠時間の長短ではありません。
・日中と夜間の活動量にどれほど差があるか
・毎日似た時間に活動と休息が現れるか
・休息と活動が細切れに入れ替わっていないか
といった、24時間全体のリズムです。
たとえば、昼はしっかり動き、夜は落ち着いて過ごし、その生活の波が毎日大きく乱れない人は、休息・活動リズムが安定していると考えられます。
反対に、夜にも活動量が多かったり、休んだり動いたりが細かく切り替わったり、日によって生活のタイミングが大きくずれたりする人は、リズムが弱く分断されている状態に近いといえます。
安定した24時間リズムの人ほど、血液から見た老化が遅い傾向
解析の結果、より強く規則的な休息・活動リズムを持つ人では、生物学的老化の進み方が遅いことを示す傾向が見られました。
特に、2種類のエピジェネティック時計(GrimAgeとPhenoAge)で、休息・活動リズムの良さと低い老化スコアとの有意な関連が確認されています。
具体的には、昼夜の活動量の差が大きく、日ごとのリズムが安定している人ほど、エピジェネティック年齢加速が小さい傾向を示しました。
一方で、夜間など本来活動が少ない時間帯にも活動量が高い人や、休息と活動が頻繁に切り替わる人では、老化が速いことを示すスコアが高い傾向がありました。
つまり、体にとっては「何時間寝たか」だけでなく、「一日の中で活動と休息がどのような波を描いているか」も重要なのかもしれません。
私たちの体には、約24時間周期で働く概日リズムがあります。
朝に光を浴びて活動を始め、日中に体を動かし、夜には活動を落として眠りに向かうという流れは、体内時計と深く結びついています。
この流れが毎日大きく乱れないことは、炎症や代謝、脳の健康などにも関わる可能性があります。
ただし、今回の研究は横断研究です。
参加者を長期間追跡して、生活リズムの変化がその後の老化をどう変えるかを調べたわけではありません。
そのため、休息・活動リズムの乱れが老化を速めたのか、老化が進んだことでリズムが乱れたのかは、まだ判断できません。
また、対象者は研究に参加できる程度に健康な高齢者であり、結果をすべての人にそのまま当てはめるには注意が必要です。
それでも今回の結果は、日々の生活リズムの安定性が体の老化状態を映す重要なサインになり得ることを示しています。
将来的には、ウェアラブル機器を使って休息・活動リズムを記録し、老化や健康リスクの変化を早めに捉えることができるかもしれません。
朝起きる時間、日中の活動量、夜に体を休める時間。
そうした何気ない一日のリズムは、単なる生活習慣ではなく、体の老化時計と静かにつながっている可能性があります。
老けにくい体を目指す第一歩は、特別な若返り法ではなく、毎日の「動く時間」と「休む時間」の波を整えることなのかもしれません。
参考文献
Your Daily Rhythms May Help Slow Biological Aging, Study Suggests
https://www.sciencealert.com/your-daily-rhythms-may-help-slow-biological-aging-study-suggests
24-Hour Rest-Activity Rhythms Linked to Rate of Biological Aging
https://publichealth.jhu.edu/2026/24-hour-rest-activity-rhythms-linked-to-rate-of-biological-aging
元論文
Twenty-Four–Hour Rest-Activity Rhythms and Epigenetic Age Acceleration in Middle-Aged and Older Adults
https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2026.11474
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

