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“元祖クールビューティー”と呼ばれた梶芽衣子「修羅の花」「恨み節」…その歌は「キル・ビル」で世界的に脚光を浴びた

“元祖クールビューティー”と呼ばれた梶芽衣子「修羅の花」「恨み節」…その歌は「キル・ビル」で世界的に脚光を浴びた

「銀蝶渡り鳥」が5月27日、BS12で放送
「銀蝶渡り鳥」が5月27日、BS12で放送 / (C)東映

元祖クールビューティー、梶芽衣子。1965年にスクリーンデビューを飾って以降、邦画の第一線で活躍してきた銀幕スターである。日活での映画をはじめ、東映での代表作では「女囚さそり」シリーズや「修羅雪姫」シリーズがよく知られている。人によっては「キル・ビル」に梶が歌う楽曲「修羅の花」「恨み節」が使用されたことで、歌手としての印象を強く持っているかもしれない。彼女の人気を決定づけたのは「女囚701号/さそり」(1972)だが、その一つ前の主演作「銀蝶」シリーズも高い人気を誇る作品だ。BS12 トゥエルビ(BS222ch※全国無料)では5月27日(水)夜7時から、「銀蝶」シリーズの第一作目「銀蝶渡り鳥」を放送する。本作での梶を振り返ると共に、邦画史に刻まれた彼女の足跡を辿っていく。

■18歳で日活の専属女優に、スクリーン映えすると言われた凛とした顔立ち

梶がデビューしたのは1965年、18歳のとき。本名の太田雅子の名で、当時は青春映画やアクション映画を得意とした日活の専属女優として多数の作品に出演した。歳若くとも凛とした顔立ちはデビュー時からスクリーン映えすると言われ、ポスト・吉永小百合と期待されたが、長らく主演作には恵まれずにいた。そんな彼女の転機となったのが、梶芽衣子に改名し、日活から東映移籍後の初期主演作「銀蝶渡り鳥」(1972)だ。

「銀蝶渡り鳥」は、邦画の歴史を語るには欠かせない東映任侠映画の一作だ。それ以前の東映での女任侠ものと言えば藤純子の「緋色牡丹博徒」シリーズが人気であったが、藤が結婚、引退を表明し、任侠路線の世代交代が進む中で梶が今度はポスト・藤純子として売り出された。

日活時代は主演作に恵まれなかった梶だが、その理由の一つが先輩女優や監督、会社の人間相手にも言いたいことは言う一本気な性格。そして、当時好まれていた吉永や藤のような和風美人とは違う、クールな顔立ちの美人であったことだ。しかし、日活での後期出演作「野良猫ロック」(1970)のようなニューアクションで注目されはじめていた梶にとって、「銀蝶渡り鳥」のヒロイン、ナミはハマり役だった。
「銀蝶渡り鳥」
「銀蝶渡り鳥」 / (C)東映


■「銀蝶渡り鳥」は「ハスラー×シティーガール任侠」という不思議な作品性

銀座の夜の世界を舞台にした本作は、元不良グループの女番長で刑務所帰りのナミ(梶)が、銀座を縄張りとする暴力団組織・大和田興業を相手に立ち回る現代任侠もの。

ある事件で暴力団の幹部を刺し殺したナミは、3年後、刑務所から出所。銀座でビリヤード店を経営する亡き父の昔の仲間を訪ね、そこで出会った夜の手配師・ゴロマキの隆(渡瀬恒彦)の紹介でクラブのホステスとしての生活を始める。しかし、その生活も束の間、大和田興業が店を乗っ取ろうと画策し、ナミは恩義のある店を救うため、店の権利書を賭けたビリヤード対決に挑む。

ホステスとしては和装、洋装を着こなし、後半ではビリヤードプレイヤーとしての姿を見せる。ビリヤードの取り入れはプロデューサーがポール・ニューマンの「ハスラー」(1961)のファンであったというのが真相だが、あまり任侠ものに乗り気でなかった梶を口説き落としたのが、「『ハスラー』を女でやりたいんだ」という言葉。たかしかに、梶のクールでいて眼光鋭い美貌はハスラーという勝負師にぴったりだ。

「ハスラー」を見ていれば部分部分に覗くオマージュが楽しめ、スリークッションという今では珍しくなったルールでの対決も見ていて面白いところだ。

クライマックスでは凛とした着物姿で殴り込み、日本刀を片手に派手な大立ち回りを披露する。「ハスラー×シティーガール任侠」というちょっと不思議な作品性であるが、脇役にはコメディー俳優の由利徹もいて、殺伐になりすぎない娯楽性も持っている。復讐に生きる「女囚さそり」や様式美の「修羅雪姫」とは異なり、都会的で軽やかな佇まいと勝負師としての駆け引きを前面に出した点に、本作ならではの魅力がある。

また、ゴロマキの隆役で共演の渡瀬恒彦は渡哲也の弟であり、隆の兄貴分である紳之助は、梅宮辰夫が演じている。東映の一大スターとして活躍した梅宮の姿を見られるのも本作の楽しみと言える。

■「キル・ビル」で世界的に注目を浴びた梶芽衣子の歌「修羅の花」「恨み節」

「銀蝶渡り鳥」で存在感を示した梶の人気を決定づけたのが、次作の「女囚701号/さそり」だ。梶の人生のモットーは、「媚びない、めげない、くじけない」。それが演じる役にもっとも強く表れているのが本作だ。

恋人に裏切られ、刑務所に収監された主人公のナミ(梶)。彼女は凄惨なリンチや暴力に耐えながら、復讐の怨念を燃やし続けるというバイオレンス作品。作中、ナミはほとんど台詞を喋らないが、これは、喋らないほうが凄みが増すという梶からの提案だったという逸話も。「台詞なしで良ければ出演します」という条件が受け入れられ、台詞を極力排した演出で東映史上に残る傑作が誕生した。

当時も大ヒットした本作だが、現在でも名が知られているのは、梶が歌った主題歌の「怨み節」が、クエンティン・タランティーノ監督による「キル・ビル Vol.1」(2003)のエンディング曲に使用されたことにあるだろう。邦画に薫陶を受けたタランティーノは本作で幾つもの邦画のオマージュを行い、挿入歌の「修羅の花」も、梶主演の映画「修羅雪姫」(1973)で彼女が歌った主題歌である。

この「修羅の花」「恨み節」は90年代に一度再評価されているが、「キル・ビル」を契機に世界的な注目を集めた。さらに、「銀蝶渡り鳥」の主題歌「銀蝶の渡り鳥」、挿入歌「銀蝶ブルース」にも興味は集まっていった。

「銀蝶の渡り鳥」は、後に元祖クールビューティーと呼ばれることになる梶の若き日の姿、そして作品世界を体現した歌を収めた代表作の一つ。復讐劇のイメージで語られがちな梶芽衣子の原点として、その魅力の幅を改めて確認できる一作が「銀蝶渡り鳥」である。本作は5月27日(水)夜7時から、全国無料視聴が可能なBS12 トゥエルビ(BS222ch)で放送される。

◆文=鈴木康道

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