「10年に一頭の怪物牝馬」と絶賛されたリバティアイランドの再来を決定づける鬼脚だった。ほかでもない、5月24日に行われたGI・オークス(東京・芝2400メートル、3歳牝)を見事に制したジュウリョクビエロである。
鞍上の今村聖奈に日本人女性騎手としては初となる中央GI制覇、それも「クラシックレース制覇」という歴史的栄誉をもたらす快挙となった。
本サイトは4月13日に公開した記事で、GI・桜花賞(阪神・芝1600メートル)当日の裏番組、通称「残念桜花賞」と呼ばれるL・忘れな草賞(阪神・芝2000メートル)を異次元の差し脚で圧勝したジュウリョクピエロを取り上げ、「3歳牝馬のクラシック戦線に凄い怪物出現」と指摘。オークス前日に公開した記事では「サンデーサイレンスの『3×3』という紙一重のインブリード(近親交配)とともに、父オルフェーヴルから受け継いだ「狂気の血」がオークスで爆発する」と予言していた。
JRA公式YouTubeチャンネルで公開された「ジョッキーカメラ」の映像と音声から、今年の激闘譜を今村目線で振り返ってみると…。
ゲートインが始まると、今村は「はい、お嬢さん。あと一歩」と愛馬を促す。ゲートイン後、係員から「馬が鳴いているね」と声をかけられた今村が「大丈夫です。最近、鳴くの」と応じる一幕も。そして超満員のスタンド前で、運命のゲートが開いた。
外枠の16番ゲートからスタートした今村は、他馬の出方をうかがいながら内寄りに愛馬を導くと、1コーナー手前では後方に馬を下げた名手・武豊をピタリとマーク。
その後、レースは淡々と流れて、1000メートル通過は62秒2。それでも今村は名手に歩調を合わせるかのように、ジックリと追い出しのタイミングを計っていた。
そうして迎えた、最後の長い直線。今村は外側に馬を回した名手を右に見ながら、左のイン側に空いたスペース目がけてゴーサイン。先団馬群を右に左に次々と交わし続けるや、最後は先頭を行く2頭の間を鋭く割って、クビ差の勝利を手にしたのである。
「ヤバイ、勝ってもうた!」「ムリに外出さんでよかったな」
ゴールインの瞬間、今村は「ワアァー!」と絶叫するや、右手をグッと上げてガッツポーズ。2着のルメールが左手を差し伸べて祝福すると「サンキュー! ワアァー!」と喜びを爆発させた。
その後、2コーナー付近で馬を返した今村はハアハアという荒い息遣いの中、関西弁を交えながら愛馬に声をかけ続けた。
「うそー! やったぁー! ヤバイ、勝ってもうた! ピエちゃん、アンタいっちゃんカッコいいわ! どうする? ほら、みんなアンタのこと見とんで。ピエちゃん、夢みたいやな。ほら、東京競馬場やって。すごいね」
スタンド前で厩舎スタッフが出迎えると、今村は涙声になりながら「ヤバイ、ヤバイ」を連発。今村が地下馬道で「泣いてんちゃう」とスタッフに声をかけると、スタッフは「さっきから泣いているわ」と涙声で応酬。
「タオルがないか心配や。ピエちゃん、アンタほんまに凄いな。ムリに外出さんでよかったな」
今村の興奮は収まらず。検量室の前で待ち受けていた寺島良調教師(栗東)の姿を目にすると、
「センセイ! ヤッベー! ホント、ピエちゃん頑張った!」
そう言って愛馬の奮闘を讃えたのだった。
まさに師弟で勝ち取ったオークス馬の称号。ちなみに陣営は今秋の国際GI・凱旋門賞(パリロンシャン・芝2400メートル)への出走登録を、すでに済ませている。
(日高次郎/競馬アナリスト)

