マツダが3代目となる新型CX-5を、5月21日に発売した。約9年ぶりの全面刷新である。価格は330万円から447万1500円。Googleを積んだ大画面、広くなった後席、ぐっと上質になった内装。今どきのSUVとしては、戦略的な値付けと言っていい。
ところが、である。長年のディーゼル乗りには、この刷新にどこか冷めた目を向ける者がいる。彼らが気にしているのは、どうやら値札ではないらしい。
国内仕様のエンジンは、2.5リッター直噴ガソリンにMハイブリッドを組み合わせた一本に絞られた。長くファンを支えてきた2.2リッターディーゼルは、新型では廃止された。CX-5はマツダの世界販売を支える大黒柱。世界の需要を見れば、ガソリンへの集約は理にかなう。
だが、ディーゼルを指名買いしてきた日本のファンにとっては、いちばん欲しかった選択肢が消えた、ということでもある。
数字を並べると、引っかかりの正体が見えてくる。新型の2.5ガソリンMハイブリッドは、最高出力178ps、最大トルク237Nm。対して先代の2.2ディーゼルは、200psに450Nm。トルクの差は実に200Nm以上だ。しかもディーゼルは、その太いトルクを低い回転から生み出すのが持ち味だった。発進から中間加速まで、アクセルを踏めば背中をぐっと押される。あの力強さが、新型のスペックからは見えてこない。
かといって、新型が劣ると決めつけるのは早い。2.5ガソリンMハイブリッドは静粛性や扱いやすさで勝るし、価格は戦略的だ。それでもディーゼルの太いトルクが体に染みついた人には、数字の差が引っかかる。
新型なのに「買い待ち」が生まれるという皮肉
事実、廃止が伝わると、なくなる前に押さえておこうという駆け込みが報じられた。そうまでして手に入れたかったのは、巨大画面でも新色でもない。低速から効くトルク、長距離で伸びる燃費、そしてマツダらしい走り。CX-5のディーゼルは、そこに金を払う客に支えられてきたのだ。
そこで頭をもたげるのが、「本命は2027年」という見方である。マツダは2027年中に、新世代エンジンSKYACTIV-Zと新型ハイブリッドの導入を予定している。今、乗り換えを考えるディーゼル乗りが本当に待つべきは、むしろそちらではないか。
新しい機構は評価が固まるまで様子を見る、という慎重なユーザーも少なくない。新型なのに、買い手に「待ち」が生まれている。なんとも皮肉な話だ。
もちろん、刷新された走りや使い勝手を歓迎する声は多い。新型を本命と捉え、迷わず選ぶ人はいるだろう。それでもディーゼルに惚れて乗り継いできた層の一部は、まだ財布の紐を固く結んだままだ。
マツダが問われているのは、330万円という安さではない。次の一手が出揃うまでの期間を、屋台骨のCX-5でどれだけ取りこぼさずに走り切れるか。そこにかかっている。
(ケン高田)

