読売巨人軍・阿部慎之助監督の暴行逮捕のニュースに、プロ野球ファンはさぞかし驚いたことだろう。
交流戦開幕前夜、あろうことか自宅での娘への暴行容疑で警察に連行されるという前代未聞の事態。しかし騒動の本質は「監督の逮捕」という事象以上に、その通報経路にある。18歳の長女はなぜ警察ではなく、児童相談所を選んだのか。
「それがこの事件の深淵を物語っているような気がしますね」
と語るのは、家族問題に詳しい専門家だ。
5月25日夜、自宅で15歳と18歳の娘がケンカをしているところを阿部容疑者が「静かにしろ」と仲裁に入ったが、長女に言い返されたことで「カッとなって」、掴んで倒すなどの暴行に及んだとされる。
長女は自ら児童相談所に「親から虐待された」と電話相談。その後、児童相談所が110番通報している。
一般的に、突発的なDVや暴行であれば、直接110番がなされるはずだ。しかし今回は児童相談所に通報し、そこを経由して警察に連絡があった。長女は阿部容疑者から暴力を受けた際、AIのChatGPTにどうすべきかを相談。「児童相談所へ通報する」というアドバイスに沿って電話をしたというのだが…。
親という存在から物理的・精神的に切り離してほしいという叫び
先の専門家が言う。
「子供自身が児童相談所に連絡する行為は、親という圧倒的な存在から物理的・精神的に切り離してほしいという、命がけの叫びに近い場合が多い。つまりこの事件の背景には、一過性の『姉妹喧嘩の仲裁』という枠組みを超えた、家族間の奥深い問題があった可能性が考えられます」
皮肉にも、勝負の世界で「厳しさ」を美徳としてきた阿部容疑者の指導方針が、最も守るべき存在であるはずの家族を傷つける形となった。
阿部容疑者は5月26日未明に釈放されたものの、球団は「進退を含め処分を検討」と厳しい態度を崩していない。
3年契約最終年にのしかかる「V奪還」という至上命題に加え、セ・パ交流戦前の宿敵・阪神との3連戦全敗という精神的な重圧があったことは想像に難くない。
プロ野球界の監督という名声に隠れた「密室の闇」を白日の下に晒した、今回の衝撃事件。はたして「暴行指揮官」が再びベンチに座る日は来るのか。名門球団の威信をかけた「聖域なき決断」の行方に、日本中が注視している。
(灯倫太郎)

