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「サッカーを再定義した建築家」マンC退任のグアルディオラ監督 現地メディアが重要視したのはトロフィーの数ではなく“影響力”

「サッカーを再定義した建築家」マンC退任のグアルディオラ監督 現地メディアが重要視したのはトロフィーの数ではなく“影響力”

2016年からマンチェスター・シティを率いてきたジョゼップ・グアルディオラ監督が、プレミアリーグ最終節のアストン・ビラ戦を最後に、10年に及んだエティハドでの時代に幕を下ろした。試合は1-2で敗れたものの、焦点が当てられたのは結果ではなく、イングランド・サッカーを変え、シティを世界的強豪へ押し上げた稀代の指揮官との別れだった。

 地元マンチェスターの日刊紙『Manchester Evening News』は、この1日を「完璧な送り出し」と表現。同メディアによれば、最初にグアルディオラ監督の涙を誘ったのは、60分にベルナルド・シウバが交代した場面だった。今夏退団するポルトガル代表MFは感情を抑えきれない様子でピッチを後にし、両チームの選手が花道を作った。シティの控え選手やベンチ外のメンバーもタッチラインに並び、「ひとつの時代の終わり」を見送っている。

 同監督はかつて「自分の弱点」と呼んだベルナルドが、9年間高い基準を示し続けてピッチを去る姿に、白いTシャツの裾で目元を拭ったが、同メディアは「それは時代の終わりだったが、試合の終わりではなかった」とし、直後にアストン・ビラのオリー・ワトキンスが2点目を決め、指揮官が思い描いた結末にはならなかったと伝えた。

 それでも、この日は勝敗を超えた意味を持っていた。記録的な観衆が集まったエティハドで、グアルディオラ監督は試合後に心からのスピーチを行ない、スタンドからは「あと10年、グアルディオラ」のチャントが響いた。同メディアは、涙を流すファンの様子を伝えながら、指揮官が「もし街で私を見かけた時、シティファンなら抱きしめに来てほしい。私はそれを必要としている」と語ったことを紹介。このスピーチは、「本当に楽しかった」との言葉で締めくくられている。
  また試合後の会見でもグアルディオラ監督は感情を隠さず、涙について問われると、「私はめったに泣かないが、ベルナルドが泣くのを見ると、私も泣いてしまう、彼にとっては、本当に特別な瞬間だった。感情があまりにも高ぶっていた」と説明。また、バルセロナ、バイエルン時代の別れと比較し、「バルセロナへの愛は特別だし、バイエルンの記憶も忘れられない。ただ、ここでは10年を過ごした。思い出の荷物は、どこよりも大きい」と、マンチェスターでの時間の重みを示した。

 一方、英国公共放送局『BBC』は、グアルディオラ監督を単なる“勝者”ではなく、「サッカーを再定義した建築家」と評した。シティでの10シーズンで17個の主要タイトル、監督キャリア17年では通算41個のタイトルを獲得。リーグ優勝は12回を数える彼の勝率の“異常な”高さを、サー・アレックス・ファーガソン(39年で49個のタイトル)を引き合いに出して強調している。

 しかし同メディアがより重視したのは、トロフィーの数ではなく、その影響力だった。バルサではヨハン・クライフらの思想を完成形に近づけ、バイエルンではポジショナルプレーをさらに深め、そして「彼のスタイルは通用しない」と言われたイングランドで、プレミアリーグ全体の戦術観を変えてみせた彼の功績を「彼の指紋は、あらゆる場所に残っている」と表現。そして、「後方からのビルドアップ」「中盤の前進」「ペナルティーエリア周辺の崩し」という3つの局面で体系的に革命を起こしたと評している。

 さらに、ミケル・アルテタ、ヴァンサン・コンパニ、エンツォ・マレスカ、ロベルト・デ・ゼルビ、ルイス・エンリケら、彼の影響を受けた指導者たちが、各地で競争相手となっている点にも注目。「ファーガソンにはライバルがいた。ペイズリーにもライバルがいた。しかしベップは、自ら教育した監督たちとタイトルを争わなければならなかった」とし、それでも適応し、進化し、勝ち続けた点に、同メディアは特別な価値を見出した。

 そして最後に、「彼が残したものは、彼によって違う考え方をするようになったスポーツそのものだ」と結論づけ、その偉大さを問うよりも、彼が何を残したかの方が重要だと主張して記事を締めている。 一方、米スポーツ専門チャンネル『ESPN』は、グアルディオラ監督には「イングランド・サッカーへの深い愛情」があったとして、その一例として4月末に、ストックポート・カウンティの3部リーグの試合を突然観戦したというエピソードを紹介。彼はこの国の伝統的なスタジアム、小さな更衣室、敵意あるチャントを好み、FAカップでビッグクラブが下部リーグの本拠地へ赴く文化にも魅力を感じていたという。同メディアは、「ペップがイングランド全土を変えた一方で、彼自身もイングランドに影響を受けた」と伝えた。

 さらに、グアルディオラ監督が去りし後のシティにも言及し、後任監督候補としては、かつて彼の助手を務めたマレスカの名を挙げ、「完璧な適任者」との太鼓判を押すが、一方で後継者が背負う重圧の大きさも強調。マンチェスター・ユナイテッドがファーガソン退任後に苦しみ、アーセナルもアーセン・ヴェンゲル政権の後、今季のタイトル奪取までに長い時間を要したように、「伝説的監督の後を継ぐ難しさは、歴史が証明している」と指摘している。

 それでも同メディアは、シティには新たな時代を迎えるための準備が整っているとの見解を示し、2023年の3冠メンバーからの世代交代にはグアルディオラ監督も関与し、現在ではフィル・フォーデン、ジャンルイジ・ドンナルンマ、ニコ・オライリー、ラヤン・シェルキらを中心とした若いチームが形成されつつあるとして、「大規模な手術は必要なく、未来は明るい」と綴っている。
  ちなみにシティには、プレミアリーグによる115件に及ぶ財政面での違反に対する告発について処分が下る可能性が示唆されており、「クラブの“次章”に、巨大な不確定要素を残している」というが、それでも同メディアは、「ペップがこのクラブと国全体のサッカーに残した影響は消えない」と改めて強調した。

 グアルディオラ本人は、かつてクライフがバルサにもたらしたように、自身がシティを変えたという見方を否定したというが、記事では「彼は、クライフとの比較を否定しようとして、むしろ自分自身の影響を説明していたのかもしれない」と指摘。グアルディオラ監督は、勝者としてだけでなく、改革者としてもその記憶を強く刻み込んで、イングランドを後にしたと言えよう。

構成●THE DIGEST編集部

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配信元: THE DIGEST

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