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「週150分の運動」は心臓に良いが、目指すべきは「週600分」だった

「週150分の運動」は心臓に良いが、目指すべきは「週600分」だった

週150分の運動はスタートライン? / Credit:Canva

「週150分運動すれば健康」

実はこの有名な数字は、「ここまでやれば十分」というゴールではなく、「まずここまでは達成したい」という最低ラインだったのかもしれません。

中国、マカオ理工大学(MPU)の研究チームは、運動時間と心肺持久力が心血管疾患リスクにどう関係するかを調査。

その結果、週150分の中高強度運動は確かに心臓を守る効果を持つ一方で、心血管リスクを大きく下げるには週560〜610分ほどの運動が必要になる可能性が示されました。

この研究は2026年5月19日付で、学術誌『British Journal of Sports Medicine』に掲載されました。

目次

  • 週150分の運動は確かに心臓に良い
  • 心血管リスクを大きく下げるに、週560〜610分の運動が必要かもしれない

週150分の運動は確かに心臓に良い

健康のために「週150分以上の運動」をすすめる言葉は、今や多くの人に知られています。

ここでいう運動とは、ゆっくり散歩する程度ではなく、心拍数がある程度上がる中高強度の身体活動です。

例えば、速歩、ランニング、サイクリングなどが含まれます。

しかし、この150分という数字は、全員にとって同じ意味を持つのでしょうか。

同じ時間だけ運動しても、心臓や肺、筋肉の働き方は人によって違います。

若い頃から運動してきた人と、長年あまり動いてこなかった人では、同じ30分の速歩でも体への意味が変わるはずです。

また150分以上運動した場合、どんな影響があるのでしょうか。

こうした疑問に答えるため、研究チームは、単に「何分運動したか」だけでなく、「その人の心肺持久力がどれくらいあるか」も合わせて調べました。

心肺持久力の指標として使われたのが、VO₂max、つまり最大酸素摂取量です。

これは、強い運動中に体がどれだけ酸素を取り込み、利用できるかを示す値で、心臓・肺・筋肉の総合的な働きを反映します。

研究では、英国バイオバンクに参加した1万7088人のデータが分析されました。

参加者は2013〜2015年のあいだに、手首に活動量計を7日間装着し、実際にどれくらい中高強度運動をしているかを測定されました。

その後、中央値で7.85年にわたって追跡し、心房細動、心筋梗塞、心不全、脳卒中といった心血管イベントがどれくらい起きたかを調べました。

追跡期間中には、合計1233件の心血管イベントが確認されています。

結果として、同じ体力レベルでほとんど運動しない場合と比べると、週150分の運動基準を満たした人では、心血管リスクが約8〜9%低いと推定されました。

これは体力の高い人にも低い人にも見られたため、週150分という基準が無意味だったわけではありません。

むしろ、心臓を守るための「誰にでも通用しやすい最低ライン」としては、しっかり機能していたのです。

ただし、より大きなリスク低下を目指す場合、関連していた運動量は150分を大きく超えていました。

より詳しい結果を次項で確認しましょう。

心血管リスクを大きく下げるに、週560〜610分の運動が必要かもしれない

研究チームがさらに詳しく分析したところ、心血管リスクを20%下げるには、週340〜370分ほどの中高強度運動が必要になる可能性が示されました。

そして、30%を超える大きなリスク低下と関連していた運動量は、週560〜610分でした。

これは、現在よく知られる週150分基準の約3〜4倍にあたります。

1日あたりに直すと、およそ80〜90分です。

もちろん、これはかなり高いハードルです。

実際、この研究で週560分以上の運動をしていた人は、全体の約12%にとどまっていました。

さらに興味深いのは、体力が低い人ほど、同じリスク低下を得るために少し多くの運動が必要だった点です。

例えば、心血管リスクを20%下げるには、心肺持久力が高い人では週約340分で済む一方、心肺持久力が低い人では週約370分が必要と推定されました。

30%のリスク低下では、高体力の人が週約560分、低体力の人が週約610分でした。

つまり、体力が落ちている人では、同じ心血管保護に近づくまでに、少し長めの運動時間が必要になる可能性があるのです。

ただし、この結果を「全員が今すぐ週600分運動すべき」と読むのは危険です。

この研究は観察研究であり、運動そのものがリスク低下の直接原因だったと断定するものではありません。

よく運動する人は、食事、睡眠、医療へのアクセス、喫煙習慣なども違っていた可能性があります。

また、高齢者や持病のある人、長年運動していなかった人が、急に1日90分の運動を始めるのは安全とは限りません。

それでも大切なのは、週150分を「達成したら終わり」と考えないことです。

150分は有効な入口ですが、安全に増やせる人では、その先にも追加の利益が広がっている可能性があります。

参考文献

The 150-minute Exercise Rule Helps Your Heart. But If You’re Serious About It, Better Aim for 600 Minutes
https://www.zmescience.com/medicine/aim-for-600-minutes-exercise/

560-610 minutes of exercise a week needed for substantial heart benefits
https://www.eurekalert.org/news-releases/1128460

元論文

Joint non-linear dose–response associations of device-measured physical activity and cardiorespiratory fitness with cardiovascular disease: a cohort and Mendelian randomisation study
https://doi.org/10.1136/bjsports-2025-111351

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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