
現在、世界人口は80億人を超えています。
しかし、この増加が今後もずっと同じように続くとは限りません。
もし気候変動、パンデミック、紛争、資源不足などが重なり、地球が支えられる人口の上限が急激に下がったら、人類の数はどのように変化するのでしょうか。
イタリア・ミラノ大学(University of Milan)の研究チームは今回、人類の過去1万2000年間にわたる人口増加を1つの数学モデルで説明する研究を発表。
このモデルによると、現在の世界人口はすぐに崩壊へ向かっているわけではありませんでした。
しかし、もし大きな環境危機などによって、地球が安定して支えられる人数が20億人程度まで急激に下がるようなことがある場合、世界人口は急速に減り、2064年ごろまでに現在の半分程度になる可能性があると試算されています。
研究の詳細は2026年5月22日付で学術誌『Chaos, Solitons & Fractals』に掲載されています。
目次
- 人口の増え方は、時代によってまるで違っていた
- 2064年の「人口半減」は予測ではなく、極端な仮定での試算
人口の増え方は、時代によってまるで違っていた
人類の人口は、ずっと同じペースで増えてきたわけではありません。
農耕が始まった新石器時代には、人口はゆっくりと増えていきました。
ところが産業革命以降、医療、食料生産、衛生環境が大きく改善されると、人口は一気に増加します。
まるで、長く静かに燃えていた火が、突然大きく燃え広がるような変化です。
一方で、1970年ごろからは増加の勢いが少しずつ緩やかになってきました。
出生率の低下や都市化、教育の普及などによって、人口は増え続けているものの、かつてのような爆発的な伸びではなくなっています。
従来の人口モデルでは、こうした変化を説明するために、指数関数的な増加や、ある上限に近づくロジスティック成長など、複数の考え方が使われてきました。
しかし今回の研究では、これらの異なる増え方を、1つの非線形方程式でまとめて説明しようとしています。
この方程式はもともと、ガラスやアモルファス固体といった「無秩序な物質」の物理学から着想を得たものです。
ガラスの中で原子の動きが時間とともに変わっていく様子を説明する数学が、人類社会の人口増加にも応用できるかもしれないというわけです。
少し不思議に聞こえますが、研究者たちは、この数式が新石器時代から現代までの人口変化をうまく再現できることを示しました。
2064年の「人口半減」は予測ではなく、極端な仮定での試算
今回の研究で最も注目されているのは、「2064年ごろまでに世界人口が半減する可能性がある」という部分です。
ただし、ここは慎重に読む必要があります。
研究者たちは、現在の人口推移がそのまま続けば、すぐに人類が崩壊すると述べているわけではありません。
むしろ基準となる分析では、現在の世界人口の流れは比較的安定しており、差し迫った崩壊を示していないと説明されています。
では、なぜ2064年という数字が出てくるのでしょうか。
それは、地球の「環境収容力」が突然大きく下がるという、かなり極端な条件をモデルに入れたためです。
環境収容力とは、地球が食料、水、エネルギー、土地、社会基盤などを通じて、持続的に支えられる人口の上限のようなものです。
もし気候崩壊、大規模な感染症、戦争、資源不足などが重なり、この上限が約20億人まで落ち込んだと仮定すると、モデル上では人口減少が急速に進みます。
その結果、世界人口は2064年ごろまでに半分程度まで減る可能性があると試算されたのです。
これは天気予報のように「2064年に必ず起こる」と告げるものではありません。
むしろ、社会や環境の土台が急激に変わった場合、人口の流れも短期間で大きく変わり得ることを示す警告灯のようなものです。
人口は単なる数字ではありません。
その背後には、食料を作る仕組み、病気を防ぐ医療、争いを避ける社会制度、資源を分け合う経済があります。
それらが安定していれば人口の変化も比較的なだらかになりますが、土台が崩れれば、数式の上でも急な変化が現れる可能性があるのです。
今回の研究が示しているのは、人類の未来がすでに決まっているということではありません。
むしろ、人口の未来は、地球環境や社会の安定に強く左右されるという、ごく現実的なメッセージです。
2064年という数字は、未来を言い当てる予言ではなく、危機が重なったときに人口動態がどれほど敏感に反応し得るかを示す、数学からの警告なのです。
参考文献
New mathematical model suggests global population crash by 2064
https://phys.org/news/2026-05-mathematical-global-population.html
New mathematical model indicates global population decline by 2064 in an extreme scenario of environmental crises, with humanity potentially halving if Earth’s sustainable capacity is reduced to 2 billion people.
https://en.clickpetroleoegas.com.br/new-mathematical-model-indicates-global-population-decline-by-2064-in-an-extreme-scenario-of-environmental-crises-with-humanity-potentially-flpc96/
元論文
Global population crisis scenarios predicted by a general nonlinear dynamical model
https://doi.org/10.1016/j.chaos.2026.118542
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

