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ダンカンからウェンバンヤマへ――スパーズに息づく勝者の伝統。敗れた第3戦後には名将ポポビッチがチームを激励<DUNKSHOOT>

ダンカンからウェンバンヤマへ――スパーズに息づく勝者の伝統。敗れた第3戦後には名将ポポビッチがチームを激励<DUNKSHOOT>

一進一退の攻防戦が続くオクラホマシティ・サンダー対サンアントニオ・スパーズのウエスタン・カンファレンス・ファイナルは、サンダーがホームコートで第5戦を制し、3勝2敗と王手をかけた。

 とはいえスパーズも簡単に引き下がる相手ではない。規格外の若き大黒柱、ヴィクター・ウェンバンヤマの闘魂を見るにつけても、最終戦までもつれ込む予感を与えてくれる。

 そのウェンバンヤマは、33得点の活躍で2勝2敗のイーブンに持ち込んだ第4戦の試合後に「休暇まであと6勝する必要がある」と、頂点に立つまでの勝ち星を数えていた。

 あと2勝でカンファレンス優勝、さらに4勝でNBAファイナルを制する算段だ。彼の休暇は、それまで訪れることはないという、願をかけたカウントダウンでもある。

 そしてこの“勝利数カウントダウン”は、スパーズのプレーオフでの伝統であると、2014年の優勝メンバーが明かした。
  現在フランス代表のチームマネージャーを務めるボリス・ディーオウは、2012年の3月から15-16シーズンまでの4シーズン半、僚友のトニー・パーカーとともに、グレッグ・ポポビッチHC(ヘッドコーチ)の下、スパーズでプレーした。

 仏メディア『レキップ』に掲載されたインタビューの中で、14年間のNBAキャリアを誇る万能フォワードは、ティム・ダンカンが主導していた当時のカウントダウンの様子を振り返っている。

「ダンカンは、プレーオフが始まった瞬間からそれを始めていた。つまり、頂点に立つまでに必要な勝利数を掲げるんだ。1回戦の時点では『16』、『15』...というようにね。その数字がロッカールームの壁に掲げられていたよ」

 スパーズ一筋のレジェンドであるダンカンは、1999年、2003年、05年、07年、そして14年の5回、このフランチャイズをNBA王者に導いた。

「これは深く刻み込まれた伝統でもある。試合に勝つたびに、彼は数字を更新していった。そして残りが『1』になると、いよいよプレッシャーを感じる。私もそれを2年連続で経験した。2013年は最後の数字を外すことができなかった。でも2014年は外せたんだ」 2013年のファイナル、スパーズはマイアミ・ヒートに3勝4敗で敗れた。

 第5戦に勝利し、3勝2敗とリードした時点で、ダンカンは壁の数字を『2』から『1』へと書き換えたことだろう。

 しかしその後の2試合で連敗し、この最後の『1』を消せないままシーズンを終えることになった。

 ゆえに翌年、同じ相手に4勝1敗で勝利し、最後の『1』を外せた時の気分は、さぞかし爽快だったに違いない。

 ダンカンは2016年に引退し、ポポビッチHCは24年11月に軽度の脳卒中発症もあり、昨年5月に勇退。だが、彼らが根付かせた伝統は、今もチームに息づいている。

 現場から退いたあともフロントの一員として球団の運営に携わっている名将は、今シリーズの第3戦でサンダーに108-123で敗れた試合後、ロッカールームを訪れ、選手やスタッフに言葉をかけたという。
  ガードのディアロン・フォックス曰く、ポポビッチが試合直後にロッカールームに来たのはこの時が初めてだったそうで、全員を集めてドアを閉めると、「これは我々のバスケットボールではない」といった内容の話で選手を鼓舞した。

 ディーオウは、当時のポポビッチについて次のように振り返っている。

「自分がいた時代、ポップはヘッドコーチだったから、しょっちゅうマシンガンのように怒鳴られていた。勝った試合ですら、内容が気に入らなければ厳しく叱責された。今はチームと常に一緒にいるわけじゃないから、たまに訪れた時の言葉は余計にインパクトがあると思う」

 第4戦でのスパーズ奮起は、その“ゲキ”も影響していたに違いない。ホームで迎える第6戦の前にも、もしかしたら再びポポビッチ御大の激励訪問があるかもしれない。

 もちろん、第5戦で勝利を奪えなかったスパーズの、ロッカールームに掲げられているであろう数字は『6』のままだ。ウェンバンヤマはその数字を睨みつつ、「次こそは『5』に書き換える」と誓いながら、大一番に挑むことだろう。

文●小川由紀子

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配信元: THE DIGEST

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