欧州サッカー界で、プレミアリーグ勢の“独走”がますます鮮明になっている。今季はヨーロッパリーグ(EL)でアストン・ビラが優勝を飾り、カンファレンスリーグ(COL)では日本代表の鎌田大地を擁するクリスタル・パレスが頂点に到達。そして、現地5月30日に行なわれるチャンピオンズリーグ(CL)決勝は、アーセナルがパリ・サンジェルマンを下せば、初の欧州制覇を成し遂げると同時に、イングランド勢による欧州主要3大会制覇という歴史的快挙が実現する。
こうした現状について、ドイツのサッカー専門サイト『transfer.markt.com』は、「10年前とは完全に時代が変わった」と、驚きを持って伝えている。同メディアは、2014年から18年にかけてスペイン勢がCLを5連覇し、そのうち2度はラ・リーガ勢同士の決勝だった事実、さらに同期間のEL優勝クラブも5回中4回がスペイン勢だったと紹介した。当時のプレミアリーグ勢について、「欧州のトップテーブルでは、ほとんど太刀打ちできていなかった」と振り返る。
しかし、現在は状況が一変。『transfer.markt.com』は、「プレミアリーグは長年にわたって他リーグを圧倒する資金を投じてきたが、今では“賢い投資”も行なうようになり、それが欧州全体に深刻な影響を与え始めている」と指摘。「アストン・ビラはすでにヨーロッパリーグを制し、パレスもカンファレンスリーグで優勝。さらにアーセナルがCL決勝で勝利すれば、イングランド勢による完全制圧となる」と報じている。
さらに記事では、2009-10シーズンから2018-19シーズンまでの「2010年代」に欧州タイトルを獲得したイングランド勢が、チェルシー、マンチェスター・ユナイテッド、リバプールによる計5回に留まっていたのに対し、「2020年代」はすでに6度の欧州タイトルを獲得していると紹介。シーズン平均でも、2010年代は「優勝クラブ0.50回、決勝進出1.10回」だったのに対し、2020年代は「優勝クラブ1.17回、決勝進出2.00回」へ急増しているという。
同サイトは、「莫大な資金を投じている以上、ある程度は予想されたことかもしれないが、今やプレミアリーグが『世界最高のリーグ』である点に異論を唱えるのは難しい」と結論づけている。
一方で、その“資金力の差”が欧州サッカー全体の競争バランスを壊しつつあるとの懸念も強まっている。アメリカのスポーツ専門サイト『The Athletic』は、2025-26シーズンのプレミアリーグ放映権分配金について、「20クラブに初めて総額30億ポンド(約6420億円)以上が分配される見込み」と報道。優勝したアーセナルには1億9870万ポンド(約425億円)、最下位のウォルバーハンプトン(ウルブス)にも1億1770万ポンド(約252億円)が支払われる見込みだという。
同メディアは、「プレミアリーグの分配方法自体は、欧州で最も公平な部類」としながらも、「分配される“総額”があまりにも巨大であり、欧州主要リーグの大半のクラブは、最下位のウルブスより少ない収入しか得られない」と説明し、降格クラブですら欧州中堅クラブを上回る資金を持つ現実を浮き彫りにする。 一方、英国のサッカー専門サイト『Football365』は、さらに踏み込んだ論調を展開。「プレミア勢は、一部のメガクラブを除けば、ほぼ全ての欧州クラブを財政面で圧倒している」とし、「(EL決勝の)アストン・ビラ対フライブルクは、収入規模で4億5020万ユーロ(約837億円)対1億6280万ユーロ(約303億円)の戦いだった。これは公平な勝負なのか?」と疑問を呈した。
また、「他国クラブがイングランド勢を倒す現実的な方法は、相手が単純に酷いプレーをするしかない」と皮肉を交え、「ボーンマスですら、今や世界で26番目に裕福なクラブだ」と指摘。パレスとラージョ・バジェカーノのUCL決勝についても、「パレスの収入は2億3250万ユーロ(約432億円)、ラージョ・バジェカーノは6000万ユーロ(約112億円)。両者は別の“金融惑星”に存在している」と表現している。
さらに、「もし立場が逆なら、我々(英国人)は“大会が最初から仕組まれている”と感じるだろう」と主張。「欧州サッカーは競争であるべきなのに、収入差があまりにも巨大すぎて競技性が損なわれている」と警鐘を鳴らした。
同じく英国のサッカー専門サイト『FootballTransfers UK』もまた、プレミアリーグの優位性は単なる“高額補強”ではないと分析。「彼らの本当の強みは、ある移籍が失敗をしても、それが致命傷にならない点だ」と説明。「何度でも挑戦できる余裕」「大量補強を行なっても回り続ける資金力」こそが最大の武器だとしている。
その例としてアーセナルを挙げ、「リバプールが2選手に大金を投じた一方で、アーセナルは6人を獲得した。中には期待外れの補強もあったが、負傷者が出ても常に代役を用意できた」と指摘。さらに、「サンダーランドは13人の補強に1億7000万ポンド(約364億円)を使って欧州カップ戦の出場権を獲得し、リーズも10人補強に1億ポンド(約214億円)を投じて残留した」と紹介した。
対照的に、レバークーゼンやユベントス、ミランといった欧州の名門クラブについては、「大型補強に失敗すると即座にCL出場権争いから脱落し、その後の補強予算にも深刻な影響が出る」と説明。「プレミアリーグ以外のクラブには、失敗を許容する余裕がもはや存在しない」と伝えている。
『Football365』は最後に、「UEFAは最も裕福な30クラブをヨーロッパリーグやカンファレンスリーグから除外すべきだ」とまで主張。「プレミアリーグという“暴れ牛”が欧州サッカーの“陶器店”を壊し尽くしている」との強烈な表現で、現状を批判。「競争」そのものを破壊しかねないほどの格差を生み出している現状において、もしアーセナルがCL決勝を制すれば、議論はさらに加熱しそうだ。
構成●THE DIGEST編集部
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