
日本テレビは、2023年にアニメ『葬送のフリーレン』で金曜深夜23時のアニメ枠を増設した。画像は『葬送のフリーレン』1期キービジュアル (C)山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会
【画像】「えっ、こんなにあるの」「強すぎる…」 これが近年テレビ局が増設したアニメ放送枠です(7枚)
各TV局で進む「アニメ枠増加」の動き
近年のアニメ人気を受け、それぞれのTV局がアニメに力を入れるようになりました。複数のTV局からは、放送枠をさらに増やすと発表されています。しかしTV・配信アニメはすでに年300本以上が放送されており、「誰が見るのか」「誰が作るのか」という問題が発生しています。これ以上の枠の増加には、何か意味があるのでしょうか?
テレビ朝日の中期経営計画には「2029年までにアニメIP展開数を2倍にする」と記されています。2026年5月20日に発表された2026年3月期決算でもこの姿勢は変わっておらず、引き続きアニメに注力していると書かれていました。現在テレビ朝日は全国で5つのアニメ放送枠を抱えていますが、さらに深夜枠の増加が示唆されています。じきに新たな発表があるでしょう。
テレビ朝日だけでなく、他のTV局もアニメに力を入れています。日本国内だけではなく、海外での需要も期待できるアニメは配信料以外にも、グッズや音楽、イベントなどで多くの収益を見込める収益源として大きな期待をかけられているからです。
すでに10を超えるアニメ放送枠を抱えるフジテレビは海外の配信大手「クランチロール」や中国のプラットフォームである「bilibili」と連携した動きを見せています。さらに新作だけでなく、『鬼滅の刃』や『暗殺教室』など一定の人気を獲得している作品の再放送を行っています。特に『暗殺教室』は新作劇場版と連携する動きになっているのが、戦略性を感じさせます。
日本テレビは2026年4月から『葬送のフリーレン』や『薬屋のひとりごと』などを放送していた金曜23時台のアニメ枠を30分から1時間に拡大し、攻めの姿勢を見せています。
TBSは2025年7月にアニメーションを中心とした新会社「SAND B」を設立。代表取締役社長には、かつてテレビ東京でアニメ事業を育て上げた川崎由紀夫氏を迎え入れたことから見ても、本気度がうかがえます。
アニメも小説もコミックも「湧き出てくるものではない」
ほかにも、アニメを重要なIP、すなわち知的財産として売り出し、利益を得ようと考えている会社や個人はいくらでも存在しています。
その動き自体は日本のコンテンツ産業を栄えさせるものとして歓迎すべきものです。しかし、ひとつ理解しなければいけないのは、「クリエイターの数と力」には限りがあるということです。「枠を増やす」と口で言うのは簡単ですが、実際にはひとつ増やすだけでも100人単位のクリエイターが必要になるのです。
例えば、TV局全体でアニメを5枠増やすとします。1枠が4クール(補足:クールとは四半期の放送枠)と考えると、5枠で20クール分のアニメが必要です。近年は原作付き作品がアニメ化されることが多いため、8割が原作付きとします。つまり16クール分です。
1クール作品と2クール作品(分割含む)が半々と考えると、12本の原作が必要となる計算です。年300本以上アニメが作られている状況に、さらに上乗せされることを考えると、「従来はアニメ化の候補になり得なかった」作品が12本アニメ化されるということになります。
アニメクリエイターも、さらに必要となります。現在急速に育成が進められていますが、人手が足りていないと感じられるアニメを時々見かけます。クリエイターへの報酬面での還元も含め、課題が山積しています。
クリエイターは無限に湧き出てくる存在ではありません。そして、視聴者の可処分時間も所得も無限ではありません。視聴限界を超えたとき、視聴者の興味も出費も急停止してしまいます。そうしたリスクは、TV局であっても避けて通ることはできないのです。
