
恋人と話している最中なのに、ついついスマホをチェックしてしまうことがあるかもしれません。
気づいたら、「二人ともスマホを触っている」なんて状況が生じることもあります。
しかし、もしかしたら、あなたのパートナーはその状況に「深く傷ついている」かもしれません。
英サウサンプトン大学(University of Southampton)の研究チームは、恋人からスマホを優先されたと感じたときの反応に、愛着スタイルがどのように関係するかを調べました。
研究の詳細は、2025年8月8日付の『Journal of Personality』に掲載されています。
目次
- 恋人に「スマホで無視された」と感じる瞬間を10日間追跡
- 仕返しで「スマホを触っている」可能性
恋人に「スマホで無視された」と感じる瞬間を10日間追跡
この研究で注目されたのは、「ファビング(phubbing)」と呼ばれる行動です。
ファビングとは、「phone(電話)」と「snubbing(冷たくあしらう)」を組み合わせた言葉で、目の前にいる相手よりスマホに注意を向けてしまう行動を指します。
例えば、会話中に通知を確認したり、食事中にSNSを見たり、相手が話しているのにスマホ画面へ視線を落としたりするような場面です。
もちろん、スマホを見る側に悪気があるとは限りません。
しかし見られる側にとっては、「自分よりスマホのほうが大事なのかも」と感じるきっかけになります。
研究チームが特に知りたかったのは、なぜ同じようにファビングされたと感じても、強く傷つく人とそうでない人がいるのかという点でした。
そこで注目されたのが、成人の愛着スタイルです。
今回の研究では、愛着スタイルの中でも、「不安型」に近い傾向と「回避型」に近い傾向がどのように関係するかが調べられました。
不安型は、恋人から見捨てられることや、十分に愛されていないことを心配しやすい傾向です。
一方、回避型は、親密になりすぎることや感情的に依存することを避けやすい傾向です。
研究では、恋人と同居しており、少なくとも6カ月以上の恋愛関係にある成人196人を対象に、日記法調査が行われました。
参加者は10日間にわたり、毎日オンライン調査に回答しました。
そこで尋ねられたのは、その日にパートナーからどれくらいファビングされたと感じたか、関係満足度はどうだったか、自尊心、抑うつ気分、不安気分、怒り、そして自分もスマホを使って「報復」したかどうかなどです。
ここでいう「報復」は、相手を攻撃するという意味ではなく、相手がスマホを見たことに対して、自分もスマホを手に取って使うような反応を指します。
つまり、「そっちがスマホを見るなら、こっちも見る」という現代的なすれ違いです。
そして調査の結果、全体的には、恋人からファビングされたと強く感じた日は、関係満足度が低く、不安気分や怒りが高いことと関連していました。
ただし、より重要なのは、愛着スタイルによって反応に違いが出たことです。
特に不安型傾向が強い人では、恋人にファビングされたと感じた日に、抑うつ気分が高く、自尊心が低い傾向が見られました。
では、この「傷つきやすさ」は、具体的にどのような心の動きとして現れていたのでしょうか。
より詳細な結果は次項で見ていきましょう。
仕返しで「スマホを触っている」可能性
今回の研究で興味深いのは、不安型傾向が強い人でも、ファビングされたと感じた日に関係満足度そのものが大きく下がったわけではない点です。
傷ついていたのは「この恋愛はダメだ」という評価よりも、「自分は大切にされていないのでは」という自己評価の部分だった可能性があります。
不安型傾向が強い人は、相手の態度から拒絶や見捨てられのサインを読み取りやすい傾向があります。
そのため、恋人がスマホをちらっと見ただけでも、「自分の話はつまらないのかも」「自分は大切にされていないのかも」と受け取りやすくなるのです。
もちろん、実際に相手がそのように考えているとは限りません。
仕事の連絡や家族からの通知を確認しているだけかもしれません。
しかし、ファビングは相手の注意が自分から離れる行動であるため、不安型傾向が強い人にとっては、非常に強い対人シグナルになりやすいのです。
さらに、不安型の人は、ファビングされたと感じたときに、恨みや不満を抱きやすく、相手が何を見ているのか気になりやすいことも示されました。
また、自分もスマホを使うという報復的な反応も多く報告されています。
ただし、この報復は単純な仕返しだけではありません。
不安型傾向が強い人は、ファビングされたと感じたとき、他の人から支援や承認を得るためにスマホを使う傾向がありました。
つまり、「恋人がこちらを見てくれないなら、別の誰かにつながりたい」という反応に近いと考えられます。
これらの結果からすると、「2人ともスマホを触っている状況」でも、不安型の人は深く傷ついていると考えられます。
この研究は、スマホを見る行動そのものを単純に悪者にするものではありません。
むしろ重要なのは、同じ行動でも、受け取る側の心の傾向によって意味が変わるという点です。
恋人がスマホを見た瞬間、ある人にとっては「少し失礼」程度で済むかもしれません。
しかし別の人にとっては、「自分は大事にされていない」という痛みにつながることがあります。
それで、どうしても確認が必要な場合は、「仕事の連絡だけ確認するね」と一言添えることが大切かもしれません。
また、傷つく側も、「スマホを見られた=愛されていない」とすぐに結びつける前に、その場の状況を一度確認することが助けになるでしょう。
小さなスマホ操作でも、相手の心には思った以上に大きく響くことがあります。
恋人との時間を守る第一歩は、画面ではなく、目の前の相手に少しだけ長く注意を向けることなのかもしれません。
参考文献
Anxiously attached individuals feel more depressed when their partners phub them
https://www.psypost.org/anxiously-attached-individuals-feel-more-depressed-when-their-partners-phub-them/
元論文
Attachment, Perceived Partner Phubbing, and Retaliation: A Daily Diary Study
https://doi.org/10.1111/jopy.70012
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部

