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オランウータンは「6歳半まで」母乳を飲むと判明ーー哺乳類で最長か

オランウータンは「6歳半まで」母乳を飲むと判明ーー哺乳類で最長か

Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

人間の子どもが6歳半にもなれば、小学校に通い始める年齢です。

しかし森に暮らすオランウータンの子どもは、その年齢になってもまだ母親の母乳を飲んでいたようです。

日本の総合研究大学院大学、九州大学を中心とする研究チームは、野生のボルネオオランウータンの子どもが生後6年半にわたって母乳を継続的に摂取していることを世界で初めて実証しました。

これはオランウータンが哺乳類の中でも最長級と考えられる授乳期間を持つことを、行動観察ではなく、糞に含まれる母乳由来のタンパク質から直接示した成果です。

研究の詳細は2026年5月25日付で学術誌『Communications Biology』に報告されています。

目次

  • 乳首に吸いつくだけでは「飲んでいる」と限らない
  • 糞に残った「母乳の証拠」が6年半の授乳を証明!

乳首に吸いつくだけでは「飲んでいる」と限らない

オランウータンは、哺乳類の中でもとくにゆっくり成長し、ゆっくり繁殖する動物として知られています。

母親が次の子どもを産むまでの出産間隔は平均7〜8年とされ、ゾウやクジラよりも長い期間です。

一方で、子どもの生存率は非常に高く、少なく産んだ子を長く大切に育てる戦略を取っています。

このためオランウータンは、研究者たちから「少子化の極み」とも表現されています。

以前から、オランウータンの子どもは生後6〜7年ほど母親の乳首に吸いつく行動を続けることが知られていました。

しかし、この行動だけでは、本当に母乳を飲んでいるのかはわかりません。

人間の子どもでも、離乳後に母親の乳房に触れて安心しようとすることがあります。

同じように、オランウータンの子どもが乳首に吸いついていても、母乳が実際に分泌され、摂取されているとは限らないのです。

本研究で対象としたボルネオ島のダナムバレイ保護区 (マレーシア、サバ州) に生息する野生のボルネオオランウータン/ Credit: 九州大学(2026)

これまでにも、窒素やバリウムなどの元素を調べることで、授乳の痕跡を探る研究は行われてきました。

しかし、窒素を使った研究では2歳8カ月以降に授乳のシグナルが見られないとされる一方、バリウムを使った研究では食物の豊富さに応じて母乳の摂取が止まったり再開したりする可能性が示されていました。

これらの元素は母乳以外の食べ物の影響も受けるため、オランウータンが本当に何歳まで母乳を飲んでいるのかは、はっきりしていなかったのです。

糞に残った「母乳の証拠」が6年半の授乳を証明!

そこでチームが用いたのが「糞プロテオミクス」という方法です。

プロテオミクスとは、試料の中に含まれるタンパク質を網羅的に調べる分析法です。

子どもが母乳を飲むと、その成分の一部は消化されずに糞の中へ残ります。

オランウータンの母乳には、母乳にしか含まれない母乳特異的タンパク質が4種類あります。

そのため、子どもの糞からこれらのタンパク質が見つかれば、その個体が糞をした時点で母乳を飲んでいたことを直接示す証拠になるのです。

チームは、マレーシア・サバ州のダナムバレイ保護区に生息する野生のボルネオオランウータンを対象に調査を実施。

現地の研究アシスタントの協力を得ながら、2年7カ月にわたり、個体識別された子どもの糞20点を集めて分析しました。

その結果、2歳8カ月から6歳6カ月までのすべての子どもの糞から、母乳特異的タンパク質が検出されたのです。

つまり、野生のオランウータンの子どもは、少なくとも生後6年半まで切れ目なく母乳を摂取していることになります。

さらにチームは、母乳特異的タンパク質と、生体防御に関わるタンパク質、そして腸内環境を整える細菌に由来するタンパク質の関係も調査。

その結果、母乳を多く摂取している子どもほど、消化管内の生体防御が高まり、腸内環境を整えるバクテリアの存在量も多い可能性が示されました。

母乳は単なる栄養補給ではなく、子どもの免疫や腸内環境を支える役割も持っていると考えられます。

この長い授乳期間は、オランウータンの極めて高い子どもの生存率にも関わっている可能性があります。

一方で、母乳の分泌は母親の次の妊娠を遅らせる効果があります。

つまり、長く授乳することは、少ない子どもを確実に育てる助けになる反面、個体数の回復を非常に遅くする要因にもなります。

オランウータンは現存する3種すべてが、国際自然保護連合のレッドリストで最も絶滅の危険性が高い「近絶滅種」とされています。

森林破壊などで個体数が減ったとしても、オランウータンは繁殖ペースを簡単に上げることができません。

今回の研究は、「6歳半まで母乳を飲む」という驚くべき生態を明らかにしただけではありません。

それは、オランウータンがどれほど時間をかけて次世代を育てる動物なのか、そして一度失われた個体群を取り戻すことがどれほど難しいのかを教えてくれるものです。

森の中で母親に寄り添いながら長く育つ子どもたちを守るためには、残された熱帯雨林そのものを守ることが欠かせないのです。

参考文献

オランウータンは6歳半までおっぱいを飲む
https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/1491

Orangutans breastfeed for six and a half years, the longest among mammals
https://phys.org/news/2026-05-orangutans-breastfeed-years-longest-mammals.html

元論文

Continuous and prolonged breastfeeding in wild Bornean orangutans verified with fecal proteomics
https://doi.org/10.1038/s42003-026-09968-2

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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