千葉県成田市の住宅で小学生の息子を殺害したとして父親が逮捕された事件。殺人の疑いで逮捕されたのは、成田市に住む無職の吉伊敏彦容疑者(66)。先月27日、自宅アパートで同居する小学生の長男(11)を何らかの手段で殺害した疑いがもたれている。
吉伊容疑者は10年前に妻と死別し、長男と2人で暮らし、事件現場となったアパートには1年前に引っ越してきたという。学区は変わったものの、引っ越す前に通っていた片道5キロの小学校に自転車で長男を送り迎えしていたそうだ。
母親は10年前に死亡し父と息子の2人暮らし
事件が起きたのは5月27日。吉伊容疑者は千葉県成田市のアパートの一室で、長男を殺害したとみられている。
「最初の異変を察知したのは学校側でした。5月29日の午前11時50分頃、長男が通う小学校の校長から『27日を最後に児童が登校して来ない。午前中に自宅を訪問したが応答がない』と、成田警察署に直接通報が入りました」(社会部記者)
通報を受けた警察官が現場のアパートに急行。部屋の玄関や窓は完全に施錠されており、呼びかけに対しても室内からの反応は一切なかったという。
「鍵を開けて室内に入れたのは29日午後4時前でした。部屋に入ると、布団の上に父親の吉伊容疑者と長男が並んで倒れているのが見つかりました。発見時、長男はすでに死亡しており、死後数日が経過しているような状態でした。一方、吉伊容疑者には目立った外傷はなく脈もありましたが、警察官や救急隊員の問いかけには応じませんでした」(捜査関係者)
吉伊容疑者は市内の病院に搬送され、翌30日に退院。その後の取り調べで容疑を認めたため、同日午後5時57分に通常逮捕された。
取り調べに対し、吉伊容疑者は容疑を認め、「自宅で息子の首を手で絞めて殺した」「金がなく、食べるものもなく将来を悲観していた。息子には知的障害があり、1人で残せなかった」と話しており無理心中を図ったとみられている。
「住民票上は、吉伊容疑者と長男の2人暮らしでした。そして戸籍を調べたところ、妻は10年前に亡くなっていたことが分かったのです」(捜査関係者)
母親が亡くなる直前には、市から児童相談所に送致の事案があったという。児童相談所の関係者が明かす。
「母親が亡くなる少し前ですが、母親から息子に対しての虐待疑惑がありました。詳細な記録はまだ確認できていませんが、一時保護対応せずに、支援を継続し対応を終えています。
また、別件でお父様に3年前にコンタクトを取った記録もありました」
「息子さんをお父さんが自転車の後ろのチャイルドシートに乗せていました」
妻と死別してから約10年。吉伊容疑者は1人で長男を育ててきたとみられる。そして1年前に事件現場となった成田市のアパートへ引っ越してきたという。
「喧嘩をしているような怒鳴り声や、何かを叩くような異常な音は、私がいる限り一度も聞いたことがありませんでした。お父さんは特に仕事をされていなかったようですが、詳しい事情まではわかりません」(近隣住民)
親子が住むアパートは最寄り駅から徒歩30分ほどの場所にあり、間取りは2DK。家賃は5万円前後だという。同じアパートに住む外国籍の女性住民も、親子の様子についてこう振り返る。
「時々、子どもが学校から帰ってくる時に顔を合わせると、二人とも『こんにちは』と礼儀正しく挨拶をしてくれました。親子仲はとてもハッピーで、仲が良いように見えました。喧嘩の声や子どもの泣き声が聞こえたこともありません。洋服などの身なりもちゃんとしていましたし、親子で普通に食事をしている様子でした」
アパートの通路にあたる共有スペースには、吉伊容疑者が長男を乗せるために使っていたとみられる荷台付きの古い自転車が残されている。別の近隣住民はこう言葉を漏らした。
「息子さんの自転車は、ここにはありませんでした。あの子は自分の自転車を持っていなかったと思います。体の大きくなった息子さんを、お父さんが自転車のチャイルドシートに乗せていました」
一方、長男が通っていたのは、アパートから約5キロ離れた場所にある成田市内の小学校だった。近所の女性住民は通学事情についてこう語る。
「てっきり近くの小学校に通っているものだと思っていました。でも、引っ越し前に通っていた小学校へ、そのまま通学していたようです。息子さんは高学年だし、ここに引っ越してくる前の学校から、どうしても移りたくなかったのではないかという話でした」(同前)
アパートから小学校までは約5キロ。吉伊容疑者は雨の日でも雨具を身につけ、毎日、自転車で長男を送り迎えしていたという。
「挨拶をすれば、お父さんも息子さんも『おはようございます』と、ちゃんと返してくれる普通の方たちでした。それだけに、どうしてこんな悲しい結末になってしまったのか。子どもに罪はないのにと、本当に複雑でやりきれない気持ちでいっぱいです」(前出)
長男が通っていた小学校では、事件を受けて1日に急きょ保護者会が開かれたという。学校側は「こちらから答えることはできない」と言葉を濁した。
母親を亡くしてから約10年。父子は支え合うように暮らしていたように見えた。毎日5キロ離れた学校へ送り迎えを続けていた父親の胸中で何が起きていたのか。警察は事件に至った経緯を慎重に調べている。
※編集部注:道路交通法は自転車の2人乗りを原則禁止しています。各都道府県の公安委員会規則により、16歳以上の運転者が幼児用座席を設けた自転車に「未就学児」を同乗させる場合のみ例外的に認められています。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

