「渋谷でのポイ捨てに2000円徴収? 正直、羨ましいというより、恐ろしいですね」
新宿区の飲食店経営者は渋谷区の強硬策を聞き、こう吐き捨てた。
6月1日から東京都渋谷区で始まったのは「路上ポイ捨てへの過料2000円」と「テイクアウト店へのごみ箱設置義務化(罰則5万円)」。この「渋谷モデル」が、隣接する新宿区の行政や飲食店関係者らに、単なるニュース以上の衝撃を与えている。
「眠らない街」新宿の繁華街では、渋谷区の条例よりはるか以前から、場所によっては2万円以下の罰金を科すなど、数々の条例を制定してきた。
ところが「ポイ捨て禁止」の貼り紙も空しく、路地裏には空き缶、吸い殻、飲みかけのカップ酒が散乱。地域住民からは「どうしようもないレベル」といった、半ば諦めの声が上がっていた。
そんな中、隣の渋谷区が「その場で徴収」という実力行使に踏み切ったことで、さぞや新宿区民の間には期待の声が広がっているのではないかと思いきや、新宿区の行政担当者は、
「動向を注視しつつ、効果的な対策を考える」
と慎重な姿勢を崩していいない。いったいなぜか。
もし新宿で渋谷のように強制徴収を始めれば、ルールを嫌うポイ捨て層による「ごみの押し付け合い」が加速しかねないからだという。これには少々、説明が必要になる。
慌てた渋谷区長が「スマートごみ箱」設置を表明
6月に入り、渋谷区では赤いベストを着た巡回員による24時間体制の監視下、違反者には即座に過料が科され、キャッシュレス端末が差し出されているのだが、前出の飲食店経営者は、
「渋谷区のやり方は、街の管理コストを民間と利用者に転嫁した徴収ビジネスだね」
今回の渋谷区による条例で最も大きな悲鳴を上げているのは、テイクアウトを提供する店舗だ。区はごみ箱の未設置を理由に5万円の罰則を突きつけているが、ただでさえ狭い店舗にごみ箱を置けば悪臭や害虫が湧き、路上の客がさらに増えることになる。
「飲食店からは『ごみの片付けを店に押し付けておいて、過料まで要求するのか』と怒りの声が上がっています」(社会部記者)
おわかりだろうか。社会部記者が続ける。
「新宿区がこれまで制定してきた条例や罰則は渋谷区の新しいルールに比べ、抑止力という面で分が悪いかもしれません。しかし新宿で渋谷のように、キャッシュレス端末を構えたパトロールを強化すれば、この『ポイ捨て狩り』という強権的手法に、トラブルが急増することは間違いないでしょう。お隣とはいえ、そこが新宿区と渋谷区との違いだということです」
現場からの猛批判噴出に慌てた渋谷区の長谷部健区長は急遽「スマートごみ箱」の設置を表明した。
ごみのポイ捨てを擁護する理由はなく、悪質なマナー違反であることは確かだが、渋谷区の試みがはたして「円満なごみ減」へとつながるか…。
(灯倫太郎)

