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仲間を共食いする「巨大ハンター」に変身する新種生物を発見

仲間を共食いする「巨大ハンター」に変身する新種生物を発見

巨大化した新種の微生物/ Credit: Rensselaer Polytechnic Institute(2026)

もし食べ物が少なくなったとき、体を巨大化させ、仲間を丸ごとのみ込むハンターへ変身する生物がいたらどうでしょうか。

しかも、それがライオンやサメのような大型動物ではなく、たった1個の細胞からなる微生物だとしたら、生命のイメージは少し変わって見えるかもしれません。

米レンセラー工科大学(RPI)の研究チームは、カリブ海のキュラソー島で採集された新種の繊毛虫「ユープロテス・ギガトロックス(Euplotes gigatrox)」が、条件によって「超巨大体」と呼べる姿へ変化し、同じDNAを持つ仲間を捕食することを発見しました。

研究の詳細は2026年5月14日付で学術誌『Proceedings of the National Academy of Sciences』に掲載されています。

目次

  • 仲間を丸ごと飲み込む「巨大ハンター」になる
  • なぜ超巨大化は起きるのか?

仲間を丸ごと飲み込む「巨大ハンター」になる

今回見つかった新種、ユープロテス・ギガトロックス(Euplotes gigatrox)は、繊毛(せんもう)虫と呼ばれる単細胞の微生物です。

繊毛虫とは、体の表面にある細かな毛のような構造「繊毛」を使って移動したり餌を集めたりする生き物で、身近な例ではゾウリムシもこの仲間に含まれます。

ユープロテス属の繊毛虫は、単細胞でありながら、非常に整った体の構造を持っています。

繊毛は、水流を起こして餌を集めたり、泳いだり、地面を歩くための脚のように使われたりします。

研究チームは今回、キュラソー島の海水ろ過システムからこの新種を採集しました。

ふだんのE・ギガトロックスは、細菌などの小さな餌を水流で集めて食べる、いわば「ろ過摂食」を行っています。

ところが、クローン集団の中では、ごく一部の細胞が自発的に通常の2倍以上の長さを持つ超巨大体へと変化することがわかりました。

通常細胞の長さが平均約54マイクロメートルだったのに対し、超巨大体は平均約138マイクロメートルに達していました。

体は幅広くなり、口にあたる摂食構造も大きくなります。

そして最も奇妙なのは、食べる相手です。

超巨大体は細菌を集めて食べるのではなく、自分と同じDNAを持つ小さな仲間の上を走るように移動し、そのまま丸ごとのみ込んでしまいます。

実際の映像がこちら。音声はありません。

観察では、最大でおよそ10分に1匹のペースで仲間を捕食していました。

つまりこの微生物は、状況によって「小さな餌をこし取る細胞」から「仲間を狩る巨大な捕食者」へと、姿も食性も大きく切り替えていたのです。

なぜ超巨大化は起きるのか?

この変化は、単に体が大きくなっただけではありません。

通常のE・ギガトロックスは、表面を歩くように移動するだけでなく、液体中ではらせん状の軌道を描いて泳ぐことができます。

しかし超巨大体は、ほとんど泳がず、主に表面を歩いて移動します。

しかもその動きは円を描くような軌跡になり、表面をはい回る獲物を探すのに向いた行動へ変化していました。

一方で、表面から引き離されると、超巨大体は通常細胞のように滑らかには泳げず、不器用に転がるような動きになりました。

これは、超巨大化が「狩りに強くなる代わりに、泳ぐ能力を失う」トレードオフであることを示しています。

では、なぜE・ギガトロックスは仲間を食べる巨大細胞へと変身するのでしょうか。

チームの観察から、この変化は単純に「餌が完全になくなったから起きるものではない」と考えられています。

超巨大体が現れやすかったのは、集団が急速に増える時期を終え、小さな餌がいつもより不足する状態へ移るタイミングでした。

つまり、細菌などの小さな餌だけに頼るには条件が悪くなり始めたとき、集団のごく一部の細胞が別の生存戦略へ切り替えるようです。

その戦略が、通常サイズの仲間を「大きな餌」として利用することでした。

ただし、すべての細胞が一斉に巨大化するわけではありません。

超巨大体は集団の約5%を超えず、ごく少数だけが巨大化します。

これは、集団全体としては通常の増殖を続けながら、一部だけが別の資源を利用する「リスク分散」のような仕組みだと考えられます。

今回の新種の発見は、単細胞生物であっても、環境や内部状態に応じて、形、動き、食性などをまとめて切り替えられることを示しています。

仲間を食べる巨大細胞という一見ホラー映画のような現象は、生命が1個の細胞だけでどこまで柔軟になれるのかを教えてくれる、新しい窓なのです。

参考文献

Single cell transforms into cannibalistic ‘supergiant,’ swallowing its clones whole
https://phys.org/news/2026-06-cell-cannibalistic-supergiant-swallowing-clones.html

When Food Runs Short, This Single-Celled Organism Turns into Giant Cannibal to Survive
https://www.sci.news/biology/euplotes-gigatrox-14815.html

元論文

Regulated development of cannibalistic supergiant cells in the ciliate Euplotes gigatrox
https://doi.org/10.1073/pnas.2606891123

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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