兵庫県たつの市の民家で母娘2人が殺害された事件で、兵庫県警が殺人容疑で逮捕状を取って公開指名手配していた大山賢二容疑者(42)の遺体が近所の川で見つかった。金目の物は奪われておらず、殺人の動機は不明だ。大山容疑者は犯行から事件発覚までの間に警察官に「人を殺した」と話していたが、警察官は取り合わず容疑者を“解放”。母娘の遺体が見つかった後も不審な初動捜査の遅れがあり、容疑者を永遠に取り逃がした。
「司法解剖で4日朝までに大山容疑者と特定されました」
3日午前、たつの市内の中川に容疑者の遺体が浮いているのが見つかった。
「致命傷になるような外傷は見つかっていませんが、胃の中にほとんどなにも残っていなかったようです。
住民が5月20日に撮影していた写真に写った容疑者がはいていたのと同じ、白いラインが入った黒色のズボンをはいていました。司法解剖で4日朝までに大山容疑者と特定されました」(地元記者)
兵庫県警が約2週間にわたり血眼になって行方を追い、メディアも目撃情報を探し歩いていた。
しかし、容疑者が死亡していたことで、殺人事件は法廷で裁くことができないまま終結する。
その代わりに、兵庫県警の事件対応が徹底的に検証される見通しだ。
事件は容疑者の遺体が見つかった川から約13キロ離れた同市新宮町の民家で発生。
この家に住む⽥中澄恵さん(74)と娘の千尋さん(52)が首などを刺され死亡しているのが5月19日に見つかった。
「この日の朝、知人が『最近連絡が取れない』と町内の交番に相談し、警察官が安否確認に訪れ遺体を発見しました。
お母さんは玄関付近、娘さんは1階の廊下で倒れていて、首や上半身をそれぞれ複数箇所刺されていました」(地元記者)
玄関は施錠されておらず、凶器は現場になかった。さらに室内からは現金が入った財布やスマートフォンが見つかった。
司法解剖で2人は5月13日ごろに殺害されたとみられることがわかり、県警は遺体発見2日後の21日に殺人事件と断定して捜査本部を設置。
さらに23日には千尋さん殺害容疑で大山容疑者の逮捕状を取って全国に指名手配し、24日には顔写真も公開した。
特定が早かったのは大山容疑者が約10年前まで田中さん方の南隣に住んでいて、防犯カメラや目撃証言からすぐに身元が判明したためとみられる。
しかし、容疑者側にも捜査が迫っていることを知らせてしまう指名手配や顔写真の公表を逮捕状取得直後に行なったのは、県警に居所を特定する情報がなかったことをうかがわせる。
そして、県警の「大失態」は顔写真公開の翌日に発覚した。
県警に残る二つの疑問
「大山容疑者は犯行から3日ほど経ったと思われる5月16日夜、現場から20数キロ離れた高砂市内の路上で寝ており、高砂署員が署に任意同行していました。
その時に大山容疑者は『人を殺した』『たつの』と口にしましたが、県警は事件を認識できず容疑者を放したんです。
県警は『日時や場所などの具体的な情報を説明せず、話がかみ合わなかった』と説明していますが、高砂署は話が出た後に大山容疑者を事件現場の隣の、容疑者が昔住んでいた家の近所まで送り届けていました。当時容疑者の所持金は550円しかなかったといいます」
約10年前に離れ、今は住んでいない家になぜ容疑者を送り届けたのかは不明だ。
この時点で事件は発覚しておらず、大山容疑者の行動は「自首」にあたる可能性もある。
検挙の決定的な機会を逃した県警には、もう一つ不審な点がある。
「初動捜査の遅れです。2人が刺されて自宅で亡くなっており、玄関は施錠されておらず凶器が現場になければ心中とは考えにくい。
2人が殺されて容疑者が逃げた重大事案であることは当初から濃厚で緊急配備を敷いてもおかしくなかったのに、県警が殺人と断定して捜査本部を設置したのは遺体発見の2日後です」(全国紙社会部デスク)
県警内では2遺体の発見直後から「人を殺した」と話した男を現場の隣家に高砂署員が送り届けていた事実は問題になっていたとみられる。
しかし「殺人」と断定し本格捜査に入ることの公表がこれほど遅くなったのはなぜなのか。
そして、この初動捜査の遅れが最後の逮捕の機会を失わせる。
大山容疑者は母子の遺体の発見から捜査本部設置までの2日の間に死亡していたのだ。
「容疑者は5月20日夕、今回遺体が見つかった川の上流の河川敷に一人でいるところを住民に目撃されていました。けげんに思った住民が撮った写真が県警に提供され、県警はこの写真も公開し目撃情報を募りました。
しかし川に浮いていた容疑者の遺体を解剖した結果、死亡したのはまさに最後に目撃された5月20日ごろと分かりました」(地元記者)
トラブルがあったとの情報もない昔の隣人宅を襲い、金を奪うわけでもなく2人の命を奪ったとみられる大山容疑者。その死によって動機を知る手掛かりは失われた。
兵庫県警では最近、前本部長が数万円の不適切な接待を受けていたことや、交番で警察官の男女が性行為を繰り返したことなど、次々と問題が発覚している。
今回の件は、治安を維持する能力にも不審を抱かせる特大の不祥事といえる。事件解決に失敗した原因を徹底的に解明しなければ、信頼回復は難しいだろう。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

