2012年以来、14年ぶりの「6月上陸」となった台風6号は日本列島をごっそりと襲い、甚大な被害をもたらした。
都心部の12時間降水量は6月の観測史上最大173.5ミリを記録。目黒川と神田川、立会川、善福寺川と仙川は通勤ラッシュ時間帯のわずか1時間で一気に増水し、気象庁の新たな防災気象情報の「レベル4氾濫危険警報」が運用後、初めて発令された。
防災気象情報は、それまでわかりにくかった気象情報と、住民がとるべき避難準備情報を連動させた新システムで、5月29日から運用が始まったばかり。河川氾濫のほか、大雨による浸水、土砂災害、高潮などの危険が迫った際に発表される。
今回出された「レベル4」は以前の「避難勧告」や「避難指示」にあたり、沿川住民の全員避難を求めている。つまりレベル4のうちに、全住民の避難を完了しなければならない。
その上の「レベル5」は、すでに河川氾濫や堤防決壊が起きている状態を指す。避難所に行くのを諦め、濁流が自宅を襲う前にただちに2階以上に垂直避難しないと危ないわけだ。
神田川と目黒川の沿川地域で「レベル4氾濫危険警報」の避難指示が出たのは、神田川では杉並区、中野区、豊島区、新宿区。目黒川は目黒区と品川区だけだった。これは気象庁の「防災気象情報」が区単位で発表されるからで、気象庁の発表を受けて自治体が住民に避難指示を出す。
同じ河川の上流と下流は安全なのか否か
ところが始まったばかりの新システムも、わかりにくい。レベル4が出た5河川は台風やゲリラ豪雨のたびに増水が報じられるが、同じ河川の上流、下流の区は安全なのか。地下を流れる暗渠や下水から水が溢れることはないのか。
レベル4が出された豊島区の雑司ヶ谷・高田エリアでは、2008年8月のゲリラ豪雨の際、マンホールを降りて作業中だった作業員が一気に増水した下水に流され、亡くなる事故が起きている。
そもそもレベル4で避難指示が出ても、今回のように一気に河川が増水すれば、避難する猶予などないのでは…。
都内23区の排水能力は1時間50ミリの雨量で想定されているが、12時間降水量が200ミリを超えると、アスファルト上を流れる雨水が谷底地形の中小河川に一気に集まり、浸水被害があるといわれる。
都内過去最高の12時間降水量は、1958年9月の「狩野川台風」の355.5ミリで、台風6号の約2倍にあたる。山手線以東の下町エリアが浸水したほか、立会川と目黒川、目黒川の上流にあたる烏山川も氾濫。さらに山の手地区である世田谷区の広範囲が水没した。
季節はずれの台風が上陸した今年、そんな大型台風が再び来ないことを祈るしかない。
(那須優子)

