北中米ワールドカップ開幕を目前に控えたオランダ代表が、不安を残す形で最後の国内テストマッチを終えた。ロナルド・クーマン監督率いる「オランイェ」は現地時間6月3日、ロッテルダムのデ・カイプで行なわれたアルジェリア代表との国際親善試合に0-1で敗戦。日本代表とグループリーグ初戦で対戦する優勝候補の一角は、苦い後味を残したままアメリカへ向かった。
立ち上がりからホームチームは幾度も決定機を創出。ドニエル・マレンがポストを叩き、コディ・ガクポやティジャニ・ラインデルスも好機を迎えたが、アルジェリアGKルカ・ジダン(ジネディーヌ・ジダン氏の息子)の好守もあって得点を奪えない。前半だけで大量リードを奪ってもおかしくなかったが、後半は大量交代によって流れを失うと、86分にフェイエノールト所属のアニス・ハジ・ムサに鮮烈な決勝弾を許した。
母国の日刊紙『De Telegraaf』は、「オランダは頬を赤らめながら、米国行きの飛行機に乗り込むことになった」と表現し、この敗戦を「恥ずべき結果」と批判。また、「試合はスコア以上に複雑な内容だった」と伝え、「出場停止のために欠場したデンゼル・ドゥムフリースの存在感が改めて浮き彫りになった」「決定力不足が最後まで響いた」と指摘している。
試合後、クーマン監督は「これはかなりの警鐘(ウェイクアップコール)だ」と率直に認め、「良い部分もあったが、試合が進むにつれて雑になった。前半の20分間で試合を決められなかったことで、自分たち自身と戦う状況になった」と分析。「こういう試合は、勝たなければならない。5回も大きなチャンスがあったのなら、何点かは取る責任がある。マレンは普段なら決めている」と語りつつ、それでも「悪い内容だったが、パニックになる必要はない。細部の修正が必要だ」と冷静さも失わなかった。
一方、キャプテンのフィルジル・ファン・ダイクは悔しさを隠さず、「壮行試合でこんな結果は望んでいなかった。前半のチャンスを決めるべきだった。明日は少し不機嫌な気分で飛行機に乗ることになるだろう。ポジティブなのは、多くの選手がプレー時間を得られたことだが、我々は負けるために試合をしているわけではない。もっと良くしなければならない」と危機感を示している。
公共放送『NOS』は、この一戦が2024年10月のドイツ戦以来の黒星だったことを紹介。デビュー戦となったクリセンシオ・サマービルが右ウイングで存在感を示した点や、復帰したジャスティン・クライファートの好パフォーマンスを前向きな材料として挙げた一方、大量交代後にチーム全体の完成度が低下したことを課題に挙げた。
また『AD』紙も、「全く不要な敗戦」「オレンジ熱を盛り上げる結果にはならなかった」と酷評しながらも、悲観一色の論調とはならず、攻撃陣のスピード、主力選手のコンディション維持を評価し、「アルジェリア戦の結果は痛いが、W杯本番の可能性を大きく左右するものではない」と指摘している。
特に同メディアがポジティブな要素として注目したのが、サマービルだ。ウェストハム所属のアタッカーはデビュー戦ながら何度もチャンスを演出し、マレンやラインデルスらの不発によって数字には結びつかなかったものの、前半だけで3アシスト相当のプレーを披露。一方で右SBに入ったマッツ・ヴィーファーに対しては、ボールロストの多さもあり、「ドゥムフリース不在時の代役候補として十分なアピールができなかった」と厳しい評価が下された。 国外メディアもオランダの現状には注目しており、隣国ベルギーの日刊紙『HLN』は、クーマン監督が大会前から様々な批判にさらされている状況を紹介。メンフィス・デパイの起用法や、ヴォウト・ヴェフホルストの選出、クインテン・ティンバーを巡る対応などを巡り、世論は決して好意的ではないと伝えた上で、「日本との本大会初戦で躓けば、監督への批判はさらに強まる」と分析している。
ただし同メディアも、マレンとサマービルのスピード、ガクポの突破力、ファン・ダイクの安定感、フレンキー・デ・ヨングのゲームコントロールなど、「依然として強力な武器を備えている」と評価。「問題はチャンスを決め切れないことだ」と結論づけた。
アメリカのスポーツ専門サイト『The Athletic』はさらに踏み込み、「攻撃力への疑問」を最大の論点として提示し、「近年のオランダには、かつてのような世界的ストライカーがおらず、好調だったマレンでさえ、決定機を逃し続けた」と指摘。終盤に投入されたヴェフホルストについても、「機動力に欠けるターゲットマン」との厳しい表現で、前線の層の薄さを問題視している。
その一方で守備陣については高く評価している。ファン・ダイク、ミッキー・ファン・デ・フェン、ヤン=ポール・ファン・ヘッケらに加え、復帰するユリエン・ティンベルやドゥムフリースも控えており、「守備の層の厚さこそ、オランダ最大の強み」と称賛した。
この結果には、代表OBも黙ってはおらず、現在はコメンテーターを務めるピエール・ファン・ホーイドンクはサッカー専門サイト『VoetbalPrimeur』で、「時には監督が机を叩いてでも、選手を引き締めるべきだ」と、チームに喝を入れるべきだと主張。「一部の選手は耳を引っ張られるくらいの刺激が必要であり、クーマン監督は『こんな内容は受け入れられない』とはっきり伝えるべきだ」と語っている。
さらに、元代表キャプテンのヴェスレイ・スナイデルもスポーツ専門チャンネル『ESPN』で厳しい見方を示した。2010年南アフリカ大会の準優勝メンバーは、「過去5年間、大国相手に一度も勝っていないのだから、オランダが世界王者になるのは非常に難しい」と断言。ただし、「W杯では運も重要だ。全てが上手く噛み合い、他国に不運が重なれば、可能性はある」と、不利な状況から逆転勝利を収めた南アフリカでの準々決勝ブラジル戦を例に挙げて、今夏のチームにも希望を見出そうとした。
日本とのグループステージ初戦まで残された時間はわずか。アルジェリア戦で露呈した決定力不足は不安材料だが、守備力や選手層への評価は依然として高い。国内外から厳しい視線が注がれる中、「オレンジ軍団」はこの“警鐘”を糧に立て直しを図れるのか……日本にとっても、初戦の行方を占ううえで注目すべき敗戦となった。
構成●THE DIGEST編集部
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