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”ヘドバン”するアシカ、人間よりも正確なリズムを刻んでいた

”ヘドバン”するアシカ、人間よりも正確なリズムを刻んでいた

正確なリズムでヘドバンするアシカ / Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

音楽が流れると自然に足でリズムを取ったり、手拍子をしたりする。

そんな能力は長い間、人間に特に発達した、かなり特殊な能力だと考えられてきました。

ところがアメリカのカリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)などの研究チームは、1頭のアシカが、同じ課題に挑んだ人間の大学生たちに匹敵し、多くの指標で上回るリズム同期を示したことを報告しました。

研究成果は2025年5月1日付で学術誌『Scientific Reports』に掲載されています。

目次

  • 人間だけの能力と思われた「ビート感覚」をアシカで検証
  • ローナンはなぜ人間以上の精度を示せたのか?

人間だけの能力と思われた「ビート感覚」をアシカで検証

私たちは音楽に合わせて踊ったり、手拍子をしたりできます。

しかも単に音を聞いて反応しているわけではありません。

拍の間隔を捉え、次の拍に自分の動きを合わせようとしています。

このように、耳で聞いたリズムに体の動きを同期させることは、リズム感の中核をなす能力の1つです。

長年、この能力は人間に特に発達したものではないかと考えられてきました。

その後、オウムなど一部の鳥類でも確認されたことから、「声真似に関わる脳の仕組みが、拍に合わせる能力にも関係しているのではないか」という仮説が提唱されます。

ところがアシカの「ローナン」は、その考えに疑問を投げかける存在でした。

ローナンは、生後1年目に複数回の座礁を経験した後、カリフォルニア大学サンタクルーズ校のロングマリン研究所で暮らすことになったカリフォルニアアシカです。

2013年には、初めて聞くテンポや音楽にも頭を上下させて同期できることが報告され、世界的な注目を集めました。

しかし当時の研究には、「本当に人間並みなのか」「訓練による特殊な例ではないのか」といった疑問も残されていました。

そこで研究チームは、実験時点で15歳だったローナンの能力を改めて検証することにしました。

実験では、ローナンにメトロノーム音を聞かせながら頭を上下に動かしてもらいます。

テンポは112、120、128 BPMの3種類で、このうち112 BPMと128 BPMはローナンにとって初めて聞くテンポでした。

さらに大学生10人にも同じ音を聞かせ、ローナンの頭の動きに近い大きさになるよう腕を上下に振ってもらいました。

そして研究者たちは1秒間に240コマで撮影できる高速カメラを用いて、頭や腕が最も下がった瞬間と拍が鳴った瞬間のズレを詳細に分析しました。

その結果、ローナンは初めて聞くテンポにも安定して同期し、人間たちと比較しても非常に高い精度を示しました。

では具体的にどれほど優れていたのでしょうか。次項で詳しく見ていきましょう。

ローナンはなぜ人間以上の精度を示せたのか?

今回の研究で最も驚かされたのは、ローナンの安定性でした。

調査データによると、ローナンの動作間隔のばらつきは、112、120、128 BPMのすべてで人間参加者全員より小さくなっていました。

また、テンポの正確さ、拍とのズレ、動きの一貫性といった複数の指標でも、多くの人間参加者を上回っています。

特に重要なのは、どの人間参加者も、すべての評価項目でローナンを上回ることはできなかったという点です。

人間の中には一部の指標でローナンより良い成績を出した人もいましたが、テンポ合わせ、拍とのズレ、ばらつきなどをまとめて見ると、ローナンを一貫して上回った人はいなかったのです。

さらに興味深いことに、ローナンは2013年の研究時よりも明らかに上達していました。

若い頃のローナンは、速いテンポでは少し遅れ、遅いテンポでは少し先走る傾向がありました。

ところが15歳のときには、全体としてそのズレが大きく減り、80〜128 BPMの範囲で安定した同期を示していました。

動作のばらつきも30〜50%ほど減少していました。

また、ローナンは112 BPMと128 BPMという初めて聞くテンポでも正確に拍を追跡しました。

もし慣れたテンポにだけ反応しているなら、初めて聞くテンポでは大きく崩れてもおかしくありません。

しかしローナンは新しいテンポにも対応しました。

この結果は、ローナンが特定のテンポだけを覚えているのではなく、規則的な拍の間隔に合わせて動きを調整できることを示しています。

この研究は、リズム能力が経験によって磨かれることも示しています。

人間も生まれつき完璧に拍を取れるわけではなく、幼少期から音楽や手遊び歌に触れる中で、少しずつリズム感を発達させていきます。

ローナンもまた、12年間にわたる断続的な経験の中で能力を磨いてきたのです。

ただし研究チームは、ローナンの訓練経験は実験動物の複雑な課題として特別に多いものではなく、今回の結果は、「ローナンは特殊な訓練で作られた例外だから参考にならない」という単純な説明では片付けられないと述べています。

そして最も重要なのは、「拍に合わせる能力は人間だけの特殊能力ではないかもしれない」という点です。

これまで有力だった仮説では、声真似に関わる脳の仕組みとリズム同期能力のつながりが注目されてきました。

しかしローナンは、オウムのように高度な声真似で知られる動物ではありません。

それでも今回、人間に匹敵し、一部の指標では人間を上回る成績を示しました。

研究者たちは、リズム感の起源が音楽ではなく、生存に関わるより基本的な能力にある可能性も考えています。

例えば海の波の周期を予測して効率よく泳ぐことや、逃げる魚の規則的な動きを読み取ることは、海洋哺乳類にとって役立つ能力だったかもしれません。

アシカのローナンの驚くべきリズム能力は、私たちが当たり前だと思ってきた「人間らしさ」の一部が、実はより広く動物たちと共有されている可能性を示しているのです。

参考文献

Ronan the Sea Lion Can Keep a Beat Better Than You Can
https://www.zmescience.com/ecology/animals-ecology/ronan-the-sea-lion-beat-never-missed/

元論文

Sensorimotor synchronization to rhythm in an experienced sea lion rivals that of humans
https://doi.org/10.1038/s41598-025-95279-1

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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