
イタリア・ローマの高校で、まるで冒険映画のような発見がありました。
コロッセオのすぐ近くにあるカヴール科学高校の体育館の地下から、約1800年前の古代ローマ時代の豪華な邸宅の一部が見つかったのです。
きっかけは、学校の地下に「謎の部屋がある」という生徒たちの噂でした。
何年もの間、生徒たちの間では体育館の床下に暗い通路や部屋があると語られており、実際に一部の生徒たちが地下空間を探検したことで、古代の構造物が存在することが分かりました。
その後、報告を受けた教師が当局に知らせ、考古学者による調査へとつながりました。
そして明らかになったのは、単なる古い地下室ではなく、ローマ帝政中期に造られた大型の「ドムス」だったという驚きの事実です。
古代ローマのドムスとは、有力者や裕福な人々が暮らした都市型の邸宅を指します。
つまり、この高校の体育館の下には、かつてローマの上流階級が暮らしていた可能性のある豪邸が眠っていたのです。
目次
- 体育館の床下に眠っていた「ローマ貴族の家」
- 壁画や装飾、モザイクが残る豪華な空間
体育館の床下に眠っていた「ローマ貴族の家」
カヴール科学高校は、ローマ中心部のコロッセオ近くにあります。
現在の校舎は、もともと19世紀後半にカトリックの宣教会の建物として造られたものです。
実はその建設時にも、基礎部分から古代ローマの邸宅の一部が確認されていました。
しかし、この地域は古代ローマ史において非常に重要な場所でありながら、近代以降の建物が地上を覆っているため、地下の遺構を十分に調べることが難しい場所でもあります。
周辺には、キケロ、ポンペイウス、オクタウィアヌス、後の初代ローマ皇帝アウグストゥスとして知られる人物たちが暮らしていたとされます。
言ってみれば、ローマ史の主役級の人々が行き交ったエリアの地下に、まだ見ぬ古代都市の断片が残っていたわけです。
今回の発見は、そんな場所で起きました。

地下空間で生徒たちが見つけたものを、同校の歴史とラテン語の教師クラウディア・マリーノ氏がローマ特別監督局に報告しました。
その後、2026年1月から最近の廃材などを取り除く作業が始まり、遺跡の調査が本格化。
体育館の下に保存されていた部屋は、2世紀半ばごろの邸宅の一部とみられています。
19世紀後半の調査で見つかっていた碑文から、この家はウンブリウス家の人物が所有していた可能性があると考えられています。
ただし、所有者や建築時期については、今後の発掘調査で確実な証拠を得る必要があります。
壁画や装飾、モザイクが残る豪華な空間
調査で特に注目されたのは、遺構の保存状態の良さです。
体育館の地下からは、壁に描かれた人物や花のフレスコ画、天井の曲面に施されたスタッコ装飾などが確認されました。
スタッコ装飾とは、漆喰などを使って壁や天井に立体的な模様を作る装飾技法です。
古代の住人にとって、家はただ寝起きする場所ではありません。
その人の富や趣味、社会的地位を示す舞台でもありました。
部屋の壁に華やかな絵を描き、天井に立体的な装飾を施すことは、訪れた人に「ここは特別な家だ」と伝える手段でもあったのです。

さらに、ある部屋では大きく不規則な形のタイルを使ったモザイクも見つかりました。
これは当時のローマ上流階級の間で流行していた様式とされます。
床や壁の一部に残された装飾は、1800年前の人々がどのような美意識の中で暮らしていたのかを、現代に静かに語りかけています。
一方で、地下空間からは20世紀の生徒や観光客、地下を探検した人々が残した落書きも見つかりました。
現在までに調査されたのは、ドムス全体の一部にすぎません。
遺構は学校の地下深くまで広がっているとみられ、今後さらに発掘が進めば、建物の広がりや所有者、当時の暮らしぶりについて、より多くの情報が得られる可能性があります。
学校と考古学監督局は、将来的にこの遺跡を見学者に公開することも検討しています。
生徒たちの噂話から始まった地下探検は、ローマ史の一部を掘り起こす発見へと変わったのです。
参考文献
Italian teenagers discover 1,800-year-old Roman luxury house underneath their high school gym
https://www.livescience.com/archaeology/romans/italian-teenagers-discover-1-800-year-old-roman-luxury-house-underneath-their-high-school-gym
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

