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マリー・アントワネットは「歯列矯正」をしていた?

マリー・アントワネットは「歯列矯正」をしていた?

Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

マリー・アントワネット(1755〜1793)と聞くと、豪華なドレス、ヴェルサイユ宮殿、そしてフランス革命の悲劇を思い浮かべる人が多いかもしれません。

しかし、彼女にはもう一つ、少し意外な噂話があります。

それは、フランスへ嫁ぐ前に「歯列矯正」を受けていた可能性があるというものです。

現代の矯正器具をつけた王妃を想像すると、まるで時代考証を無視した映画のワンシーンのように感じられます。

けれど、これは荒唐無稽な作り話とも言い切れません。

18世紀のフランスでは、近代歯科医学の基礎が形づくられつつあり、歯科医師のピエール・フォシャールは1728年に歯科医学の体系的な著作を出版し、歯並びを整える器具「バンドー」についても記述していました。

では、なぜマリー・アントワネットに歯列矯正の噂があるのでしょうか。

目次

  • オーストリアからフランスへ嫁ぐ
  • 18世紀の「矯正器具」はどんなものだったのか

オーストリアからフランスへ嫁ぐ

マリー・アントワネットは、1755年にオーストリアのウィーンで生まれました。

父親は神聖ローマ皇帝フランツ1世、母親はオーストリアを治めた女帝マリア・テレジアです。

当時のヨーロッパ王室にとって、結婚は個人の恋愛ではなく、国と国を結ぶ外交手段でした。

マリー・アントワネットもまた、オーストリアとフランスの関係を強めるため、フランス王太子ルイ、のちのルイ16世のもとへ嫁ぐことになります。

彼女がフランスへ旅立ったのは1770年のことです。

このとき彼女はまだ14歳でした。

マリーアントワネットの肖像画/ Credit: ja.wikipedia

フランス宮廷は、ヨーロッパでもとりわけ洗練された文化と作法を重んじる場所でした。

そのため、オーストリア育ちの少女は、言葉づかい、服装、髪型、立ち居振る舞いに至るまで、フランス風に整えられていきます。

いわば、王太子妃としてヴェルサイユ宮殿に受け入れられるための「徹底したイメージ改造」が行われたのです。

またマリー・アントワネットには、ハプスブルク家とよく結びつけて語られる「しゃくれ顎」の特徴があったともいわれます。

いわゆる「ハプスブルクの顎」は、下顎が前に出る下顎前突症として説明されることが多く、ハプスブルク家の肖像画にもその特徴が見られるとされています。

ただし、マリー・アントワネット本人の歯並びや顎の状態が、どの程度治療を必要とするものだったのかは、慎重に考える必要があります。

肖像画は政治的なイメージづくりの道具でもあり、現代の診断書のように扱うことはできないからです。

18世紀の「矯正器具」はどんなものだったのか

マリー・アントワネットが歯列矯正を受けていたという話は、歴史上の逸話として語られることがあります。

しかし、この話を裏付ける決定的な一次資料は確認されておらず、断定はできません。

それでも、この逸話がまったく不自然ではない理由があります。

それは、彼女がフランスへ嫁ぐ時代には、すでに歯並びを整える技術が存在していたからです。

近代歯科医学の父とも呼ばれるピエール・フォシャールは、1728年に『外科歯科医』を出版しました。

この本には、虫歯の治療や義歯だけでなく、歯並びを整える方法も含まれていました。

ピエール・フォシャール/ Credit: ja.wikipedia

その代表的な器具が「バンドー」です。

バンドーは、馬蹄(ばてい)形の金属を歯列に当て、歯を少しずつ動かそうとするものでした。

現在の矯正器具も、歯に一定の力をかけて位置を変えていくという点では同じ原理です。

ただし、現代の矯正装置ができるだけ効率的で痛みを抑えるよう設計されているのに対し、18世紀の器具はずっと原始的でした。

絹糸や細い金属線で歯を器具に結びつけ、手作業で調整していたとされます。

麻酔も現在のようには使えないため、もしマリー・アントワネットが本当にこうした治療を受けていたなら、それはかなりつらい経験だったはずです。

また、当時のフランスでは、歯の美しさが宮廷人の印象を左右する要素になりつつありました。

つまり、フランス王太子妃として迎えられる少女の外見を整える過程で、歯にも手が加えられた可能性はあります。

ただし、ここで重要なのは「可能性がある」という点です。

マリー・アントワネットが歯列矯正を受けていたという話は、日本の歯科コラムなどでも紹介されていますが、一次資料に基づく確定情報として扱うには注意が必要です。

そのため、この話は「マリー・アントワネットが歯列矯正をしていた」と断言できるものではなく、「歯列矯正を受けていた可能性もゼロではない」と表現するのが適切です。

豪華なドレスや髪型の陰で、未来の王妃は歯並びまでフランス風に整えられていたのかもしれません。

ヴェルサイユの華やかさは、実は口元の痛みの上にも作られていた可能性があるのです。

参考文献

Marie Antoinette probably got braces to straighten her teeth
https://www.popsci.com/science/marie-antoinette-braces-weirdest-thing-podcast/

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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