6月7日、春のマイル王決定戦となる安田記念(GⅠ、東京・芝1600m)が行なわれる。
昨秋のマイルチャンピオンシップ(GⅠ)優勝で、牡馬が出られるJRAの芝マイルGⅠの完全制覇を成し遂げたジャンタルマンタル(牡5歳/栗東・高野友和厩舎)が、海外遠征などの疲れを取って秋に備えるため本レースを回避。すると圧倒的な主役を失ったマイル戦線は一気に混沌とし、加えて主力メンバーと見られていた前哨戦マイラーズカップ(GⅡ)の覇者、アドマイヤズーム(牡4歳/栗東・友道康夫厩舎)が右前肢の爪を傷めて出走回避を表明。今年の安田記念は争覇圏内にいると思われる有力馬が五指に余るというような乱戦模様になっている。
そんな状況のなか、轡を揃えた17頭。まずはマイルGⅠを制した経験を持つ2頭から見ていこう。
昨年のNHKマイルカップ(GⅠ)を勝ったのはパンジャタワー(牡4歳/栗東・橋口慎介厩舎)。GⅠ制覇後は芝1200mのキーンランドカップ(GⅢ)を勝ったが、以後は豪州のゴールデンイーグル(芝1500m)が5着、サウジアラビアの1351ターフスプリント(GⅡ、芝1351m)が5着、高松宮記念(GⅠ)が4着と、勝利を挙げられずにいる。芝1200m戦でデビューした通り、パンジャタワーの本質はマイラーというよりスプリンター。勝ったNHKマイルカップでも、2着以下の馬のその後を見ると、低調なレースレベルに恵まれた感が否めず、いまの本馬にとってマイルはやや長いとみて、評価は「△」にとどめたい。
もう1頭のGⅠホースは一昨年の桜花賞馬、ステレンボッシュ(牝5歳/美浦・宮田敬介厩舎)。2024年は桜花賞制覇後もオークス(GⅠ)が2着、秋華賞(GⅠ)と香港ヴァーズ(GⅠ)がともに3着と大活躍を見せた。しかし昨年から長いスランプに入ってファンをやきもきさせたが、今年は中山牝馬ステークス(GⅢ)を7着としたあと、エプソムカップ(GⅢ)でトロヴァトーレ(牡5歳/美浦・鹿戸雄一厩舎)との激しい競り合いには敗れたものの、上がり33秒1という切れ味を繰り出してハナ差の2着に健闘。復調の気配を見せたからには、〔1・2・0・1〕と東京を得意の舞台としている桜花賞馬を評価しないわけにはいかない。さらなる上昇と、鞍上のダミアン・レーン騎手の手腕にも期待して〇(対抗)を献上したい。 ここまで挙げたGⅠ馬を差し置いても本命に推したいのは、エプソムカップでステレンボッシュとの激闘を制したトロヴァトーレだ。昨春はダービー卿チャレンジトロフィー(GⅢ)で重賞初制覇を遂げたが、安田記念は17着に大敗。年の後半も勝ち切れないレースが続いたが、今年1月の京都金杯(GⅢ)を4着とすると、続く東京新聞杯(GⅢ)では直線9番手から一気の差し切り勝ちを収めた。
そして約3か月の休養を経て臨んだエプソムカップでも直線9番手から鋭い切れ味を発揮し、ステレンボッシュとの追い比べをハナ差制して重賞2連勝とした。マイル戦が〔5・1・0・2〕、東京芝の成績が〔3・1・0・2〕といずれも優秀。主戦のクリストフ・ルメール騎手が続けて手綱をとるのも心強い材料だ。コンスタントに上り33秒台を叩き出し、昇竜の勢いを感じさせるトロヴァトーレこそが春のマイル王に相応しい。
過去10年で〔0・1・2・25〕と成績が優れないのが7歳以上の高齢馬。その点が気になるガイアフォース(牡7歳/栗東・杉山晴紀厩舎)だが、昨年の安田記念、マイルチャンピオンシップで連続2着した能力はまだ衰えてはいない。安田記念は今年で4年連続出走となり、これまでの成績は4着→4着→2着。それ以外に、昨年10月の富士ステークス(GⅡ)ではジャンタルマンタルを下して勝利を収めた経験を持つのは知られたところ。今年は3月末のドバイ遠征以来の実戦となるが、十分に休養をとって、調教過程を問われた杉山調教師は「状態の良さが分かっていましたので、それに応じた強い負荷をかけました。体の使い方も良く、時計も水準以上出ましたので、とても満足のいく内容でした」と胸を張っている。21回目のGⅠ挑戦で、年齢を感じさせない走りを見せるガイアフォースを▲(単穴)としてピックアップしたい。
混戦模様であるがゆえ、ほかにも魅力的な馬が目白押しだ。
やや中距離向きの傾向があるが、重賞5勝という実績が光るレーベンスティール(牡6歳/美浦・田中博康厩舎)。現在マイル戦を2連勝中で、ダービー卿チャレンジトロフィー(GⅢ)では直線だけで13頭をごぼう抜きにした末脚自慢のスズハローム(牡6歳/栗東・牧田和弥厩舎)。着実に力を付け、前走のマイラーズカップで勝ったアドマイヤズームに半馬身差まで迫って2着したドラゴンブースト(牡4歳/栗東・藤野健太厩舎)。プレップレースの京王杯スプリングカップ(GⅡ)を絶妙なペースで逃げ切り、重賞初制覇を成し遂げたロードカナロア産駒のワールズエンド(牡5歳/栗東・池添学厩舎)。ここまでを△(連下)に組み入れたい。
文●三好達彦
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