
「講談社Mook 本郷猛/仮面ライダー1号」(講談社) (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映
【画像】「うーんカッコいい…」これが『仮面ライダー』放送当時、若き日の藤岡弘、さんです(5枚)
本編で一切描かれなかった物語が…?
昭和の子供たちを熱狂させ、社会現象にまでなったカルビーの「仮面ライダースナック」の最大の魅力は、番組や雑誌では語られない設定まで記された「仮面ライダーカード」でした。これは「仮面ライダースナック」のおまけとして付いてきたもので、中身はランダム。開けてみると中身が「ショッカー」や「ゲルショッカー」の場合もしばしばで、ライダーや味方キャラのカードだった場合は喜んだものでした。
なかでもNo.500「本郷のちいさいころ」を当てた人は超ラッキーです。なぜなら、その裏面には孤高のヒーロー「本郷猛」の、意外すぎる「恥ずかしい秘密」が記されていたからです。
仮面ライダー1号こと本郷猛は、知能指数600の天才でスポーツ万能の完璧なヒーローです。大学の生化学研究所に籍を置きながら、数々の大会を制した一流のオートバイレーサーでもあります。
仮面ライダーカードNo.400「本郷猛のひみつ(2)」では、小学校の頃から理科や算数は抜群で、成績はクラスで5番以内。でもガリ勉ではなく友達に意地悪なんかしない、スポーツが大好きなクラスのまとめ役だったことが明かされています。
これだけ知ると、子供の頃から欠点のない出木杉くんのように思えます。しかし、No.500「本郷のちいさいころ」のカードには、そんなイメージを覆す一文が以下のように書かれていました。
「(小さいころの本郷は)おねしょして おかあさんに しかられたこともある。ぴしぴし おしりたたかれたんだって」
この記述は当時おねしょに悩んでいた子供たちに強い親近感を与えました。「仮面ライダーでもそうだったのなら、自分も大丈夫かもしれない」と、多くの子供たちを励ましたのです。
このカードが「名作」と呼ばれる理由は、単なるユーモアで終わらない点にあります。後半には、こんな一文が続きます。
「でも、そのおかあさんも 本郷の ちいさいころ しんでしまった。いまでも、本郷の、おかあさんのかたみのペンダントを はだにはなさず つけているんだ」
コミカルだった空気は一転。本郷が抱える孤独と、亡き母への想いが静かに描かれるのです。この設定によって、本郷猛というキャラクターの哀愁や深みは、より際立つことになりました。
インターネットも設定資料集も充実していなかった時代、ライダーカードはヒーローの裏設定や私生活を知ることができる貴重なメディアでした。笑えて、最後は少し切ない「本郷のちいさいころ」は、本郷の魅力的な人間性を凝縮した1枚として、今もなお多くのファンに語り継がれています。
