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ショート動画は「記憶の定着や深い集中」を妨げる可能性

ショート動画は「記憶の定着や深い集中」を妨げる可能性

Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

ちょっとした暇つぶしのつもりが、気づけば何時間もショート動画を見続けていた。

そんな経験がある人は少なくないのではないでしょうか。

たった数十秒で笑える、驚ける、学べる。

ショート動画は、現代のネット文化において、もっとも手軽な情報摂取の形の一つになっています。

最近では、英単語、歴史、科学、資格勉強などを短くまとめた「学習系ショート動画」も増え、すき間時間に知識を得られる便利な教材として受け入れられつつあります。

しかし、本当にショート動画は学習に向いているのでしょうか。

中国・雲南師範大学(YNU)らの研究チームは、ショート動画と長尺動画を比較し、どちらが記憶に残りやすいのかを実験。

その結果、ソーシャルメディア型のショート動画は、注意を引きつける力は強い一方で、情報を正確に覚えたり、長く記憶に残したりする点では不利に働く傾向が示されました。

研究成果は2026年5月27日付で、学術誌『Communications Psychology』に掲載されています。

目次

  • 「短くまとまっている」ほど覚えやすいとは限らない
  • ショート動画は注意を引くが、深い処理を弱める可能性

「短くまとまっている」ほど覚えやすいとは限らない

研究チームは今回、150人以上の大学生を対象に3つの実験を行いました。

参加者が見たのは、あまり知られていない旅行先を紹介する動画です。

一方のグループは、30秒から2分半ほどの短い動画を複数本つなげたものを見ました。

もう一方のグループは、同じく合計10分程度の長尺動画を見ました。

ここで重要なのは、単に「短い動画のほうが情報量が少なかった」という比較ではない点です。

研究では、ナレーションの語数や動画の長さをできるだけそろえ、同じ程度の情報を「断片的に見る場合」と、「連続した流れで見る場合」を比べています。

実験1では、参加者に記憶テストがあることを知らせず、自然に動画を見てもらいました。

その後、動画内容に関するテストを行ったところ、ショート動画を見た参加者は、長尺動画を見た参加者よりも直後の正答率が低くなりました。

さらに実験2では、参加者にあらかじめ「内容を覚えてください」と伝えました。つまり、より学習に近い状況です。

それでも結果は同じ方向を示しました。

ショート動画を見たグループは、長尺動画を見たグループよりも直後の記憶成績が低く、翌日までの忘却率も高かったのです。

これは、ショート動画が「わかりやすく感じる」ことと、「あとで正確に思い出せる」ことが、必ずしも同じではないことを示しています。

短くまとまった情報は、その場では理解しやすく感じられます。

しかし、次々に場面や内容が切り替わる形式では、情報同士をつなぎ合わせ、頭の中で整理する時間が足りなくなる可能性があります。

ショート動画は注意を引くが、深い処理を弱める可能性

チームはさらに、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を使って、動画視聴中の脳活動も調べました。

分析に使われたのは、被験者間相関(ISC)という方法。

これは、同じ映像を見ている人たちの脳活動が、どれくらい似たタイミングで同期するかを見る分析です。

ある領域の同期が高い場合、その領域が映像内容の処理に関わっている可能性があると考えられます。

結果として、長尺動画を見ているときには、視覚処理、注意、エピソード記憶、認知制御に関わる脳領域で比較的高い同期が見られました。

エピソード記憶とは、出来事や事実を文脈とともに覚える記憶のことです。

認知制御とは、注意を保ち、情報を整理し、必要なことに意識を向ける働きを指します。

一方、ショート動画を見ているときには、上頭頂小葉、楔前部、中後頭回など、視空間的注意や記憶、認知制御に関わる領域の同期が低下していました。

その反対に、外から来る刺激に反応するボトムアップ型の注意に関わる側頭部や前頭部の領域では、ショート動画のほうが同期が高まっていました。

つまりショート動画は、目の前の刺激に「反応させる力」は強いものの、情報をじっくり整理し、意味づけて、記憶に定着させる処理には不利に働く可能性があるのです。

これは、私たちの体験にもよく合います。

ショート動画を見ている最中は、退屈しにくく、次の映像へ自然に意識が向かいます。

しかし、数分後に「さっき何を見たのか」「どんな内容だったのか」と聞かれると、意外と思い出せないことがあります。

この研究は、その感覚を記憶テストと脳活動の両方から裏づけるものだといえます。

ただし、注意すべき点もあります。

この研究は、すべての短い教育動画が悪いと示したわけではありません。

対象になっているのは、内容が細かく切り替わるソーシャルメディア型のショート動画です。

授業用に丁寧に設計された短い解説動画や、復習用に要点をまとめた動画まで否定するものではありません。

問題は、短いことそのものというより、情報が断片化され、視聴者が深く考える前に次の刺激へ移ってしまう構造にあります。

ショート動画は、入口としては便利です。

知らないテーマに興味を持つきっかけや、概要をつかむ手段としては役立つでしょう。

しかし、何かを本当に理解し、あとで使える知識として残したい場合には、長めの解説を見たり、文章を読んだり、自分で整理したりする時間が必要になります。

脳は、情報を浴びるだけでは学べません。

情報同士をつなげ、意味を考え、少し立ち止まることで、初めて記憶として根を張っていきます。

ショート動画は、知識の扉を開く小さな鍵にはなるかもしれません。

しかし、その扉の先を歩いていくには、私たち自身が「スクロールを止めて考える時間」を取り戻す必要がありそうです。

参考文献

Short videos may hinder learning by fragmenting attention and memory, study finds
https://phys.org/news/2026-06-short-videos-hinder-fragmenting-attention.html

元論文

Learning via short videos impairs memory accuracy and reduces brain synchrony
https://doi.org/10.1038/s44271-026-00476-x

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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