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4季連続の8位。最終戦はブーイングまじりも長谷部茂利監督の続投決定で改めて“覇権奪回”を目指す川崎はどう進むのか

4季連続の8位。最終戦はブーイングまじりも長谷部茂利監督の続投決定で改めて“覇権奪回”を目指す川崎はどう進むのか


[J1百年構想リーグプレーオフラウンド 第2戦]川崎 0-1 広島(トータル1-3で広島が勝利)/6月6日/Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu

 鬼木達監督が率いていた2023年から続く“呪い”とも言うべきなのか。

 いや、これが今の実力と言うしかないのだろう。

 2度目の天皇杯制覇を果たした23年、鬼木監督のラストシーズンとなった24年、長谷部茂利新体制でACLEで準優勝した25年と3年続けてリーグ戦では8位だった川崎は、百年構想リーグでも最終節にEAST4位に滑り込んだが、WEST4位の広島とのプレーオフに敗れ、計20チームでの総合順位は4季連続の8位となった。

 中位より少し上、ただクラブとして目標に掲げ続ける覇権奪回には届かない。それが今の川崎の現実である。

 発足から1年半経った長谷部体制のテーマは、元来の攻撃力をより磨きつつ、守備を強化することだった。

 しかし、百年構想リーグは10勝(PK勝ち3)8敗(PK負け1)で、ドローのままPK戦になった試合を引き分けと考えれば7勝4分7敗とまさに五分。得失点はマイナス4(23得点・27失点/得点数はEASTの10チームで6位、失点数は同ワースト4位)。来季の続投が決まっている指揮官も広島戦後に振り返った。

「結果を受けて、監督である以上、強く深く責任を感じている次第です。それはどういうことかというと、先ほど言った選手たちが表現できるように、つまり試合に勝てるようにできなかったというのが私の責任というか仕事なので、それが攻守に渡ってできなかった。切り替えの場面は比較的良くなってきたと思います。ただ、攻撃は昨年に比べて点数は少ないし、失点は相変わらず多いし、4点、5点取られるゲームはあまりないですが、相手が多く得点を取っている、我々のほうが失点は多いというのはあるので、そこは表現できていないなと思っています」
 
 特にプレーオフ第2戦の広島戦の前半は、シーズン最初に戻ったかのような緩さを見せ、シュートをことごとく浴び続けた。確かに、第1戦を受け、広島は3-4-2-1のウイングバックに川崎のSBを食いつかせてその背後のスペースを狙うなど、弱点を突いてきた。指揮官も「恐らく(広島は)1戦目の試合から我々のウィーク(ポイント)を見つけて、そこを突いてきたように見えました」と語る。その対応で後手を踏んだ。

 44分に先制され、0-1で迎えた後半は川崎が盛り返したとはいえ、トータルスコアを3-1とした広島が、試合をクローズしようと重心を後ろにズラしたとの見方もできる。

 長谷部監督の下で積み上げてきた1年半の成果を――。そう臨んだはずの百年構想リーグの最終戦だったが、その想いに見合ったパフォーマンスを見せることはできなかった。試合後やその後のセレモニーでも多くの拍手とともにブーイングのような声が飛ぶ光景が広がっていたのもなんだか現状を端的に示しているようだった。

 確かに、7位・8位決定戦への臨み方は難しく、前日に長谷部監督の続投が発表され緊張感も薄まったか、モチベーションを上げにくい状況であったに違いない。年代別の代表活動に4人を輩出し、怪我人も続出していたことで、広島戦の控えメンバーにはGKふたりを入れるなど苦しい台所事情でもあった。

 それでもチームとしての積み重ねを見せる舞台であっただけに、不甲斐ない内容になってしまったのは残念としか言いようがないだろう。

 指揮官も話したように、この1年半を経て、自分たちのサッカーを“表現できない”背景はどこにあるのか。キャプテンの脇坂泰斗に聞けばこう返ってくる。

「単純に自分たちのやりたいサッカーが100だとして、それを全員で100の理解をしていないとチームとして綻びが出る。それはどの組織でも同じだと思います。そこは守備の追い方もそうですし、最後のゴール前のところでどこを守るのか、最後のチャンスのところでどこにクロスを上げるとか、どこに入りこむとか、どこでボールホルダーを助けるかなどが足りていないと思うので、一人ひとりがそこの技術や走力、筋力など身体的な向上もそうですが、頭のところでも成長をしていかないといけないと思います」

 そしてこうも続けた。

「(必要なのは)自分たちのやりたいことをゲームで出す準備。見ている人たちがこういうことをやりたいんだと分かるようなゲームをしなくてはいけない。そこで全員の意図が合っていないゲームはありませんでしたが、まだまだ相手との兼ね合いであったり、自分たちの力不足があるので、一人ひとりのレベルを上げていくのがチームのためにもつながりますし、自分ももっと成長しないといけないと感じました。

 両ゴール前のところは優勝したチームに比べると劣ってしまっていると感じます。また各試合で、攻撃でも守備でもゲームを支配できた時にどう勝ちに持っていくかというところと、そのためにどうサッカーを構築していくか。僕ら選手の質と言ってしまえばそれまでですが、ポジショニングやパスのスピード、出す角度や出す足といった細かなところはもっとこだわれると思うし、そこで優位性をもっていきたいチームではあると思う。そこを出せなかったというのが、半年間の振り返りで一番に出てくるところです。

 自分もまだまだサッカーを知りたいですし、それをピッチで表現できないと意味がないので、まずは来シーズンに向けてしっかり休んで、悔しさをぶつけたいです」

 
 ただ一方で、悔しき結果とともに、脇坂は広島戦を前に、こうポジティブな面も口にしていた。

「やってきたことが重なり、できることが増えていると言いますか、課題を完全に克服できていないですが、課題を分かっているからこそ、みんなでカバーできているところはあるとは感じています。そこは間違いなく前進しているところだと思うので、続けていくことが大事。

 できることが増えた面では、より目線が揃うようになり、『今はこうだな』と選手間で合うようになってきた。それは良いこと。守備においても『今は行くところじゃない』とか合わせられるようになってきた。だから、単独で誰かが取りに行くとかそういうシーンは減っているはずです。前節(プレーオフ第1戦)の広島戦の得点でもそれが活きていました。

 練習でやり続けた成功体験をゲームで出しますが、ゲームで失敗すると、『どっちだろう』と迷ってしまいますが、成功すると自信が出てくる。それが大きいですし、続けていきたいです。ただ進んだからこそ、出る課題もある。順位は自分たちの思い通りにいっていないですが、みんなが真摯に取り組んできたものはしっかりあると感じています。

 この半年は大変な時もありました。(怪我などで)半年で全員が揃った練習をほぼできていないと思いますから。でも、自分はピッチに立ち続けないといけないと考えていますし、その面は個人としては良かったです。

 そのなかで、チームとして求められることを、FWやサイドハーフの選手にも常に伝えてきて、それが実を結んできているところもあります。受け身ではなく主体的に守備をできるようになってきましたから。それはみんながやり続けた結果です。

 例えば、守備のやり方として3択や2択があるシチュエーションで、僕が主導していたと言いますか、シゲさんも「ヤストの動きをよく見て」と言ってくれますが、みんながより自分で意図を持って守備をしてくれるようになったので、僕が無駄に追わなくても良いシーンも増えている。言葉はあれですが、楽して奪える形も増えているので、攻撃にパワーも使える。だから守備も楽しいです。

 それこそ僕は以前から、23年くらいから海外の守備もよくみるようになって、強度と言えば聞こえは良いんですが、強度を出せるって、イコール、やることが分かり合っていて、頭に負荷がかかりすぎない分、プレーにパワーを使える状態だと感じていました。だから“強度がある守備”ってフワッと言うのは違うと思っていたんです。

 そういったものを考えていくなかで、守備の理解も高まりましたし、シゲさん(長谷部監督)もそういう思考のもとでやっているので、新しい発見もあります。先日のCL決勝を見ていてもアーセナルだって引いても守れるし、前プレ(前からのプレス)もできる。そこを高いレベルで使い分けられるのが凄い。

(自陣)ゴール前の最終局面での守備に関しては個人的にもまだ上手く言語化できず、課題もあり、シゲさんの考えを体現できていないところがありますが、そこまで押し込まれないように守備をしたい。前プレが整備されて、ハマっていくと、押し込まれる時間も減るし、奪う位置も高くなるので、速攻にならなくても遅攻も相手陣地でできる。守備と攻撃は別と考えるとそういうことはできないので、そこは少しずつできているところかなと思います」
 
 数字や結果には上手く表われていないが、積み重ねは確かにあるということだろう。だからこそ、クラブは監督の続投を決めたと信じたい。

 チームは改めてオフを挟み、7月になれば、夏の新シーズンに向けて始動する。現状では長谷部監督の続投、長橋康弘ヘッドコーチの新設するU-21チームの監督への配置換えが発表されている。ここから巻き返しへさらなるスカッドの変更が示されていくのだろう。

 最終戦のセレモニーでは改めて、リーグの覇権奪回、ACLEの舞台に再び戻り、準優勝に終わった前々大会の忘れ物を取りにいくことが目標として掲げられた。

『優勝』を視野に臨んだ百年構想リーグの総括、新シーズンへ何を変えていくべきなのか、説明はなされないままだが、目標は変えないということだろう。

 高みを目指すことは悪くないように映る。ただ、現状では絵にかいた餅の状態にもなっている。現実に、優勝から時が過ぎれば過ぎるほど、負けることを拒絶する気持ちが薄まっていくことを危惧する声は多く上がっていた。しかし、現実に数年の時が経ってしまっている。

 選手が活躍すれば、海外クラブに引き抜かれる難しい状況であり、チーム強化の苦労は傍から見ていても痛いほど分かる。もっとも、優勝やアジアの舞台への復帰を本気で目指すのであれば、それなりの覚悟、志が必要になるのは火を見るよりも明らかだ。

 ただ一方で、25年度クラブ経営情報では、川崎は浦和に続いて売上高で100億円を突破し、百年構想リーグのホーム平均観客数は2万5212人。若いタレントが育つ土壌もできており、昨夏にはCB高井幸大らが移籍金を残す形で海を渡った。勝敗の波が激しくとも、運営は安定しているとも評せる。

 であれば、どんなサッカーを見せたいのか改めてクラブ内で意思を統一し、数年をかけて強化していく方針を取ることもできるのではないか。

 優勝を掲げ、その都度、失敗を繰り返せば、それこそ信用がなくなってしまう。今は改めて指標を定める時とも言えるのだろう。

 かつての風間八宏監督はサッカーは面白くなくてどうするんだと技術を突き詰めた尖ったサッカーを磨き、鬼木監督はその系譜を継ぎながら守備でも魅せるもテーマに掲げながら黄金期を築いた。ともに共通していたのは、出発点は攻撃面で、見ている人を驚かすような得点を取ることをチームの根幹に置いていた。

 一方で長谷部政権は、アジアで勝つことも視野に「川崎の良さを維持しながら、点を失わないこと」を念頭に置く。守備が出発点になるのが今の川崎のサッカーと言える。監督が変われば、やり方が変わるのは当たり前で、大事なのは脇坂の言葉にもあった通り、自分たちのサッカーを表現できるか、それが観ている人たちに伝わるかだ。その指針を定めるのがクラブである。

 地域に根付いた取り組みは成果として表われ、結果に左右されず、チームを支える人たちがこれだけ多くいる現状は称賛に値する。ただ、敗れても“これが川崎だ”と、誇れるクラブを誰もが待っているに違いない。“勝利至上主義”に走るクラブであればここまでの発展はなかったはずである。その炎を絶やさないことが重要だと感じる。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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配信元: SOCCER DIGEST Web

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