俳優の染谷将太さんが、映画『廃用身』に主演しました。本作は、久坂部羊氏の同名小説デビュー作の映画化で、出版当時、そのあまりに強烈な設定から「映像化、絶対不可能!」と世間で話題となった衝撃作です。
医療の限界を超えたいと力強く訴え、理想を追い求めるあまり合理性と狂気の危うい狭間へ入ってしまう主人公の医師・漆原糾役を演じた染谷さんに作品のこと、監督・脚本の田光希さんとの仕事について聞きました。
●本作は、廃用身(麻痺などにより、回復見込みがない手足のこと)という医療行為をめぐるヒューマンサスペンスですが、最初にこの作品への出演が決まった時はいかがだったでしょうか?
最初に吉田監督が長編の新作を撮られると聞きまして、自分が主演ということをうかがいました。吉田監督とは昔から面識もありましたし、監督された過去作もすごく好きで、いつかご一緒できたらうれしいなと思っていた方なので、素直にうれしかったです。
ただ、いただいた台本を読んでみると、この漆原という主人公を演じるには、自分としても覚悟がいるなと思って。正直、不安もあったのですが、吉田監督と一緒にこの作品に挑めるのであれば安心感はありましたし、自分にとってもチャレンジする意味があるなと思って、参加させていただくことにしました。
●オファーを受けた際、同時に「恐怖を覚えた」ともコメントされていましたよね。
そうですね。この作品は倫理観を問われる作品でもあると思ったんです。そしてそれは、Aケアの内容としての倫理だけじゃなくて、映画でどこまで描くのかという、映画そのものの倫理観も問われる作品だと思ったんですよね。映画って社会にも影響を及ぼしますので、だから最初はかなり問われる作品だなという感覚があったので、恐怖というか、ちょっと心がザワザワするような感覚でした。
もちろん、いろいろな感想は出ると思うんのですが、、原作も素晴らしいですし、映画として一本残ることで、20年後、30年後に作品を観返した時にも意味のある作品になるんじゃないかと思えたんです。
そして、そういう作品を吉田さんと一緒に作ることに、自分自身も大きな意味を感じられたので、それが出演の決め手になったのかもしれません。
●ちなみに吉田監督とは、10代の頃からお知り合いだったそうですが、どんな印象を持たれていましたか?
映画を作ることにとても素直な方なんです。人としても冷静ですし、でもすごく愛情がある。
作品自体も冷静な切り口なのですが、人を突き放す感じではないんです。なんともいえない人物との距離感の取り方や、その人の切り取り方がすごく魅力的だなと思っています。
●改めて完成した映画をご覧になっていかがでしたか?
まず、自分としてはいろいろと反省から入ってしまうのですが、本当に吉田監督の切り口が鋭いなと思いましたし、登場人物と観客との距離感がすごく絶妙なんですよね。
カット割りも、いわゆるオーソドックスなものではなくて、引きで見せていたと思ったら、いつの間にかズームして寄っていたりして。なんとも不穏な撮り方なんです。
施設という閉鎖的な空間の中で生まれる、ある種の同調圧力みたいなものも絶妙に描かれていますし、だから、漆原という人物も良い人なのか悪い人なのかが曖昧に見えてくる。その映画表現が本当に素敵だなと思いました。映画『廃用身』は、観た人によって異なる感想を引き出せる映画になっているんじゃないかなと思っています。
■公式サイト:https://haiyoshin.com/ [リンク]
■ストーリー
ある町のデイケア「異人坂クリニック」に通うお年寄りの間で、漆原院長(染谷将太)が考案した“画期的な”治療が密かに広まっている。究極のコスパの良い介護を目指すその医療行為は、<廃用身」>(麻痺などにより、回復見込みがない手足のこと)をめぐる、従来の常識を覆すものだという。その結果、「身体も心も軽くなった」、「厳しい性格が柔らかくなった」などと予想外の“好ましい副作用”が現れたという。
噂を聞きつけた編集者・矢倉は、老齢期医療に革命を起こす可能性を感じ取り、漆原に本の出版を持ちかける。しかしやがて、デイケアに関するとある内部告発が週刊誌に流出。さらに、患者宅で起きた衝撃の事件をきっかけに、すべてが暗転していくーー。
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(執筆者: ときたたかし)
