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「(一般人の)倍の速度」で戦線復帰。タフネス男・杉澤龍が一軍カムバックを見据えて語る今の思い【オリ熱コラム2026】

「(一般人の)倍の速度」で戦線復帰。タフネス男・杉澤龍が一軍カムバックを見据えて語る今の思い【オリ熱コラム2026】

負傷者続出のオリックスに、嬉しいニュースが入ってきた。6月6日、二軍阪神戦で復帰した杉澤龍。9番センターでスタメン出場すると、第1打席はフォアボール。第2打席はセカンドフライながら、しっかりと打席に立ち、守備もこなした。

 久々の実戦だったが、「時間空きましたけど、そこまで変に力まず怪我前と同じ感覚で打席も守備も出来ているのでそこは問題なしです!」と力強い言葉を残してくれた。

 4月14日の一軍西武戦でデッドボールを受け、右尺骨遠位端骨折と診断されてから約1ヵ月半。思い返されるのは骨折した当日の試合後だった。報道陣の前にギプス姿で現れた杉澤は、笑いながら「ダメです」と口にした。その表情が印象的だった。

 あの日の心境を改めて聞いた。「折れた時はもう笑っていました。あー、折れたかって感じで。別に変に落ち込むこともなかったけど、笑いしか出てこなかったんです」それは強がりでも、無理に前を向こうとしていたわけでもなかった。
  今季の杉澤は、開幕から一軍での出場機会をつかみかけていた。良い波と勢いもあっただけに、負傷離脱は悔しさがあっても不思議ではない。それでも本人は、達観したように言った。

「(一軍で活躍するタイミング)じゃないってことっすね」短い言葉だが、そこには諦めではなく、受け止める強さがあった。「今じゃない」。来るべき時に向けて準備するだけ。そう割り切れているからこそ、杉澤はプレーできなくても沈まなかった。

 ボールが当たった瞬間に骨折だと分かったのか。そう聞くと「もう痛すぎて、うわヤバいって……ベンチ裏で、最初は(試合に)出ますって言ったんですけど、チェックのときに握手してひねったんです。そしたら無理! ってなって」。プレーを続けたい気持ちはあった。それでも、ベンチ裏でのチェックを経て、自分でも無理だと悟った。

 翌日からは想像以上の痛みに苦しめられたという。「痛すぎて最初の2、3日はもう動けなかった。マジ寝られなかった」。日常生活でも不便な日々が続いた。
  それでも杉澤の頭にあったのは、早く野球がしたいという思いだった。「ストレスはありましたね。動きたいけど動けないし」。まだまともに動けない時期から、左手一本でバットを振っていたのも、その気持ちの表れだったのだろう。「それは、血迷っていましたね(笑)」本人はそう笑ったが、じっとしていられないのが杉澤でもある。

「焦りはないですけど、早く野球したいって気持ちですね」言葉にするとシンプルだが、そこに杉澤の本音が詰まっていた。上へ行きたい、結果を残したい、という以前に、まず野球がしたい。その思いが強く伝わってきた。

 全治2ヵ月ほどと言われたが、「3週間で(ボールは)投げられるようになりました。脅威の回復力で、先生からは(一般的な人と比べて)倍の速度ですっていわれました(笑)」。実際に、もともとの実戦復帰目処は6月中旬頃の予定だったが、早くも6月6日の試合に出場。その速度に表情は明るかった。

 杉澤はこの離脱期間を前向きに捉えている。「元気な状態で帰れるように。みんな(長いシーズンで)試合に出て疲れているけど、僕は元気な状態で帰れる。あと体は(このリハビリ期間中に)ちゃんと作れるので」。長いシーズンの中で、この先の自分の居場所を虎視眈々と狙っている。
  昨季までは二軍で打てても一軍では結果が出ず、壁を感じていた。だが今年は違った。

 何が変わったのか。そう問うと、技術より先に「気持ち」の話が出てきた。「いい意味で緊張しなくなりました。前までだったら(心臓)バクバクだったんです。でも今年はオープン戦で結構打席に立って、普通に緊張しなくなりました。それが一番自分の中でデカいです」。

 さらに、打席での入り方にも変化があった。「アピールしようっていう気持ちは(もちろん)あるんですけど、変に力むことがなくなった。絶対に結果を出す、みたいなんじゃなくて、練習をそのまま出すだけっていう。練習もずっと調子よかったんで、試合で120%を出そうっていう気持ちとかじゃなくなりました。技術も当然ありますけど、一番はやっぱそこですね。体が思い通りに動けるようになってきた。それが一番デカいです」プロとしての環境に慣れてきたことで、本当の力が1軍でも発揮できるようになってきた。

「一軍復帰は、自分が決めることじゃないのでなんとも言えないですけど、復帰をしてすぐにチームの勝利に貢献できるような準備を怪我中もしてきました。あとは呼ばれるまで待ちます!」。復帰と同時にギアを上げる準備をしっかりしてきた。

 離脱者が少なくない今のバファローズにとって、状態を整え「野球がしたい」と飢えている杉澤の復帰は大きな助けになるはずだ。その時に向けて前を向く杉澤龍を追っていきたい。

文・写真●野口 航志
配信元: THE DIGEST

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