先日行なわれた今季2つ目のテニス四大大会「全仏オープン」の男子シングルスでキャリア最高の瞬間を迎えたのが、元世界ランキング2位の29歳アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ/大会時3位)だ。現地6月7日の決勝で第10シードのフラビオ・コボッリ(イタリア/同14位)を6-1、4-6、6-4、6-7(5)、6-1のフルセットで下し、悲願の四大大会初優勝を達成。ついに待望のタイトルをつかみ取った。
今大会は前回覇者のカルロス・アルカラス(スペイン/同2位)が負傷で欠場し、優勝候補大本命だったヤニック・シナー(イタリア/同1位)が2回戦敗退。さらには四大大会24勝を誇るノバク・ジョコビッチ(セルビア/同4位)も3回戦敗退となったことでズベレフに有利な状況ができたのは事実だが、大きなプレッシャーがかかる中、そのチャンスを生かし切ったことは評価されるべきだろう。
今回の優勝を受け、「今後のズベレフはより自由な気持ちでグランドスラムを戦えるのではないか」との声も上がっているが、これについて、2003年の全米オープンで四大大会初優勝を経験した男子元1位のアンディ・ロディック氏(アメリカ/43歳)が自身のポッドキャスト番組『Served with Andy Roddick』で私見を述べた。
同氏が最高峰のグランドスラム(四大大会)を制したのは、上記の全米の1度のみ。その後は四大大会決勝に4度進出したが、最後に準優勝した09年のウインブルドンを含めいずれも敗れた。実際、キャリア最大のタイトルを勝ち取った後も“安心感”なるものはほとんどなく、「最後のウインブルドン決勝もすごく緊張していた」と振り返る。
そうした自身の経験を踏まえ、ロディック氏はズベレフが今後も四大大会を複数回優勝するのは簡単なことではないと主張する。共に負け越しているシナー(4勝10敗)とアルカラス(6勝7敗)との相性に触れつつ次のように語った。
「彼が今後も四大大会で優勝できるかはわからない。この10年ほどはずっと、『グランドスラムを1つ勝つ』ことが彼のキャリアそのものだったし、正直私はそれが実現する日が来るのかどうかさえわからなかった。だから今はこの瞬間を大いに味わうべきで、その先の話をするのは好ましくないと思う」
「ただ、今回の優勝でズベレフがヤニックとの相性の悪さを克服できるか? または健康な状態のカルロスを上回る選手になれるか? と聞かれると、そうは思えない。個人的にはこれまで彼がグランドスラム初優勝へのプレッシャーでヤニックやカルロスに負けていたようには思わない。単純に相性の面で非常に厳しいということなのだと思う」
今回の初戴冠がズベレフのメンタル面に好影響を及ぼす可能性については、ロディック氏も否定していない。ただそれが、突然どんな相手にも勝てるようになることを意味するわけではないと強調している。
とはいえズベレフが「四大大会で勝てない選手」というレッテルを払拭したことに変わりはない。だが次はぜひともロディック氏の指摘を覆し、シナーやアルカラスといった最大のライバルたちを打ち破って頂点に立つ姿を見せてもらいたい。
文●中村光佑
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