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史上最年少、19歳でアルツハイマー病と診断された男性

史上最年少、19歳でアルツハイマー病と診断された男性

Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

「アルツハイマー病」と聞くと、多くの人は高齢者の病気を思い浮かべるかもしれません。

しかし、2022年に中国で報告されたある症例は、そのイメージを大きく揺さぶるものでした。

北京・首都医科大学(Capital Medical University)の研究チームは、19歳の男性を「アルツハイマー病の可能性が高い症例」として報告しました。

研究の詳細は2022年12月19日付で学術誌『Journal of Alzheimer’s Disease』に掲載されています。

目次

  • 17歳頃から症状が現れ始める
  • 「遺伝性でもない」原因不明の発症

17歳頃から症状が現れ始める

当時19歳の男性は、診断の約2年前である17歳ごろから記憶力の低下を経験し始め、やがて学校生活にも支障が出るほど症状が進行しました。

しかも、この患者には若年発症のアルツハイマー病でよく見られる既知の遺伝子変異が見つからなかったのです。

これは、アルツハイマー病が単に「高齢者の病気」とも「遺伝子変異だけで説明できる病気」とも言い切れないことを示す、非常に珍しい症例です。

この男性に最初の異変が現れた17歳ごろのこと。

彼は授業に集中することが難しくなり、読書にも支障が出るようになったといいます。

さらに、前日の出来事を思い出せない、持ち物を頻繁に置き忘れるといった短期記憶の障害も目立つようになっていきます。

最終的には認知機能の低下によって高校を修了できなくなりました。

ただし、日常生活そのものは完全に失われたわけではなく、報告時点では自立して生活することは可能だったとされています。

「遺伝性でもない」原因不明の発症

医療チームは詳しい検査を行いました。

記憶に深く関わる脳の領域である海馬には、両側性の萎縮が確認されました。

また、脳脊髄液の検査では、アルツハイマー病と関連するバイオマーカーの異常が示されました。

記憶検査でも、同年代と比べて大きな低下が見られています。

特に、聞いた言葉をすぐに思い出す力や、数分後、30分後に思い出す力が大きく落ちていました。

ここで重要なのは、単なる「うっかり忘れ」ではなく、複数の検査で記憶障害を裏付ける所見がそろっていた点です。

アルツハイマー病は通常、高齢になるほどリスクが高まる病気です。

一方で、65歳未満で発症する若年性アルツハイマー病も存在します。

さらに30歳未満で発症するような非常に若い症例では、多くの場合、APP、PSEN1、PSEN2などの病的遺伝子変異が関わる家族性アルツハイマー病が疑われます。

ところがこの19歳男性には、家族にアルツハイマー病や認知症の病歴がありませんでした。

さらに、全ゲノムシーケンスを行っても、既知の原因遺伝子変異は見つかりませんでした。

感染症や頭部外傷、その他の病気など、急な認知機能低下を説明できる別の要因も確認されていません。

つまり、この症例は「非常に若い年齢でアルツハイマー病を疑わせる状態になったにもかかわらず、典型的な原因が見つからない」という点で、研究者たちに大きな謎を投げかけているのです。

ただし、この症例は「アルツハイマー病の可能性が高い」と診断されたケースであり、病理解剖などによる確定診断ではありません。

また、アミロイドPETやタウPETでは陽性所見が確認されていない点も、慎重に扱う必要があります。

そのため、この報告をもって「若者の物忘れはアルツハイマー病かもしれない」と一般化するのは適切ではありません。

むしろ大切なのは、アルツハイマー病という病気が、私たちが考えている以上に複雑で、発症の道筋が一つではない可能性を示している点です。

研究者たちは、若年発症例の解明が、今後の記憶障害研究における重要な課題になると述べています。

この19歳男性の症例は、あまりにも例外的で、すぐに一般の人々のリスクへ結びつけるべきものではありません。

しかし同時に、アルツハイマー病を「年を取ったら起こる病気」とだけ見なす理解を、静かに揺さぶる報告でもあります。

記憶を失っていく病気の謎は、高齢者だけでなく、若者の症例からも解き明かされていくのかもしれません。

参考文献

The Tragic Case of The Youngest Person Ever Diagnosed With Alzheimer’s
https://www.sciencealert.com/the-tragic-case-of-the-youngest-person-ever-diagnosed-with-alzheimers

元論文

A 19-Year-Old Adolescent with Probable Alzheimer’s Disease
https://doi.org/10.3233/JAD-221065

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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