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なぜ神戸は最後に崩れなかったのか? サベア、レタリックら世界的名手たちが見せた“王者のディフェンス”【ラグビーリーグワン】

なぜ神戸は最後に崩れなかったのか? サベア、レタリックら世界的名手たちが見せた“王者のディフェンス”【ラグビーリーグワン】

最終コーナーを回り切るのが大変だった。

 後半33分頃。5万人超が集う東京・国立競技場で、コベルコ神戸スティーラーズがトライラインを背に身体を張った。

 ニュージーランド代表109キャップでレギュラーシーズンのトライ王でもあるロックのブロディ・レタリック共同主将が、同代表106キャップで短期加入したフランカーのアーディ・サベアが、日本代表29キャップで右プロップの具智元が、迫る走者へ立ち向かった。

 2026年6月7日。戦っていたのは、加盟するジャパンラグビーリーグワンのプレーオフ決勝だ。対するクボタスピアーズ船橋・東京ベイを19―13とわずか6点リードしながら、ラスト7分で逆転されうるピンチを迎えていた。
 「神戸のDNAには速く立ち上がるマインドセットがある。皆、努力していいディフェンスができたと思います」

 件の局面を後述するのはティエナン・コストリーだ。日本代表11キャップのフランカーは、防御のアシスタントコーチであるピート・マーチィの方針に支えられていたという。

このマーチィの上司はデイブ・レニー。23年のヘッドコーチ就任以来、街や責任企業との繋がりを再認識させたり、厳格な視線とプログラムで選手を追い込んだりし、着任前9位の古豪を7季ぶりのファイナリストにしていた。

 いかついボスがコーチ席で見つめた件の難局は、16フェーズ目に突入した。

 このタフな攻防を左大外から見ていたのは、木田晴斗である。

 日本代表2キャップを持つスピアーズの力走型ウイングは、自身の周りに攻め入るスペースがあると看破。大声でパスを呼び込んだが、密集にフォーカスする仲間には届かなかった。

「要求はしていたんですけど、意思疎通はできなかった。コミュニケーションミスってところです」

 心で天を仰いでいたら、ちょうど接点に難敵のサベアが絡んだ。笛が鳴った。スピアーズが、援護役がボール保持者へと覆いかぶさる反則を取られた。

スピアーズでサベアと同じフランカーを担う末永健雄は…。

「いけそうだったんすけど、精度、遂行力が足りなかった(判定は)しょうがないです。(レフリーの)腕がどっちに上がるかというところで、あっちに上がった。であれば、次へ切り替えてディフェンスで…と思いました」

 コストリーは安堵した。

「あぁ…よかったなぁって」

 件の攻守逆転から約5分後、スティーラーズはだめ押し点を挙げた。「あぁ、勝ったな」とコストリー。22―13でノーサイドを迎える。 対するスピアーズは南アフリカ代表87キャップのマルコム・マークスら、複数の主軸を怪我で欠きながらも若手主体の後衛を狙ってのキック、肉弾戦でのファイトで応戦。前半を13―13とタイスコアで折り返した。

 ショーン・スティーブンソン。途中で足を痛めながらも鋭い走りと技巧を重ねたニュージーランド代表1キャップのフルバックは、スピアーズの狙いを説く。
 「プレーオフでは、若手は狙いどころ」

 綺羅星たちの波状攻撃が売りのスティーラーズにとっては、望まれない展開となった。ただ、後の勝者はここからが辛抱強かった。

 後半にはランナーへの援護を見直し、結果的にパスワークを滑らかにした。16―13で迎えた3分、自陣からの大胆な展開にロングキックとカウンターラックを絡め、球を持ち続けた末に19―13とリードを広げた。

 守っては15分頃、向こうが複数名で束になっているのを転ばせ、地上で球を奪い返した。仕留めたのは高尾時流。全国的な実績が少ない九州共立大出身の左プロップだ。

 レニーは、この瞬間をターニングポイントに挙げる。レタリックも同意見だ。

「そこで、ゲームの局面を変えられた。自分たちが必死に、繋がり、お互いのために動き続けることができた」

 スピアーズ陣営は序盤から得点機を逃したことを敗因に挙げた。攻めまくるのが是のスティーラーズが、防御で冴えたからだ。

 レニー体制はこれにて終わった。スタッフの多く、一部の主力が日本を去る。ラストワンプレーはこのゲームを勝つための最終コーナーであり、今季を笑って終わらせるための最終コーナーであり、3季続いた現体制がタイトルを獲るまでの最終コーナーでもあった。

 次期ニュージーランド代表ヘッドコーチのレニーは、完走した所感を静かに漏らした。

「安心した気持ちが大きい」

取材・文●向風見也(ラグビーライター)

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配信元: THE DIGEST

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