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3Dプリンタから“製本済み”で現れる、まったく新しい本「Manual」

3Dプリンタから“製本済み”で現れる、まったく新しい本「Manual」

完成形の本を出力する取り組み / Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

本といえば、紙に文字を印刷し、ページを重ね、最後に綴じて完成するものです。

しかし、Studio Darius OuとBenson Chongが開発した「Manual」は、その工程を根本からひっくり返します。

この本は、ページも綴じ目も浮き出し文字も、すべて3Dプリンタによって一度に作られ、プリントベッドの上に“製本済み”の状態で現れます。

しかもページには、この本自身を作るために使われたG-codeの一部が、浮き出し文字として刻まれているのです。

目次

  • 紙もインクも製本も使わない「3Dプリントされた本」
  • 「自分自身の作り方」を持つ本

紙もインクも製本も使わない「3Dプリントされた本」

私たちが普段手にする本は、文字や画像を紙に印刷し、それを束ね、表紙をつけ、製本して作られます。

ところが「Manual」は、こうした本の常識とは大きく異なります。

Manualは、熱可塑性ポリウレタンという素材で作られた、完全3Dプリント製の本です。(画像はこちら)

サイズは16×10×2.5センチメートルで、手に持てる小さな本として設計されています。

 

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特徴的なのは、ページ、綴じ、表面の浮き出し文字が、別々の部品として作られているのではなく、ひとつのプリント工程の中でまとめて形成される点です。

つまり、紙を印刷してから綴じるのではなく、3Dプリンタが本という立体物そのものを作り出しているのです。

Manualには、XY-for-Z printing methodと呼ばれる3Dプリント手法が使われています。

通常の3Dプリントでは、物体を下から上へ少しずつ積み重ねていくように作ります。

しかしManualでは、ページを平らに寝かせて積み上げるのではなく、ページが立ったような向きで、背の側から一体的に作っていくような方法が使われています。

これにより、ページを別々に作って組み立てるのではなく、最初から綴じられた本として出力できるのです。

あとから組み立てたり、製本したりする必要がありません。

3Dプリンタから取り出された時点で、すでに「本」として成立しているのです。

 

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さらに興味深いのは、ページの上に刻まれている浮き出し文字の内容です。

そこに書かれているのは、小説や解説文ではありません。

Manualのページには、この本を作るために使われたG-codeの一部が刻まれています。

G-codeとは、3Dプリンタなどの機械に対して、どこへ動くか、どのように材料を押し出すかを伝えるための命令コードです。

つまりManualは、人間に物語を読ませるための本というより、機械に向けた製造指示の一部を、自分自身のページに背負った本なのです。

では、製作者たちはどんな目的でこの本を作ったのでしょうか。

「自分自身の作り方」を持つ本

なぜManualは自分自身を作るためのG-codeをページに刻んでいるのでしょうか。

この作品は、本が「内容を記録するもの」であるだけでなく、「自分自身の作られ方を、物体の中に記録できる存在」になり得ることを示しています。

 

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ただし、Manualが自分自身のすべての作り方を内側に持っているわけではありません。

最初のバージョンに刻まれているG-codeは、全体の2.5%だけです。

これは、樹脂を少しずつ溶かして積み重ねるタイプの3Dプリント、つまり熱溶解積層方式の解像度や、文字を小さくしすぎると読みにくくなるという制約があるためです。

本全体を作るためのコードをすべて表面に刻もうとすると、膨大な量の文字が必要になります。

さらに、刻まれた文字そのものも立体物であるため、その文字を作るためのコードもまた必要になります。

その結果、完全に自分自身を説明しようとすると、情報量が増え続ける問題が生じます。

Manualが2.5%だけを刻んでいることは、不完全さというより、この限界そのものを見える形にした特徴だと言えます。

 

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またManualは、電子書籍との関係から見ても興味深い作品です。

通常の電子書籍は、文章や画像といった内容をデータとして送るものです。

一方で、Manualが提案する「Replicable Book(r-book)」という概念は、内容だけでなく、本の物理的な形まで送ることを目指しています。

実際、Manualはシンガポールで開発され、トロントのNew Systemsでの発表時には、データとして送信され、現地で3Dプリントされました。

製作者は、この仕組みを「3D ファックス」のようなものとして説明しています。

こうした意図を考えると、Manualの本質は、すぐに普及する読書用の本を作ることというより、「本とは何か」を問い直すことにあるのかもしれません。

この取り組みは、知識や形がどのように複製され、運ばれ、再構築されるのかを考えさせる、新しい「本の実験」なのです。

参考文献

this fully 3D-printed book turns its own G-code into raised lettering
https://www.designboom.com/design/3d-printed-book-manual-darius-ou-benson-chong/

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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